道中
今回は短めです。
昨日まではまるでバケツの水をひっくり返したような豪雨が降ったにもかかわらず、今朝のこの大陸では肌を焼くような暑い日ざしが照らしていた。それは真夏の本州のようであり、さらには朝から蒸していて暑苦しかった。
そんな中俺達はこの暑さに負けずに今、出発しようとしているのであったが……
「ふぅ~暑いな。このゲーム、熱中症のバッドステータス無くて良かった」
「本当よ……暑い」
「そうですわ。暑すぎますわ」
この暑苦しさに早くも嫌気が差していた。これから数日歩いて、次の街または村に行くのだ。どうにもこの暑さで拠点(仮)を出て行くのは勇気がいるものだろう。
しかし、実際の予定なら昨日のうちに出発する予定だったんだが……雨、の所為で今日に見送りになったのだ。
でも、この暑さは予想が出来なかった。大雨に続いてこの真夏日。誰が予想しただろう。
「ここに居てもしょうがないだろ?とっとと着いて、冷たい物でも食おうぜ?」
「……ふぅ~、確かにしょうがないわね。行きましょうか」
「う~……わかりましたわ」
俺の声に反応して優は切り替えているが、マリアの場合は了承はしたもののグダっていた。
「よし、行くか!」
「「は~い」」
「ふわぁー。生き返るぅ~!」
テレビの放送されるCMのような台詞言い、清らかな冷たい川の水をコップ一杯にすくい豪快に飲み干す。
あれから数時間歩いて、今は角ばった岩が沢山ある川の上流へ着いていた。
「あんまり変なとこですくうと落ちるわよ~」
「大丈夫だって、このくらい……よっと!うめぇ~!!!」
優が母親みたいに注意しているのを聞かずに俺は足を岩と岩の間に引っ掛け、水を飲んでいた。こんなことを出来るのもこの体が現実とはありえないくらいの力を発揮しているからだ。
「それにしても何も無いところですわね」
小動物のようにちびちびとコップの水を可愛らしく飲んでいるマリアが呟いた。
「ここまで何も無いと、大変な事が起きそうよね?」
「おい!フラグ建てんな!いいだろ?平和なんだから……平和が一番!」
「それはそうですけど、何か物足りないですわ」
いつからこいつらはここまでにも冒険心溢れるパワフルガールになったんだろう……いいじゃねぇか、何も無いのが一番だろ?
「あ~。もう、行こうぜ?本当に嫌な事起きそう……」
これ以上、こいつらに喋らせると危険だと感じた俺はそう切り出しす。二人はもうちょっと休みたいと言ってきたが、構うもんか!
「ほら!言った通りじゃないか!!また湧いて来たよっ!!」
あの川から数分後、みごとに建っていたフラグは即座に回収された。もう、何回目か分からない湧出との遭遇……これは今いるプレイヤーの中でダントツの遭遇率では無いだろうか?
「いいじゃない。ちょうど退屈してたところだし……ストレス発散ってことでっ!」
優は暢気なことを言いながら、次から次へと襲いかかってくるモンスターを彼女が手にしている刃が真っ黒な剣「マジックソード」をまさに目には止まらぬ速さで切り刻んでいる。
時節発動する彼女自身や俺やマリアに施す、身体能力強化やモンスターに対して拘束する魔法を使用する。その際に真っ黒な「マジックソード」の側面には魔法陣に似たようなものが浮かび上がり、不気味に輝いている。
「それにしてもここのモンスターは手ごたえないですわね」
そんな事を言いながらマリアは両手で持つ、ドラゴンの尻尾のような大剣。「龍斬剣」を振り回し、軽々とモンスター束を吹っ飛ばしていく。まさにその一撃はドラゴンの快心の一撃のようであり、天災を振りまく龍の力のようだった。
「お前らなんで最悪のシュチュエーションであるこの状況で、そんな事いえるな!もっと、危機感持てよっ!!あぶねっ!?」
危険な(まぁ、そうでもない……)状況にも関わらず、それを全く感じさせない台詞をはくこいつらを何とか出来ないだろうか……
今回湧いたモンスターは空飛ぶ赤いカエル「フライガエル」。さらにゴツゴツとした岩を纏った体と毒々しい紫の針を持ったサソリ「ロック・スコーピオ」だ。この二体なぜかコンビネーションが抜群であり、連携のとれた攻撃をしてくる。
でも、相手が悪かった……コンビネーションなど使わせるまもなく切り刻み、素早い拘束魔法でモンスターを捕まえていく優。
連携のとれた技を使用としてもその圧倒的な力で、技すらも壊してしまうマリア。この二人相手なら、こんなサソリとカエルなんぞ苦戦すらしなかった。
俺はどうだって?俺は優とマリアが殺し逃した残党の後始末である。これはこれで大変だったりする。優の場合は一撃一撃の威力がばらついてしまうためにモンスターのHP残量が一定ではない事、マリアの場合はかなり遠くまでぶっ飛ばされているからただ単にめんどくさいの一言である。
「もうちょっと、陰で動く俺の身にもなって欲しいなっ!このヤロッ!!」
愚痴愚痴言いながらも、マリアの取りこぼしを葬っていくこっちの方は、ほとんどの体力が無くなってしまって居るため刀を軽く振れば、それだけで消えてしまうほどの僅かな体力しか残っていない。
優の方は結構な量が残ってはいるもの初期剣技である「スラント」で無くなってしまうぐらいなので、まぁ、別にこれと言ったほど辛くも無いのだが……
「あと、数匹ねっ!はぁぁあああ!!!!」
優の気合の込めた一撃が残りのモンスターを一掃した。ごく微量にHPは残っているものの、それは俺の仕事である。
瞬時に残党のところへ行き、素早く息の根を止める。これを残っていたもの全てにやり、今まで俺達を襲っていたモンスターの大群は戦闘が始まって約4分という短い時間で全てが俺達の経験値となって散っていった。
「今のは結構速かったんじゃないの?経験値はそれほど美味しくないけど……」
「でも、良さそうな素材は採れましたわよ?「ロック・スコーピオ」から採れる鉱石なんて、珍しくありませんか?」
「ああ、そう言えばそうだな……火山地帯にしか採れない鉱石だな。しかも、採掘じゃあドロップしないやつ」
それぞれが武器を鞘に戻し、感想をいう。ちなみに珍しい鉱石というのは「ロック・スコーピオ」からドロップした黒く光る「バフォ鉱石」というものである。
この鉱石は火山の奥でしか採れないため希少価値も高く、装飾品や武器防具の強化などに多々使用されるかなり、需要のある鉱石ことである。
そんな「バフォ鉱石」が残り物のみを葬っていた俺だけで28個もドロップしたのだ。優とマリアはかなりの数持っているだろう。後でちょっと恵んで貰おうかな?
「それじゃあ、全部蹴散らしたし、行くか?」
「そうね……行きましょうか」
「わかりましたわ」
先ほどの戦闘など微塵も感じさせない動きで歩き始める。実際にこのくらいならば十数回やっても疲れないがな。こうして、俺達は雑談をしながらどんどんと歩いていくのだった……
読んでいただきありがとうございます。50話のシリアスな話から気持ちを入れ替えての51話目。明るい雰囲気でやってみました。後、2~3話は道中の話しになると思います。(もちろん、いつも違うパターンにしますけど……)
ありがとうございました!
12年11月23日 和也の台詞を少し変えました。




