雨……
祝50話!と言う事なんですがまさかのシリアスになってしまいました(苦笑)
「今日は、雨か……ちっ、嫌だな」
起き始めた瞬間から俺は憂鬱な気分になる。本当に……
宿の屋根を激しい雨が叩いている。今日は、この世界で稀に見る「雨の日」のようだ。普段は全くと言ってもよいほど降らないが、降るときは今までに溜まっていたかのように、どっと降ってくる。こうなると、翌日にならなければ降り止む事も無くずぅ~っと、この仮想の地面を濡らし続ける。
そして、この雨は地形やモンスターの湧出、さらにはアイテムまでにも影響を及ぼす。川や湖などの水系フィールドであれば水かさが増し、それが川であったら激しい水流が発生して水に入ったらダメージを受けるとか……
曖昧なのは俺自身がやったわけで無いからだけど、この情報は「新聞」掲載されていたし、ちゃんとした確証もある。
前々の「雨の日」の翌日に発行された朝刊に載っていたのだ。
「プレイヤー。一名激流に流され水死……自殺の可能性も?とり合えず、天気が雨の時の水辺には注意!!」と……全く知らない人ならば笑い飛ばしてたかもしれない記事だが……
だが、どういうわけかそのプレイヤーとは俺の現実での親友だったのだ。この親友とはこのゲームが始まって一ヶ月ほどに再開した。
そいつは小学校の時からの腐れ縁で多くの時間を共にいた。中学では同じ部活に入って汗水たらし、お互いに競いあっていた。高校でもそんな感じの日々が続き、何気ない日々を過していた。
そんな時にこのゲームが「Free adventure」が発売された。俺達は両方ゲーム好きなだけあってPCでMMOなんかも一緒にやっていた。
二人でゲーム店の前に9時間前から並んで、身を寄せ合って寒さを凌いだのはいい思い出である。
「一緒にやろうな!」と言ってくれたあいつに「おお!」と短く返事をした。未知のフルダイブゲームがどんなものか、多いに期待していた。こんな事が起ころうとしていることも知らず……
でも、あいつはその当日の日に俺は「ご、ごめん!パートに行った母さんが電車の金、片道分しか持っててないみてぇ~でさ、今日は無理かもしんない!」と電話を貰ったんだ。
おばさんは俺から見てもおっちょこちょいな人だった。俺は口元を緩ませながら「急いで行ってこいよ。俺の事なんていいから。おばさんがかわいそうだろ?」と茶化すように言ってやった。
おばさんがパートで行っている店は電車で結構かかる所にあるため行き来だけでも時間がかかるし、何よりあの人は自分の子供がいればパートが終わるまでまたして、外食にでも連れってしまうような人だ。だから、あいつは今日無理と言った。
ゲームが開始される日に一緒に出来ないのは残念だが、あいつがおばさんを大切にしているのは知っているから文句など到底言えない。
こんな事もあり、俺はしょうがなく一人でゲームやり始めた。
三時間後にはこの現状である。ログアウト不可能、死んだら終わりのデスゲーム。でも、俺は内心ほっとしていた。
親友がこのゲームに巻き込まれくて良かったと……あいつはいい奴だから、こんな目にはあって欲しくなかった。
あいつはゲームに囚われてしまった俺を見て悲しんでいるだろうか?いや、きっとそのはずだ。だから、生きて帰るために、自分だけを生かす為に早々に始まりの町を出た。
何回も死にそうな目には遭ったけど、なんとか無事に生還する事が出来た。俺は危険な目にあう度に絶対に帰ってやるって言う気持ちが膨れ上がっていった。
そして、この非現実的で非日常的な日々が日常に変わろうとしているときに、とある街でこいつと再会した。
あった時は何故か怒りがこみ上げてきた。現実で普段と変わらない日々を過しているはずの親友が、こんな死ととなり合わせの世界にいたのだ。
「(なんで、なんでお前もこのゲームをやっているんだよ!お前には安全でいて欲しかった……)」そんな思いだった。
こいつはおばさんに金を渡した後に誘いを無理に断って即、家に帰ってゲームをログインしたようだ。その時刻15時10分……10分、たった10分の所為で俺の親友はこのゲームに囚われてしまったのだ。
