93話
翌日を迎え、俺たちは城から闘技場への道を馬車の中で過ごしていた。
そしてその周囲には人だかり。デイゴ騎士の皆さんが必死に抑えてくれているからなんとか進めているが、もし騎士が手伝ってくれなかったらと思うとぞっとする。
ちなみにクーは親が言っていた通り、お腹が空くと勝手に戻って行った。気まぐれな奴である。
「ちょっとはファンサービスした方が良いのかね?」
「闘技場までは待つべきだろうな。ここでそんなことをすればそれこそ暴徒と同然に発狂しかねんぞ」
「そうですよ。ここは静かに騎士の皆さんに任せるべきだと思います」
昨日の新聞には大々的にこう書かれた。
『闘技大会に現る謎の少年。極星の勇者の再来か!?』
つまり、俺の存在は勇者的存在として民衆に認知されたようだ。腕力だけで戦って勝ったら化け物になっていた可能性もあったのかもしれないが、5属性もの魔法を使って戦ったことで、極星の勇者のネームバリューに乗っかることが出来たみたいだ。
まあ、どっちにしてもまともに外を歩けないことは変わらないが。
さすがに現状を見るとやっちゃったかな(?)とは思うが、それでもさすがに腕力だけじゃ勝てなかったとも思うし、仕方が無かったと諦める。
さすがにこの情報はデイゴだけに留めることは出来ないだろうし、今後は冒険が少し面倒になるかもしれない。何か変装でも考えるべきか……
そんなことを考えながら、闘技場へと到着する。
そして控え室に入り、今日の対戦表を確認した。
「さて、今日の試合は冒険者チームか」
「デイゴチームよりかは強くはなさそうだが油断は禁物だな。即席チームでは無く、元から団体で行動しているチームのようだ。連携が来る可能性が高い」
「私はいつでも全力で行かないと瞬殺されちゃいますからね。今日も頑張りますよ!」
今日の対戦チーム、西の風は元からチームを組んでいた冒険者たちで、その界隈ではかなり有名なチームだそうだ。各々のランクは最高がAランクで最低でもB+とかなり高い上に、連携も取れており集団のうま味を上手く利用してるチームらしい。
依頼もほぼ100%という驚きの達成率だ。
今回闘技大会に出て来るのはそのAランク冒険者と、サブリーダーのA-ランク冒険者、それに戦闘が主な仕事になっている3人らしい。初戦ではカランの騎士チームを破ったというのだから、かなりの実力なのだろうと予想できる。
「連携か。今までには戦ったことが無いタイプだよな」
「今までが各個撃破だったからな」
「まあ俺たちはいつも通りにやるだけだけどな」
即席の連携とかしても、本物の前では児戯に等しいだろうし。
「今日、トーカはどうするのだ? 魔法をフルに使っていくのか?」
「使えるタイミングがあれば使うさ。その方が観客も楽しめるだろ。相手も俺がフルに使ってくることを想定して対策してくれてるだろうし」
「あえて対策されている道を行くのか」
「そりゃ、その方がこっちも弱点見つけられるしな」
相手の対策から自分の弱点を見つけ、それを次に活かす。そうしなければ強くはなれねぇよ。
雑談をしながら、俺たちは試合が始まるまでの間をゆっくりと過ごしていった。
「さあ! いよいよお前らが待ち望んだ試合が始まるぞぉぉおおお!!」
歓声に包まれた闘技場をフィールドの入口から見ながら、俺達は出番を待つ。
今は、昼休憩を挟んで少し落ち着いた観客を司会が必死に煽っている。その文句はもちろん俺についてだった。
「突如として現れた5属性をも使う少年! その力はA+冒険者とデイゴ騎士を軽々と凌駕し、なおも余裕がある様子だった! 既に巷では極星の勇者の再来などと呼ばれ始めている少年が、2人の姫を引き連れて再びフィールドに上る! チームトーカの登場だ!」
フィールドへの門がスタッフによって開かれ、俺たちはその中へ足を進める。
