閉ざされた沼地~決死の逃亡~
「よし開けるよ」
活き活きした声でそう言って、宝箱の蓋へ手をかける。
「あ、ちょっと待て」
「なに?」
「もうちょっと慎重にいくべきだ。絶対なんかあるだろ」
「でも私、転移石持ってないし・・・よし、開けよう!」
また、宝箱へ体を向け開けようとしてしまう。
「(しょうがない)」
心で呟き、何かあっても対応できるように背中から「ロングソード」を抜く。
「よし、開けるよ」
「ああ」
優は宝箱の蓋を持ち一気に持ち上げる。
「わぁ~お」
「なんかあった?うわ、スゲ~」
感動したように声をあげた優の方を向くと凄かった。まさに金一色、宝箱の中には溢れる程の金が入っていた。この量だと10万Gぐらいはあると思う。
「めっちゃ入ってる~♪これで金銭面ではしばらく困らないんね!」
「そうだな。でも、仕掛けなかったな」
「まぁ、無かったんだからいいよ。では、早速拝借させて頂く!」
イヤラシい手つきで宝箱の中の金貨をタッチすると、一瞬で山のようにあったそれはなくなり優の所持金になる。俺にも分けてくれるのかな?でも、金銭は優の方が使うのうまそうだしいいっか。
「和也は半分でいい?」
「あれ、貰えるのか・・・てっきり全て持ってかれると思った」
「流石にそれはないよ。私の良心を信じて欲しいね・・・村に戻ったら渡すって」
「そうか、ありがと」
くれる事に多少驚くが素直に感謝しておく。ありがたい・・・
「ゴゴゴゴゴゴゴゴオゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
突然激しい音が鳴り出す。これはフラグ回収してしまったのか!
「お、おい。逃げるぞ!!」
「うん」
短い言葉をかわし逃走する。宝箱のところから走り出しそのまま一軒家ぐらいあった空間から出る。その直後にそこは崩れだした。その崩壊はそこだけに留まらず徐々に俺たちの方に向かってくる。
「ヤベェェェエエエエエ!!」
「ワァァァァアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
「うるせえよ!!全力で走れ!!!」
「そんなこと言っても、あと何キロあると思っているの?私たちが数時間かけて歩いてきたのにこの勢いの崩壊から逃げれるはずないじゃん」
「あきらめんなよ」
スピードのゆるみ始めた彼女の手を強く握り、引っ張っていく。でも、優の言った通り逃げ切れる気がしない。つ~か、無理だ!!どうする?
「(転移石は対象者の一人しか使えないアイテムだし・・・くそっ!こうなったら!)優!俺の転移石を使って離脱しろ!ほらっ!」
実体化した転移石を掴んでいる反対の手に掴ませる。
「え?でも、和也はどうするの?一つしかないんじゃ」
「後もう一個あったんだ。いいから早くいけ!お前もう体力限界だろ」
「で、でも」
「いいから!早く行け!」
食い下がる優に怒鳴り急かす。優はまだ、不満足な顔をしていたが決心したように大きく頷き。
「転移!「サイル」」
と転移のための言葉を言う。その瞬間に優の体は青白く輝き「パァ~ン」と言う音を残し、粒子になって散る。なくなった手の感触に少し恋しさを覚えつつ、尚も全力疾走をする。
なんで、転移しないって?それは予想通りもうねぇんだ!あるはず無いだろあれは高いんだ!!2個も買えるか!!後ろを振り向くと2メートルくらいまで崩壊が進んでいた!ヤベ~死ぬよマジで!!
「クッソ~長いよこのダンジョン!どんだけ長いんだ!!」
愚痴りつつ、未だその速度を緩めずに数十分・・・崩壊の波波まだ俺を飲み込もうとしていた。