俺はおそらく、これほどまでに時を恨んだ事はないだろう。しかし、こんな事を言ってもしょうがない。
俺は直ぐに切り替えて、またパーティーを組もうとあいつに言った。だけど、断られた。あいつはこう言った。
「ごめん。誘いは凄く嬉しい……だけど、俺にもお前にもお互いに在籍しているパーティーある。俺達だけの判断で決めるわけにもいけないし、何よりも俺らとお前らじゃあ、LVの差があり過ぎる」
正論であった。確かに独断で決めるのはおかしい。でも俺はどうしてもこいつも仲間に入れたくて……だから、優やマリア。そして、こいつのパーティーの奴らも説得しようと考え出したんだ。でも、さっきこいつが言ったある一部が頭に浮かんできた。
「何よりも俺らとお前らじゃあ、LVの差があり過ぎる」……
LVの差。これは簡単に考えてはいけない。俺、優、マリアの3人は自分で言うのもなんだが、トッププレイヤーのLVと同じかそれ以上かと言うぐらいになっていた。しかし、こいつのパーティーメンバーは全員、俺達よりも15LV以上も差があった。
15LVそれは、低いLVでは簡単に上がってしまうLVだが、このゲーム、20LVらへんを超えると急激に上がらなくなる。
俺達だって一ヶ月間ほぼ毎日、攻略をしていても3LV上がればいい方だ。ある程度いけば上がる数字でもない。別に俺らのパーティーがLVの低いところで狩りをしたっていい訳だが、そこには大きな問題があった。
それは力の過信である。これまで、多くの情報を手にしている俺は新聞で毎日のように掲載される死亡者欄。となりにある死者のLVと死因が載っている。これを毎日見ていると、ある傾向があった。
「LVの低いものは調子に乗り、少しでも適正LVの高いダンジョンで死亡。高い者は素材集めか、なんなのかは知らないが適正LVの低いダンジョンで死亡。もちろん、普通に攻略をしていても、命を落とす人もいるがそれは、不運にもモンスターの溜まり場や湧出に遭遇してしまったプレイヤーぐらいである」
つまり、ほとんどの死亡原因は己が力を過信して引き所を間違えてのものだ。これはどんなに数値的なLVが高かったところで自制心が効かなければ死んでしまう。
このことはきっと、今まで生き残ったプレイヤーたちは良くわかる事だろう。だから、低LVの者が適正の高いダンジョンに行く事も、逆に高い者が適正の低いダンジョンに行く事は好ましくない。これに関しては流石にどうする事も出来ない……だけど。
「……わかったよ。もう、パーティー組んでくれとは言わない。でも、何か困った事があれば言ってくれ……助けに行く!」
「ああ!」
俺にはずっと会っていなかったのにこの時、これまでよりも強い友情を感じる事が出来た。
その後はお互いにパーティーを紹介しあったり、共に夕食をとったりしながら色んな事を語った。
初めの日の事。優とあった事。始めて行った村のフィールドダンジョンで2回も死にそうになった事。マリアとあった事。そして、一層の攻略であった事……どれも、俺の親友は時のは大笑い。時には真剣な顔つきで聴いてくれた。逆に俺もこいつの今までの事を沢山聴いた。
この時間はは、とても有意義なものであり、とても楽しいものであり、とても短かいものであった。あっという間に時は過ぎ、別れの日になった……
「じゃあな和也。元気でな……何か行き詰ったときは連絡するわ」
「わかったよ光輝。俺も何か会ったらメール送る……早くLV追いつけよ?」
「ああ、腰抜かすなよ!そのうちお前のLVなんか超えてやるんだから!」
「望むところだ!!」
そして、俺らは握手する。その握手は友情と同じ分だけ硬く握っていた……そのときの光輝の笑顔は名前のように光、輝いていた。
この後も、俺達は連絡を取り合った。その日あった事。パーティーメンバーの面白おかしい話し。攻略のポイント。モンスターの弱点。などなど……いろんな事を報告していた。そして、あの日が来てしまった……