フィールドに入ると、聞こえていた歓声は一回り大きなものとなり、体を打ち付けた。今まではフィーナやリリウムに向けられていた歓声も、今は俺に注がれていると思うと、それだけで今までより重圧が増した気がする。
「大人気ですね」
「極星の再来らしいからな」
「英雄になるつもりはねぇけどな。俺は俺らしく進むだけだ」
歓声に手を振って応えながらフィールドに上る。そして司会が俺達の対戦相手の紹介を始める。
「1本の矢は簡単に折れても、3本の矢なら折れにくい! なら5本なら折られない! 仲間を増やし、仲を深め、絆を旗頭に数々の芸術的な連携技を見せる。その力はカランの騎士を破り、今5属性を使う少年に牙を剥こうとしている! 相手が5属性使うなら、こっちは5人そろえればいいじゃない! その心理を地で行くチーム、西の風の入場だぁぁあああ!」
反対側の門からチーム西の風が入場してきた。冒険者らしくそれぞれの服装、装備はバラバラだが、5人とも歩くスピードがぴったりだ。てか、足の出すタイミングまでぴったり。軍隊の行進なんかで全く同じ形で歩くのは見たことがあるけど、素であそこまで息があってる連中を俺は見たことが無い。
「スゲーな」
「ちょっとカッコいいですね」
「あれは仲がいいというレベルではない気がするが……」
素直に関心する俺とフィーナに、リリウムが疑問を呈する。確かに歩くスピードが同じになるとか、ちょっと想像を超えてるけど、あり得ない話じゃないんじゃない?
「どうも感情が納得しない」
「孤高姫とは全く逆の存在だからな」
「その名前は出さないでくれ!」
うん、これは良い弄りネタを手に入れた気がする。
そんなことをしているうちに西の風のメンバーがフィールドに上って来た。
「初めまして。西の風リーダーのマルスだ」
俺に向けて手を出してきたのは真ん中にいた大柄の男。革製の装備なのか、全体に軽そうで、ところどころ露出もしてるとこから、盗賊に見えてしょうがない。
「おう、チームトーカリーダーの漆トーカだ」
「昨日の試合は見せてもらった。1人であの2人を平然と倒してしまった実力は驚愕に値する」
「そりゃどうも」
「しかし――」
そう言ってマルスは一端言葉を区切る。
「1人で出来ることには限界がある。今日はそれを教えてあげよう」
「負けるつもりは無いってことか。良いぜ、俺も全力で相手してやるよ。もちろん3人でな」
なんか相手チーム対俺みたいな感じになりそうだったから釘を刺しておく。そもそもフィーナの訓練の為に参加してる闘技大会なんだから、フィーナに戦ってもらわないと意味ないし。
勝ち残るのは、フィーナの試合経験数を増やすためだけだしな。
「それでは両者フィールドの端へ」
審判がフィールドに上がり、指示を出す。俺たちはそれにしたがって両端に分かれた。
「それでは闘技大会団体戦。第2回戦第2試合――始め!」
審判の声と共に、西の風チームが走り出す。俺達もそれに合わせて走りだし、フィールドの中央付近でぶつかるように思えた。
しかし、西の風は3人が中央から少し離れた場所で足を止めた。
「魔法が来るぞ!」
「分かってる」
「私がカバーします。星に願いを。閉ざせ氷結の世界。アイスワールド!」
フィーナのアイスワールドが発動すると同時に、俺はスパイクを作り出す魔法を、リリウムは風を足に纏わせる魔法を使用し、滑るのを防ぐ。
西の風はアイスワールドに対して走り寄って来た1人が足を止め対処するための魔法を唱えるようだ。
そこでフィーナの前に詠唱を完了していた3人の魔法が俺達に向かって飛んでくる。
それぞれ火、水、雷の矢だ。それは全てフィーナのアイスワールドによって凍らされた。
「星に願うは、大地の胎動。アースクウェイク」
