剣技
「ようこそ!皆さん。この【Free adventure】の世界へ。
私はこのゲームを開発・デザインした荒野というものだ。
ここでGMからお知らせだ。今から初のそして最後の全ユーザー参加型のイベントを開始する!
君たちにはこの世界の九つの大陸を攻略していってもらう。
この大陸には各7体のずつボスモンスターが存在している。その7体はすべて別の迷宮にいる。
ボスを7体全て倒せば、第二の大陸の道が開かれる。
これを第九の大陸までやってもらい、全て倒すことができれば君たちをこの世界から解放しよう!
もし、この世界をクリアする前に死が訪れればその者は二度と蘇ることはないだろう。
ゲームとしても現実としても・・・
私たちのイベント報告はこれで終了だ。君たちがゲームをクリアーするのを願っている。
では、健闘を祈る」
この瞬間周りが静まりかえった。
だが俺はそんなこと気にもせずにすぐにここから脱出するために自分が何をするべきかを考えた。それは簡単なことだ。つまり、このゲームがクリアする前に死なないことだ。絶対に・・・
そのためにはまず、最低限自分を守るための強さは持たなければならない。このゲームはPK、プレイヤーキルが可能なんだ。だから、俺はそんなことをされない為にも強さを求めなければならない。そう考えた俺はすぐにこの街を出ることを決意した。これは予想だが俺と同じ考えの奴らは少なからずいるだろう。そうだとしたら安全な街の近場にある草原などにLVアップのためにプレイヤーがごっそり集まるだろう。そうすると、あの場所のモンスター湧出が枯渇するだろう。なぜなら湧出は決まった数しか出ないからだ。それでは他のプレイヤーから自分を守れるような強さは到底つかない。だから俺はこの街を出る。自分を守るために。
そして、俺は次の行動に出た。まずは武器防具を充実されることだ。という訳で街の北側にある武器屋に入った。「いらっしゃい」と厳つい爺さんが言ってくる。
ここへ来たのはさっきの戦闘で耐久度の消耗した「ビギナーナイフ」を研磨によって元に戻すためと「ビギナーナイフ」のスペア武器、いまの防具よりは幾らか良い防具を購入するためだ。
「研磨を頼む」
と短く言い、「ビギナーナイフ」を渡して俺は店の右側のテーブルにある武器に目を向けた。そこには10本の「銅の剣」、26本の「ビギナーナイフ」、そして4本の「スラッシュ・ナイフ」という物があった。こういうものは沢山あるやつよりも少ないやつの方が性能が良いのではないのだろうか?
そのような考えで1本「スラッシュナイフ」を手に取る。そしてその刃の側面をタッチする。武器はタッチすることで大まかなステータスが出てくる。
固有名「スラッシュ・ナイフ」 主 ???
攻撃力 26 耐久度129
POW2、SPD6、LUK1
なかなかいい性能だ。「銅の剣」を見てみると攻撃力と耐久度は高いものの+補正が全くなかった。俺はSPDを重視した戦い方をしたいのでSPDに補正のある「スラッシュ・ナイフ」の購入を決める。あとは防具だ。今度は左側の棚へ目を向ける。
防具はあっさり決めた。決めたというよりも1種類しかなかったので迷う余地もなかった。それは「ウリボーの毛皮服」というものだった。防御力は8、耐久度は467。補正はSPD1となかなか悪くないものだ。それを手にとったと同時に「終わったぞ」とさっきまで「ビギナーナイフ」の研磨をしていた爺さんが声をかけてきた。「ありがとう」と言い、先ほど選んだ武器防具を購入すると短く言って、合わせて8400Gを払い店を出た。そして、「スラッシュ・ナイフ」と「ウリボーの毛皮服」を装備して走り出し北の門を走り抜ける。
やっぱり、この安全な草原には先ほどよりも人がいるような気がする。なんとなく湧出が減っているようにも思える。俺はすぐにここから離れる為にステータスウインドウを開き、地図というところをタッチする。すぐに地図が体の前に浮いてくる。街や村は赤でプレイヤーは緑、モンスターは黄色のカーソルで表されていた。ここはこの第一の大陸の中心にあるはじまりの街「ホース」の北側の草原だ。ここから近いところはこの草原をまっすぐ突っ切り、フィールドダンジョン「漆黒の森」の中にある川を下ると新たな村に到着する。そこへ向かうことにした。