その日の狩りは普段と比べ、過酷そのものだった。さらには、雨まで降っていた……酷い雨だ。これによって出てくるモンスターが若干変わっていた。
でも、いつも行っているダンジョンだったし多少の問題は無視していた。もちろん、適正LVは沿って攻略をしている……しかし、楽に行けるダンジョンでもなかったのは確かだ。それでもそこでやっていたのは、比較的に獲得経験値の高いモンスターが数多く生息していた。
少し危険だったが、今の実力なら20体ほどの群れなら倒せると検証済みだった。一日目のときにモンスターの湧出に居合わせてしまった。しかし、思ったよりも楽に倒せ相性がいい事が分かりそれ以来、ずっとそのフィールドダンジョンに行きっぱなしである。
でも、あの時は違った。モンスタートラップ……(大量のモンスターが一気に湧出するトラップ。そして、転移アイテムが使用不可)のある場所に入ってしまった。これまでに見た事もないようなモンスターの群れが部屋から溢れだそうと、空きペースに関係なくどんどん湧出していくではないか……その数は実に百を超えていたと思う。
これまでに何回も修羅場と呼べる惨状を潜り抜けてきた俺と優とマリアだが、このときは流石に死を意識させられた。でも、あきらめずに最後まで戦った……
持ち込んだ回復系統のアイテムは全て使い果たし、HPもギリギリのところで3人生き残る事が出来た。戦闘時間は実に2時間を超えた。やっとの思いで乗り越えた……
トラップのあった場所から素早く受けると即座にパーティー用の「転移石」を惜しげもなく使った。転移した瞬間、俺達の全身の筋肉は極度の緊張感から解けたためか一気に力が抜け、その場に倒れこんでしまった。
直ぐに借りている宿部屋に3人とも入っていった。こんな事があった時は絶対にこうなってしまう。あういう状況は身体はもちろん、精神的にもかなりの疲労をもたらす。そんなときは寝るのが一番だからって理由もあるが……
それがいけなかった……俺は何時もならやっている武器や防具整備、そして光輝からの連絡を見る事をその日だけはしなかったのである。そして、未だ雨はこの大地をぬらし続けていた……
翌朝目覚めると昨夜までのモヤモヤ感が嘘のように消えていた……
「(そう言えば、装備つけたまんまじゃんか)」
着替えようと思ってウインドウを開くとメールがニ通届いている事に気づいた。
「あ、やべぇ~光輝のメール見てないじゃん……もう一通は、「新聞」か……」
俺は「新聞」のネタでもメールに書いて面白おかしく言ってやろうかな~っと考え、「新聞」と書かれたメールを開く。すると、瞬時に新聞紙に似たものが実体化される。4つ折りになっている新聞を開くと……
「プレイヤー。一名激流に流され水死……自殺の可能性も?とり合えず、天気が雨の時の水辺には注意!!」
その記事が一面を飾っていた。見て一瞬、「ありぇね~」と思ったが人が死んでしまったんだ。こんな事考えるのは駄目だろうと、気持ちを切り替えその記事に目を通していく……
「起きたのは「デッカリータウン」か……ん?デッカリーって今、光輝いる所だよな……?あいつ知ってんのかな~?んで。その者は当日にパーティーメンバーが全滅してしまっている事から自殺の線があるか……この言葉を目にするともっと笑えねぇよ……なになに~……!?」
それを目にした瞬間、俺の中の思考が停止した。その続きには……「プレイヤー名……「光輝」と書かれていた。
「う、嘘……だろ?い、いや何かの間違えだっ!」
嘘を書きやがった新聞を床に思いっきり叩きつけ、手を汗に湿らせながら急いで光輝から届いたメールを確認する。
「すまん」
行き成りでスマンが、今日の攻略で俺のパーティーが全滅したんだ……ちょっと、適正の高いダンジョンに行ったらモンスタートラップをくらって……そのまま。俺はなんとかして抜けれたんだ。いや、あいつらが逃がしてくれたんだよ……俺、もう駄目かもしんない。助けて貰った命だけど、生きていける気がしない……どうすればいい?なぁ、和也?