足を止めた1人の詠唱が完成し、地面の揺らす。それはフィーナのアイスワールドで凍った地面を全て破壊した。
そして問題のなくなったフィールドで、1人リリウムに向けて駆け寄るマルス。
俺はアイコンタクトでリリウムにマルスを任せ、後ろの3人を相手にすることにする。そうしないと、いつまでも後方から魔法が飛んできそうでウザったいのだ。
中盤で1人足を止めたやつの横を一息に走り抜け、3人をサイディッシュで横なぎにしようと、鎌を振るう。
「星に願いて、火の鎖を結ぶ。ファイアチェーン」
「星に願いて、水の鎖を結ぶ。アクアチェーン」
「お?」
また3人掛かりで俺を止めに来ると思ったら、今度はその中の2人が俺の攻撃を防ぐべく魔法を放ってきた。どちらも同じチェーン系の魔法で、俺のサイディッシュに絡みついてくる。
俺はその鎖ごと強引に振り抜く。
しかし、少しだけずらされた軌道は、3人を攻撃から守る。その間に残った1人が動いた。
今度こそ攻撃が来るかと身構える。こいつの属性は雷だったはずだ。フェイリスほどじゃないにしろ、まともに受ければ痺れさせられる。
どう躱すか考えていたら、雷の奴が魔法を放つ。それは雷の矢だ。しかしそれは俺とは全く別の方向へ飛んで行った。その先は――
「リリウム! 魔法が行ったぞ!」
その先にはマルスと切り結ぶリリウムの姿があった。
フィーナが止めれるかと見るが、フィーナはさっき俺がスルーした土属性の相手と相対していて対処できない。
リリウムは俺の声で雷の矢に気付き、とっさに躱す。しかし、その隙にマルスに攻め込まれて情勢がいきなり劣勢に傾いた。
「くそっ!」
リリウムがやられてしまうと、次に潰されるのはフィーナだろう。数人でこのレベルの相手だと、フィーナではまだ対処ができない。とにかく先に目の前の連中を潰して1対1に持って行った方が良いと判断した。
強引に魔法の鎖を引きちぎり、再びサイディッシュを振り抜こうとする。
「トーカ! 風が行くぞ!」
「マジか!?」
振り返れば、マルスが俺に向けて魔法を放っている。リリウムはバランスを崩した状態から立て直すのにいっぱいで、魔法にまで対処できなかったのだろう。しかし、それなら俺じゃなくリリウムを狙えばいいはずなのに、なんで俺を狙った?
案の定、リリウムの注意を受けた俺は、マルスの魔法を横っ飛びで躱す。
そしてマルスが魔法を放っている間に、リリウムが完全に体勢を立て直した――かに思われた時、再びリリウムに魔法が飛んでくる。
それを喚起したのはフィーナだった。
「リリウムさん、氷の矢です!」
「次はそっちか!」
それを躱している間に、再びリリウムはマルスに攻め込まれる。そして今度はフィーナが有利になると思った。しかし、それは水の矢が飛来したことで、水泡に帰した。
俺達は、完全に西の風の術中にはまっていたのだ。
誰かが魔法を使って、視界の外から攻撃を加えてくる。その魔法を放っている間に、攻撃を加えようにも、そこにもさらに別の場所から攻撃が飛んでくる。
三角を描くように作られた陣形の中で、相手は自分たちの隙をことごとく仲間の攻撃で潰していた。
しかも仲間どうしの合図のようなものが全く見えない。無言で突然魔法を飛ばして、それを知っていたかのように、絶妙なタイミングで他の場所に魔法を飛ばすのだ。
そのせいで、フィーナもリリウムも自分の体勢を整える暇が無く、防戦一方になっている。
これがチーム戦ってことかよ。
このままじゃ俺以外は確実につぶされる。1回強引にでもリセットした方が良いな。
考えをまとめ、俺はフィーナとリリウムに声を上げた。
「2人とも、行くぞ!」
「あ、はい」「分かった」
俺の合図で2人が相手から距離を取る。それと同時に相手も同じ行動をとってきた。昨日の試合を見てたんなら当然だろう。けど、今日のはちと威力が違う!
