調合
「調合」のスキルを獲得すると今までただの実にしか見えなかった木の実がどんな効果があるのかなどが見えるようになっていた。
取り敢えず俺は様々な木の実(優の料理食材)だが、その中から自然治癒力を高める効果を実を探すと案外簡単に見つかった。
それは刺々しい、いや本当に刺のある実のため、そのまま食べることは出来なさそうだった。それを「ロングソード」で両断する。
「料理はできないが切ることなら出来る!」
そんな言ってて悲しいことを言いつつ、切った片方の実を刺が刺さらないように掴みスプーンを使って実を取り出す。それを皿に移し、もう一方の実も同じようにする。
二人の布団の近くへ歩み寄り腰を下ろし、まず優の方を「トントン」と指で突っつく。
「ん?か、和也・・・どうしたの?」
「ほら、自然治癒力を高める木の実だよ。食べて・・・」
「うん、ありがとう・・・」
少女の甘えた声とあまりの警戒心のないとびっきりの笑顔に「グラ」っときたがこの状況でこんなこと思っちゃいけない・・・だが、本当に可愛かった。
普段強気の彼女がまるで自分に甘えたような声で「ありがとう」と呟くのだ。これで可愛いと思わなかったらそいつは男じゃない!!
いかんいかんと首を横に邪念を振り切る。でも、振り切れた感がしないのはなぜだろう・・・そ、そんなことより次はマリアさんのところへ行かなくては!
チビチビと実を食している優を見て、ドキマキしながらもそのとなりの金髪美少女マリアさんを楽にするためにさっきと同じように彼女を起こす。
「・・・か、和也さん。どうしたのですか」
「マリアさん。自然治癒力を高める実です。ほら、食べてくれ」
そう言って彼女に身の入った容器を持たせようとするが受け取ってもらえない・・・?のような顔を俺がするとマリアさんは少し顔を赤めながらもじもじと言った。
「和也さん・・・た、|食べさせてくださいませ《・・・・・・・・・・・》///」
「え、ええ!?(や、ヤバイ・・・鼻から真っ赤な液体が!?」
まさかのマリアさんの照れながら甘えてくることに今までで既に限界であった脳がとうとうオーバーヒートしてしまった。鼻からは止まることなく血が溢れ出し、俺の頬はだらしないくらいに緩みきっていた。
「だめですか?」
「ぜ、ぜんぜんダメじゃないです!むしろどんとこいです!!」
この金髪美少女が涙目でしかも赤面して上目遣いで聞いてくるこれは、もう色々と限界であった。急激な体温の上昇と今までの疲れで意識が朦朧としているが、なぜか今なら世界征服ぐらいできる気がしてきた。
「は、はいあ~ん」
「あ~ん」
こ、これはどこのバカップルなんだ!?お、おかしい、なんだこのリア充っぷりは現実より充実しているじゃないか!
その後もマリアさんに食べさせていると・・・突然後ろから殺気らしきものが感じられた。
「・・・マリアだけにやるんだ?私のことはなんにも心配してないのね」
「そ、そんなことは・・・」
そこにはHPが微量に回復しつつある優がいた。まだ、HPは足りなく1擊受けただけでも危ない状態だが、逆に今の彼女ならどんなモンスターでも一撃できるくらいの殺気がそこに存在していた。
「ほら、私にもしなさい!」
そう言って優は俺に木の実が入っている皿を無理やり受け取らせ口を開いて待っていた・・・
「・・・わ、わかったよ。あ、あ~ん」
「あ~ん♪」
それまで彼女を包んでいた殺気が嘘みたいに消えて、なんか甘ったるい空間が広がっていた。い、居づらい・・・
「か、和也さん。今度はこっちお願いしますわね」
「は、はい!分かりました」
再び、マリアさんに呼ばれて彼女の方を向く。それからの事は察してください・・・
「さ、さぁ~ってそろそろポーションをっと」
やっと優とマリアさんに解放された俺は当初の目標であるポーション作りを開始した。ちなみに女子二人はHP回復専念のため、まだ眠っている。
