単独戦
まるでゴーストタウンのような人の気配などが全く感じられない世界で俺たちは戦っていた。街の所々は黒くなっていて、それなりに劣化も進んでいた。そんなところには今、目の前で戦っている鷲型モンスターの「フォーク」等など、並大抵の強さでは死の危険性のあるモンスターがうじゃうじゃしていた。
「あがっ・・・チッ、やっぱこの9層のモンスターは強いな」
巨大な鳥、いや鷲のモンスターなのだがコイツの突進は凄かった・・・とても、この剣。俺の持っている「ロングソード」の軽量さでは対応できなかった。
今その突進を受け、剣でとっさに防いだものの大きく吹っ飛ばされて10m程後ろにあった建物と激しくぶつかった。突進は最低限、剣を間に入れたため受けるダメージが少なかったが流石に建物とぶつかり時に生じたダメージは軽減することができず、満タンだったHPが残り7割になる。
痺れるような背中の痛みに少しふらつくが直ぐに持ち直す。相手は隙あれば連続で突進をお見舞いしてくるのだ少しでも隙は減らさなければこちらには絶対、形勢逆転はない。
他の二人と一匹もそれぞれ一体ずつ戦っているのだ。ここで俺が負けるわけにもいかない。
「これで、どうだっ!」
いきなり走りだし、「跳躍」スキルのジャンプ力を最大限に生かしての跳躍!そのジャンプはゆうに8m近くに達し、俺は数秒だけ「フォーク」を視界の下に捉えることができた。
「上は貰った!!」
そのまま重力に逆らわずに降下していき、「フォーク」の脳天に単発重撃縦切りの「ギアス」を発動させて勢いの任せて振り下ろす!
その一撃は容易に「フォーク」の頭を砕くが、そこはゲーム。HPが0にならなければモンスターは動き続ける。だが、今の一撃だけで「フォーク」の体力は4割弱。これならいける!
「でも、普通のモンスターよりはここの層のモンスターはタフだよな・・・っと」
行き成り放ってきた「フォーク」の中距離攻撃の竜巻である。2本の風の柱が左右から同時に襲いかかってくるがそれをバックステップで躱す。
しかし、「フォーク」はそのバックステップを狙ったように突進を仕掛けてくる。
「グッハ!?」
大きくバックステップした所為で次の行動が取れず突進をモロに受けてしまう。自動回復で8割まで回復していたHPは一気に4割になり、イエローゾーンに入ってしまった。
瞬時に自作回復ポーションの栓を開けてその瓶の中の液体を飲み干す。口の中にはリンゴのほのかな甘味が広がり、乾いていた喉をHPと共に潤わせてくれた。
ポーションのお陰もありHPバーの色が緑になったことを目の端で捉えた俺はお返しとばかりに、1秒間に数十回のペースで斬撃をくらわせる。
初めは華麗に躱し続けていた「フォーク」だが5秒くらい立つと次第に動きにキレがなくなり数発ほどダメージを与えることができた。10秒にもわたる連続攻撃で「フォーク」のHPは2割になりレッドゾーンへ突入していた。
最後の一撃に単発斜め切りの「スラッシュ」を左翼に当てて残りのHPを吹っ飛ばした。「フォーク」・・・モンスターの断末魔の変わりであるガラスが砕けるような高く響くような音、そのモンスターが消える様子を無情に眺める。
俺が戦闘の後に思うのは歓喜ではない・・・これがゲームでなく現実ならこいつらを殺せたのだろうか・・・と考えさせられる。今までオンラインゲームで数万、数億体ものモンスターを倒してきて、それなりに強いモンスターと戦闘したときは大層喜んだ。
だがこのゲーム「Free adventure」では、そのモンスターたちの命に重みが感じられた・・・一体なぜだろう・・・?