「うらっ!!」
サイディッシュを振り抜くと、俺のいたフィールドブロックがバリバリと音を上げて削れる。さらに、衝撃波は昨日のに比べて格段に威力が上がっている。
昨日の威力なら、近くにいても踏ん張れば耐えられただろう。しかし、今日の威力は昨日の優に2倍はある。
その威力に驚いたのは、敵だけでは無かった。
「え!? きゃっ!」
「これは! くっ……」
フィーナもリリウムもその衝撃波に耐えることができず、フィールドを転がった。
そこを俺はフェイリス仕込みの雷化移動で駆け抜け、2人を回収。瞬間でフィールドのスタート位置に移動した。
「ちょっとトーカ! 威力強すぎです!」
「そうだ! さすがにこの威力を使うとは聞いてないぞ」
「仕方がねぇじゃん。仕切り直ししないとじり貧になりそうだったし」
「それはそうだが……」「そうですけども……」
抗議を上げる2人を、反論で黙らせる。
「とにかく今はあいつらの対処考えないとまずいぞ。俺1人で勝っても意味ねぇんだからな」
「……そうだな。彼らの連携は確かに厄介だ」
「それで、どうするんですか?」
「とにかく分断されないようにすることだな」
「そうだな。こちらは1対1のつもりでも、相手からしてみれば5体1と同じ状態になってしまう」
「分かりました」
今までの一番の問題は、こちらの連携ができない個別の状態で、相手が連携してきたと言うことだ。これでは数の有利が圧倒的過ぎて、かなり厳しい戦いになる。
近くにいれば、俺達もある程度は連携が取れるし、5対3の戦いをすることが可能になるはずだ。
体勢を立て直した相手チームは、こちらが何か仕掛けてくるのを待っている様子だ。攻撃を仕掛けてこないのは、個々の実力だけでは有利な状態に立つのが難しいと分かっているからだろう。
相手の攻撃を見てから動いた方が、行動の方針を決めやすいしな。
「うし、仕切り直しだ!」
「はい」「ああ」
そして、俺たちは今度は集まって、相手に向かって突撃を掛けた。
集まっての戦いはより混戦を極めていた。相手が連携を使って来るのは当然として、俺達もなんとか連携と呼べるレベルの物は取れていた。
フィーナが大規模な魔法を放てば、相手は3人掛かりでその魔法を破壊してくる。
その間に、俺とリリウムが魔法を放っている相手に攻撃を加えようとしても、残った2人に足止めをくらい、上手く攻められずにいた。
「あー! イライラする!」
「トーカ、落ち着いてください」
「だって思いっきり振れない!」
そうなのだ。集団で戦っているため、フィーナやリリウムを攻撃に巻き込まないように、俺は力をセーブしながら攻撃を加えなくてはいけなくなっていた。それがもやもやを増大させる。
魔法も小さなものや単体に作用するモノならいいのだが、爆発を伴なう魔法となると、使うことができない。
「なんでお前ら普通に爆発系の魔法使えるんだよ!」
俺がイライラしているのにもかかわらず、相手は平然と爆発魔法や、面で攻撃してくる魔法を平然と使ってくる。仲間を巻き込むのが怖くないのか!
「絆があれば、どんな魔法を使って来るか分かっているからな。当たるはずが無かろう!」
それに答えたマルスが俺に剣を振り下ろす。その横から氷の矢が飛んできた。
俺はその2つを雷化で一気に躱し、マルスの後ろに回る。
「貰った!」
「させない!」
サイディッシュを振り下ろそうとしたタイミングで、今度は火の矢が飛んでくる。
それを躱したせいで、マルスは俺の間合いから離れてしまった。
「これがチーム戦だ」
「ちきしょう!」
決めての攻撃はことごとく潰される。それはフィーナもリリウムも同じなようで、俺同様に少しずつフラストレーションがたまってきてるみたいだ。
ちょっと周りの様子を見ようとしても、どこからか魔法が飛んでくる。本当に鬱陶しくてしょうがない。
てか、なんで俺たちは連携に拘ってるんだろうな。ぶっちゃけ相手が連携してくるからと言って、俺達が連携する必要ないし。
戦いの基本って相手の土俵に合わせるんじゃなくて、自分の土俵に引きずり込むことだろ。
司会の解説や、初手の戦い方でなんか連携しないと負けみたいな方向に誘導されてたけど、別にその必要は無いのだ。勝てばいいとは言わないが、フィーナが勉強できる試合ができればいいんだし。
始まってかれこれ30分。もう十分相手の連携は見たよな。それこそイライラしてくるほど。ならそろそろ俺達の土俵に引きずり込もうじゃないか。
俺がにやにやしていたせいか、警戒を強める敵チーム。そして不思議そうな顔をしたフィーナとリリウムに向けて声を掛ける。
「プランBするぜ」
「何ですかそれ! 聞いたこと無いんですけど!?」
「各個撃破ってことだ」
「いいのか?」
俺の作戦に、リリウムが尋ねる。
その聞き方ってもしかして最初からこの方法を取ればいいって分かっててやってた?