光輝
「な、なんだよ、これ?意味わかんねぇ~よ……」
理解できなかった……視界から入ってくる情報が脳をおおいつくした。パーティー全滅……同時期からの光輝からのこのメール。そして、名前が当てはまってしまっていた。
気づいたら、走り出していた。優たちには何も言わずに宿を飛び出し、走り続けた。とにかく、ずっと、ずっと遠くへ……1キロほど行った場所で「転移石」を使った。行き先は始まりの街だ。
体が透けていき、浮き上がる感覚が襲ってくる。
目を開けると、そこは始まりの街の風景が広がっていた。俺はある場所を目指して歩き始めた。出店など目をくれずにただ、その場所を目指してひたすら歩き出す。そして、その場所に着いた。教会である。
「……っ!」
意を決して、教会の大扉を開ける。古びた開閉音が響き渡り、背筋がぞっとした。次に視界に入ったのは大きな石の板である。その板の前に行き祈るような思いで「光輝」という名前を探した。
この石板は今、ログイン中のプレイヤーは表示する。ログイン……この世界では生きているという意味。でも、その逆ログアウトは死んでしまっている事を表していた。
「ありませんように……」こう、祈りながら探していく。始めに目についた名前は光輝のパーティーメンバーの名であった。次から次とあいつのパーティーの名前が出てきた。そして……
「くっ、なんでだよっ!なんでなんだよ!!!」
力一杯、石版を殴りつけた。鈍い音が周囲に響き、俺のこぶしには痛みしか残らなかった。俺の睨む場所。そこには……
「光輝」ログアウト……水死により
「アアアアああぁぁああぁぁああぁあああぁああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
何かが切れてしまった。理性はぶっ飛び、ただひたすら昨日メールを見なかった俺自身に怒りがこみ上げてきた。もし、俺があいつを止める事が出来たたら……もし、俺がこのゲームが始まったときに光輝を探していれば……色んな後悔が俺の思考を埋め尽くしていく。自然と涙も溢れだしていった……これまでにないほど泣いた。この世界の雨と似て、これまでに溜まっていたもの全てが出ていくように……
「光輝。ごめんな……俺が行っていれば」
過去の事を思い出しているとあの時と同じように涙が溢れてきた。今日はなんにも、やる気が出なかった。そして、宿に当たる雨は今は尚、降り続けていた。
「和也?いるの~?あけるよ」
ドアから優の声とノック音が聞こえてくる。どうやら、いつまで経っても現れない俺を心配したのかもしれない。ドアが開く音がし、優たちが入ってきた……
「か、和也さん!どうしたんですの!?」
「ど、どうしたの!?」
二人は悲しみにくれて泣いている俺を見ると驚いたように声をあげた。
「ごめん。今日、出発できそうにないや……雨。だから……」
腕で顔を隠しながら、震える涙声で言った。
「雨……」
「あ、雨……」
「そう、雨。なんだ……」
優とマリアは雨が降っている事に気づいたようだ。そして、事情を知っている二人は気まずそうに俯いていた。
「ごめんな……今日はとりあえず一人で居させてくれないか?」
「うん。そう言う事なら仕方がないよ……ゆっくり休んでね」
「和也さん!気を負う必要はありませんのよ?とにかく、ゆっくり休んでくださいね」
こう言い残して、二人は出ていった。気を使ってくれたのだ。あの時も、そうだったけ?二人には後でもう一回謝っておかないとな……
「グスッ……本当に、本当にごめん光輝……俺、絶対に生きて帰るからな」
俺の目には降っている雨にも負けないほどの水で覆われているようだった……そして再び強く、とても強く、生きて帰ると心に誓った。
読んで下さってありがとうございます。さて、今回の話ですがまさかのシリアス回でした。50話だからなんか、違う感じで書こうと思ったらこんな感じになってしまいました(泣)頭の中にはこんな感じの話を入れようと思っていたのですが、どうしてここに入れちゃったんだろうな~
これは、不愉快に思う人もいるかもしれませんがこのような話も入れないと和也がどうして、生き残る事をこんなにも考えているのかを表現できないかと思ったからです。前半部分に「あいつ」、「こいつ」などの表現で光輝が和也に言われているのは和也自身の心境を考えたら曖昧にした方がいいと思ったからです。読みづらいとは思いますが了承してください。
長々と書きましたが、ここはしっかりと説明しなければと思ったためです。次回からはまたいつものテンポに戻ります。予告としては次の拠点に向かう道中と行ったところでしょうか?そんな感じでいきます!次回もよろしくお願いします!!
12年11月18日 ちょっと、適正の高いダンジョンに行ったらモンスターとラップをくらって……⇒ちょっと、適正の高いダンジョンに行ったらモンスタートラップをくらって…… に訂正しました。
12年11月25日 言い回しを少し変えました。