優は「マグラーテ」と戦闘をしていた。このモンスターは見た目通り溶岩なので水属性の攻撃・・・と言うか魔法のある優が一番相性が良かった。
しかも、「ケルベロス」や「フォーク」と違い俊敏さに欠ける「マグラーテ」の鈍足には優が魔法を詠唱し、発動させるには十分過ぎる猶予があった。
「よいっしょっと・・・」
水属性の魔法を詠唱し放つ、そして躱す。ひたすらこの作業を繰り返し行い「マグラーテ」を比較的安全にしかも、効率良く着々と弱体化させていた。
本当ならもうちょっと強い水属性の魔法が使えればあっさりとしかも、スピーディーに戦闘を終了させることができるのだが、生憎優は初級クラスの水の魔道書しか所持していなかった。
「魔法使い」スキルを持つプレイヤーの魔法は、どれほど強力な魔道書を手にしているか。「魔法使い」のLVはどのくらい高いかによって威力が増減するのだ。
優の場合は「魔法使い」のLVは十分であったが魔道書の力が弱すぎたのが、この低火力の原因であった。それでも、「マグラーテ」を倒すには十分だったわけだが・・・
「これで終わりっ!」
20回ほどの繰り返しでとうとう、「マグラーテ」が力尽きた・・・気づけば優はMPはほとんど無くなっていた。いくら威力の弱い魔法だとしても何回も使いすぎれば自然とMPが減ってくるわけで・・・
思ってた以上にMPの効率が悪いことに若干落胆したが、それならば水属性の強力な魔道書を絶対買おうと思う優であった。
一方、マリアとその獣従であるポチこと「ケルベロス」君は和也と同じく「フォーク」との戦闘をしていた。マリアはポチの背中に騎乗しており、その姿はまるで中世ヨーロッパの女騎士のように凛々しく気高かった。
ポチは「ケルベロス」のスピードと馬鹿力を駆使して自分よりもスピードが上回る「フォーク」相手に互角以上の動きをしていた。マリアが乗っているにも関わらずにだ。
この主人と獣従はあってあまり間もなく、契約も結んだのもほんの数十分前なのに見事な連携を見せていた。やはり、空中にいる「フォーク」にはマリアの大剣による攻撃が決まりづらく、今までは一撃くらわせるだけでも一苦労だったのに対して、ポチに乗ってからはほとんどの攻撃が当たっていた。
「これでっ、終わりですわっ!!」
ポチが大跳躍して「フォーク」目の前に飛び、フェイントの噛み付きをかます。フェイントといってもかなりの力がこもっている為「フォーク」はそれを当たってはマズイと本能で感じ、躱す・・・が、そのかなり力のこもっているフェイントは実際にはありえないほど力のこもったものであった。
当たってもいないのに何故か噛み付きの時に生まれた風圧の所為で一瞬「フォーク」は身動きが取れなくなる。その一瞬をマリアは見逃さない。
彼女は迷いもせずにポチからジャンプして「フォーク」の上をポジショニングする。それと同時に始まる重力により降下・・・和也と全く同じ戦法であった。
だけど、彼女の攻撃は和也の攻撃とは段違いに威力が違った。まず、片手剣で軽量の「ロングソード」ではマリアの大剣「ブレイズソード」では明らかに重量が違う。
それプラス彼女の装備している防具はほとんどが鉄製のもの彼女自体は軽くても防具による重さで放たれる超重量級の「ギアス」のダメージ量は計り知れなかった・・・
「ありがとうございます。ポチ」
「ガウガウッ!!」
そして、効果し続ける彼女を獣従であるポチは背中で受け止める。それは靭な肉体を持つ「ケルベロス」にしか出来ないものであった。ある意味この一人と一匹はゴールデンコンビかもしれない。
「みんな、取り敢えずお疲れ・・・」
「私はひたすら魔法撃ってただけだからあんまり疲れてないけどね」
「私も2擊ほど加えただけなのでそれほど・・・」
「そ、そうですか・・・俺はお前らから見れば火力が小さいけど、でもお前らの力量が多すぎるって解釈をしたほうがいいと思うんだ」
俺はあんなに苦戦してしかも数100擊くらいの斬撃をくらわせてやっと倒したのに、こんなにもあっさりと倒せたと聞くのは少し、いや多大に嫌になってきた・・・
「しょうがないよ・・・私は「魔法使い」のLVが上がればもともと高火力になる予定だったし。マリアはポチが仲間に加わって、さらにパワフル感が増したから・・・ねっ?」
「そ、そうですわ。私たちは攻撃速度が遅くて硬い敵にはダメージをくらってしまいますが、和也さんならヒットアンド・アウェイができるでしょう?」
「・・・・・・う、うわ~。グッス・・・」
「そうだよな・・・」
慰めて貰っていることに自分が哀れになってきたがなんとか持ちこたえた。うん、よく頑張った俺。
そんな一悶着から1時間。洞窟らしきものをやっと見つけた。
「でも、周りの奴ら・・・」
「これじゃあ、見つけても誰も通れないし、行っても死ぬだけよね・・・」
「確かにそうですわよね。ここだけ難易度跳ね上がってません?」
見つけた洞窟のようなものの周りには「マグラーテ」、「ケルベロス」、「フォーク」の3体のモンスターがそれぞれ20体ずついた。これなんて無理ゲー?
「行くしかないか・・・よしっ、行くぞ!!」
「「はい」ですわ」
「ガ~ッウ」
それぞれの戦闘態勢に入り、モンスターの多勢に突入していった。
読んでくださってありがとうございます。サブタイトルの通り「単独戦」でした。これで今まで結構あやふやにしていた戦いが想像しやすくなったかと・・・
実際のところフルメンバーでの戦闘描写をどうすればいいのかが分からずかなり迷ってます。今回はある意味、戦闘描写の練習なんですよ(笑)
次回は私が困っているパーティー戦であります。ですがこれだけ言っておきましょう。2以上対多勢の戦闘描写は苦手です!!
多分わかりづらくなりますがそこはなにとぞよろしくお願いします。
12年10月13日 言っても⇒行っても
11月18日 髪付き⇒噛み付き に訂正しました。