「問題ないだろ。フィーナも嫌ってほど連携は見たよな」
「あ、はい。今日の夢に出そうなほどね」
「なら充分だろ。行くぜ。月示せ大地の迷宮。アースラビリンス!」
俺が使った魔法は、フィーナのアイスラビリンスの土属性版。アイスラビリンスのように幻覚を見せることは出来ないが、その分壁が強固で俺の加護で作ったこの壁は邪神級でもまず破壊できない。全てを土の壁で囲っては観客がつまらないだろうと、天井は開けてある。しかし飛び上がって壁を越えようとすると、その部分の壁だけがそそり立つおまけつきだ。ラビリンスの名に恥じない、脱出不能さを体現している。
「次会うのは勝った時だ」
「はい」「了解した」
地面がせり上がり、フィールドがそのまま迷宮へと姿を変える。その中で、俺達はそれぞれの通路に閉じ込められていった。
1時間後、俺は迷宮を解いた。理由は簡単、迷宮のなかで3人の敵メンバーを倒したからだ。と、言うか傍から見れば完全に狩りになっていたと思う。仲間と合流しようと逃げ回る敵メンバーを背中から蹴り飛ばす姿は、決して戦いには見えなかったはずだ。
そしてさすがに3人減れば、まともな連携は組めなくなるだろう。そう考えて魔法を解除したのだ。
崩れ落ちる壁から見えたのは、戦闘中のリリウムの姿だ。壁を走っていたせいで、壁の崩壊に少し驚いていたが、すぐに体勢を立て直していた。
そしてリリウムの後方には、片膝をついているマルス。剣は手から離れ、崩れた壁に飲み込まれている。ちょうどトドメを刺した直後みたいだな。
「リリウム、決まった?」
「ああ、たった今な。突然足場が崩れて驚いたぞ」
「さすがに壁を走ってるとは思わなかったわ」
「風を使えば可能なことだ。そう言えばフィーナは?」
リリウムが辺りを見回すと、フィーナは片腕を天に突き立てガッツポーズを取っていた。
フィーナも水属性の使い手と相対して、相手の水を全て凍らせ、その上剣を破壊して完全勝利を決めたみたいだ。その証拠に、フィーナの回りには渦を巻くように氷のオブジェが出来ており、その中に折れた剣が飲み込まれていた。
「勝者、チームトーカ!」
リリウムが倒したマルスの様子を見て、審判が判定を言う。
「決まったぁぁあああ! 西の風の得意分野をことごとく潰し、自らの得意分野で徹底的に叩きのめしたチームトーカ! これで決勝に参加する2チームが決まったぞ! まず1チーム目はギンバイ帝国チーム! 終始安定した戦いを見せ、騎士としての実力を存分に振るった勝ちかただ。なかでも個人戦2戦目で奇しくもフェイリスに一太刀を浴びせたディオの活躍は凄まじい! いや、これは恐怖すら感じるレベルの戦いを見せつけてくれている! 決勝も期待していいだろう! そして2チーム目はチームトーカ! 極星の勇者の再来とされるリーダー漆トーカを筆頭に、孤高姫のリリウム、氷結姫のフィーナ。たった3人で巨大な壁を突破してきた実力は、間違いなく一流! 決勝もその力を我々に見せつけてくれることを期待しよう!」
司会が上手く纏めている間に俺たちは控え室に戻る。そして王城へ向かう馬車に乗って、城に帰還した。
戦闘の終盤で、一部おかしなところをご指摘いただきましたので、修正しました。12/22 08:46