1時間歩き、やっと森の中に入ることができた。森ということもあり周囲はもう真っ暗だ。でも、俺は運が良かったのかこの暗闇の中でもこの目ではっきり見ることができた。なぜなら、俺の取った「索敵」のスキルが森へ入る前にLVが5に達し「暗視」が使えるようになったためだ。俺は現在進行形でこれにお世話になっている。他のスキルもこれまでの戦闘により「剣士」と「跳躍」が共に4上がっていた。俺自身のLVも3に上がった。ここまでくる道は楽だったとは絶対言えない。森に入る前は「ビッグウリボー」しか湧いてこなかったがここへ来ると赤い1m超鼠「レッドラァート」や歩くツル持ちの食虫植物「ペネット」が出てくるようになった。
そのあとも何回か戦闘を繰り返し森へ入ってから早、2時間が経っていた。俺の集中力が切れかかっていた時であった。目の前の地図に1つ黄色いカーソルが浮かんだ。背中の「スラッシュ・ナイフ」を抜き、体の前に構える。だが、モンスターは一向に現れない。待ち伏せだ。基本的に地図に映るのは自分の視界に入ったモンスターのみだが「索敵」を持っている俺にはある程度の範囲のモンスターが表示されるようになっていた。はて、どうするか・・・
俺はいきなり走りだしそのまま駆け抜ける。だが、その瞬間待っていたかのように突然出てきた「レッドラァート」が体当たりをしてくる。でも、俺はそれを予想していた。だから落ち着いて「跳躍」の力を使い前へジャンプする。前転するように転がり勢いで立ち上がる。後ろを振り向くと噛み付こうとしていた「レッドラァート」に斬りかかる。
「おりゃぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
とバカみたいに気合を入れ連続で斬りつける。すぐに「レッドラァート」のHPはそこを尽き、ガラスのようにその体は砕け散る。
経験値が加算され、新たなステータスが浮かび上がってきた。
「剣技」が一定レベルに達したため「剣技リスト」に「スラッシュ」が加わりました」
と、俺は直ぐにステータスウインドウを開き、「剣技」、「剣技リスト」の順で開く。
確かに「剣技リスト」には「スラッシュ」という「技」があった。そこをタッチすると説明が目の前に出てきた。
NEW「剣技」
名「スラッシュ」 単発斜め切り 硬直時間2秒
構え・・・聞き手を肩より後ろへ大きく引き、切り込むと同時に前へ体重移動をする。
これは嬉しいやっと戦闘で使えそうなものではないか、ぜひ次の戦闘では使っていきたい。
そう思って再び足を動かす。
実はさっきポーションを2本使っていた。初めてのこの森に来ての戦闘が「レッドラァート」と「ペネット」がそれぞれ2体ずつ出たため、かなり危ないところまでHPが減っていた。なのでポーションの残りは6本、慎重に使っていかなければならない。そんなことをボ~ット考えていると再び地図に黄色カーソル浮かび上がってきた。だが・・・
「なんじゃこりゃ!?」
いつもと違っていた。そのカーソルの数は14、尋常じゃない。
俺はこの時深い絶望感を味わった。そのうちにもどんどん姿がはっきりしてきた。
そして、とうとう湧出してしまった。「レッドラァート」が8体、「ペネット」が6体の大群が・・・
俺は随分と運の悪いようだ。そう自分に評価し、「ちっ」と舌打ちをして背中の剣というには頼りない武器「スラッシュ・ナイフ」を抜き、戦闘態勢に入る。
本当に運が悪いことに俺は初日から大ピンチに陥ってしまったようだ・・・
すいません。遅くなりました。やっと書くことができたので載せることができました。内容と字数は若干変わっていますが大筋は変わっていないはず?です。ご迷惑をおかけしました。