ステータスからスキル「調合」をタッチすると調合表と言うものが出てきた。そこには材料と作り方、それらからできる制作物の名前などが載っていた。俺が必要なのは回復ポーションなのでそれを探した。
案外それはすぐに見つかり、その制作に乗り出した。
「え~っと、なになに・・・まず「薬草」をすり潰し、緑色の液体を取り出す。か・・・」
緑色をした草、薬草なのだがそれを調合キットなど持ち合わせていないので、代用として料理で使うまな板を利用した。まな板の上に薬草をのせて包丁などを使ってひたすらすり潰す。
その作業は初めはぎこちなかったもののそれも次第に慣れて、かなりの量の薬草エキスを取り出すことができた。
次の作業は「シューレの実」と言うリンゴのような赤い果実の果汁を薬草エキスと混ぜる。リンゴのように皮を剥いてそれを8等分する。
その後にリンゴを「薬草」と同じようにすり潰してリンゴの果汁が出てくると周囲にりんごの匂いが漂った。この「シューレの実」はリンゴよりも香りが強いようだ。
それらをよく混ぜて加熱する。鍋の中で8の字を描くようにかき回し焦げないように気をつけながら常に沸騰した状態を作り上げる。しばらく加熱して薬草エキスと「シューレの実」の果汁を凝縮させる。
500ml程あった液体は今では5分の1、100mlに凝縮されてその色はかなり濃い緑色であった。その凝縮された液体を10mlずつ分けて、それぞれに90ml綺麗な真水を入れてかき混ぜる。
ビンのガラスと鉄製のスプーンが当たり合い「キンキーン」っと高い綺麗な音が響く。段々、液体は濃い緑色から鮮やかな薄い黄緑色へと変わっていた。さらにその液体からはリンゴのほのかに甘い香りが鼻腔をくすぐっていた・・・
一応毒見として俺がひと瓶、自作回復ポーションを飲むがもともと満タンだったHPは増えることも減ることもなかったが少なくても減らないってことは成功したようだった。
残り9瓶となった回復ポーションを体力がマリアさんより多い優は5本、マリアさんは優より若干HPが低いので4本に分けた。
「優・・・マリアさん・・・」
僅かに顔色が良くなってきた二人を見てホッとするが今だにレッドゾーンは抜け出していなかった。肩を軽く揺すり二人を起こした。
「おはよう、和也・・・どうしたの?」
「おはようございます・・・どうされましたか?」
「あ、おはよう。ポーションだ・・・飲んでくれ、これで楽になる」
二人に回復ポーションの入った瓶を渡すと驚いたように俺の顔を凝視した。ははは、照れるから見るなよ・・・
「これどうしたの?確かポーションはどれ一つなかったはず・・・なのに」
「作ったんだ。さっき「調合」のスキルを習得してマニュアル通りに回復ポーションを作ったんだ。材料は優の料理素材と俺の所持していた「薬草」と料理器具を使って作ったんだ。俺が飲んでもなんにも変化がなかったからバットステータスがあるポーションじゃないから大丈夫だ」
簡単に説明して早く飲んでと急かす。
「あ、美味しい・・・ですわ」
「そ、そう。それは良かったよ」
マリアさんはポーションを美味しそうに飲み干し、直ぐに2本目を飲みに入った。どうやら味もうまくいったようだ。
俺はどちらかというと甘酸っぱい味が好きなので市場で販売されているポーションの方が好きだったのだが、どうやらマリアさんはリンゴの味がするこっちの自作ポーションの方がお気に召したようだ。
「ほ、本当に美味しい・・・」
どうやらリンゴ味が好きなのは優も同じようだった。良かった・・・ただひたすらそう思った。
彼女たちの体力はその後ミルミルと回復していった。二人とも全部飲み干す頃にはHPは全快していた。俺の初の調合は大成功だったようだ・・・
読んでくださってありがとうございます。今回は和也が二人のヒロインの為に尽くす話でした。なぜか彼に甘える二人の美少女・・・よく理性が持ったと和也を褒めてあげてください(笑)
という感じで大ピンチから和也くんのファインプレーによって窮地を脱しました。これから起死回生であります!次回もよろしくお願いします!




