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異世界は赤い星と共に  作者: 凜乃 初
ユズリハ王国キクリ編
8/151

7話

 日が明けて翌日。さすがに集中して夜遅くまで魔法の練習をしすぎた。

 ちと寝不足だけど、そろそろ普通に依頼も受けてみたい。この世界の一般的な依頼をいい加減受けないと、基準がフェリールになりそうだしな。

 1階に降りて朝食を貰う。


「なんだ、ずいぶん眠そうだな」

「ああ、昨日少し魔法で遊びすぎた。初めてだったからつい楽しくてな」

「なんだ? 今まで魔法使ったことが無かったのか?」

「そうなんだよ、やっとまとまった時間が取れたからな。ギルドで借りた教習本を読みふけって、ついでに簡単な奴の練習もしてたんだ」

「で、使えるようにはなったのか?」

「実戦でいきなり投入しようとは思わないけどな。とりあえず人の少ないところで練習してからだ」

「んあ? 坊主の加護星はそんなに強いのか?」

「まあな。化け物じみてるぜ」

「ハハハ、そりゃいい。冒険者に強い魔法は心強いからな」


 おっちゃんは俺の言ってることを冗談として受け取ったのか、笑いながら去って行った。

 まあ、信じてもらう必要はないし、いずれ知れることかも知んないけど今は黙ってても良いか。どっちにしろ使えないし。

 朝食を平らげてさっそくギルドへ向かった。


 ギルドに入って初めて掲示板を確認する。フェリールの時は直接受付で聞いちまったからな。掲示板って見たことがなかったんだよな。

 掲示板は巨大で、その一面に紙が貼られている。これが依頼書になり、それをはがして受付に持っていくことで依頼を受理できるようだ。


「何があんのかね」


 とりあえず今の俺のランクであるF-のところから見ていく。

 庭掃除に荷物運びがほとんどだ。

 すこし上がってF+、これぐらいになると薬草の採取とかの依頼がある。あと一つだけ公共事業があった。薪の採取だ。騎士団の宿舎で使う薪を集めているらしい。

 さらに上がってEランク。ここに来ると少し遠出した場所での採取などがあった。森の中に入って探すものもある。

 このあたりになると魔物との戦闘もかんがみているのか、少し報酬が上乗せされ始めている。


「Eまではどれもつまんなそうだな」


 面倒くさくなりDを飛ばしてCを見ることにした。ここに来ると魔物の討伐や素材の採取が多くなってきている。

 さらに公共事業も何個かあった。そこで俺の目に留まったものは、森での伐採作業。

 魔法を使えばかなり効率的になるような気がする。たぶんそのあたりのことも鑑みてCランクの依頼になってんだろうな。

 公共事業系は沢山の人を募集しているようで、内容を受付に言えばいいらしい。


「すんません」

「あら、おはようございますトーカさん」


 今日はサリナさんのところの受付に顔を出してみた。


「依頼受けたいんだけど」

「あら、今度は何等星級の魔物を狩るのかしら?」

「ハハ、違う違う。今回はCランの公共事業頼むわ」

「あら、あの森林伐採?」

「そうそうそれそれ、少し魔法の練習がしたくてな。と、そうだこれ返しとくぜ」


 鞄の中から教習本を取り出し受付におく。


「はい、確かに返してもらったわ。じゃあギルドカードをお願いします。依頼の受理をしますね」

「はいよ」


 依頼の受理を行い、仕事の場所と説明を受ける。


「時間は今からすぐね。町の入口にいる守衛に話しかければ何のことか分かってくれると思うからそこで詳しい場所とかは聞いて。内容は丸太の伐採。今度騎士宿舎を新しく立てるみたいでそのための材料の切りだしね。今日だけだともう10人ぐらいの人が行ってるから場所は分かりやすいはずよ。依頼料は1日の拘束で1万チップね。働きによっては増減もあるそうよ」

「了解、せいぜい減らされないように頑張るさ。じゃ、またな」


 説明を受けて言われた通りに、守衛に話しかける。今回は特に前もって準備しておく物は無かったため手ぶらだ。

 弁当も出してくれるってんだから優しいこって。


「すんません、公共事業の依頼受けてきたんだけど」

「ああ、分かった。これが地図だから目印のある場所まで行ってくれ。途中で魔物にあっても自己責任だから、そのあたりは承知しておいてくれよ」

「問題ないぜ。じゃ行ってくら」

「おう、がんばれよ」


 守衛に地図を貰いその経路に従って進む。場所はどうやら近くにある森の中の一画。なるべく魔物と会わないようにするためか、だいぶ浅い場所を伐採場にしているみたいだな。

 30分ほど歩いて森が見えてきた。時折メキメキと音が聞こえるのは木が伐り倒されているからだろう。

 森に入ってから5分、だんだんと足場が悪くなってきたところで視界が開けた。


「おお、ここが伐採場か!」


 まだ依頼を始めて日が浅いのか、伐採された量はそこまで多くないようだ。全体的に見ても、少し大きな公園程度の大きさしか木が切りだされていない。

 そういえばどれぐらい伐採すればいいのかとか一切聞いていなかったな。魔法で切ってしまうつもりだし、結構なスピードになると思うから予め聞いておかないと後で切りすぎましたなんて言ったら面倒なことになりそうだ。

 とりあえず小さな小屋が立っていたのでそこに行くことにした。

 責任者がいるかもしれないしな。

 俺はまっすぐに小屋へ向かう。その途中に何人か冒険者らしき人と会ったけど、みんな斧を担いでたり、 屈強な肉体を持ってたりとめっちゃ土木工事専門のおっさん達だった。


「すんません、誰かいます?」


 小屋のドアをノックする。返事はすぐに来た。


「はいはい、ちょっと待ってね。今開けるわ」


 中から聞こえてきたのは若い女性の声。丸太伐採にはあまり適さないような人物の気がするが。

 ガチャッとドアが開けられ中の人物が出てくる。

 騎士甲冑を来た10代後半ぐらいの女性だ。


「おや、どちらさんだい?」

「依頼を受けてきたぜ。初めてだからいろいろ聞きたくてな」

「ああ、了解了解。じゃあ中入って簡単な説明しちゃうね」


 中に入ると、そこには所せましと物が置かれていて、足の踏み場の無いと言った状況だ。

 ってかこの人よくこんな中にいたな。狭いし暑いしでかなりつらいぞ。俺でも30分いたらへばりそうだ。


「そこ座って。いま涼しくするから」


 そういうと女性は詠唱を初めた。


「星に望むは清涼なる風、ウィンド」


 女性が唱え終わった瞬間、部屋の空気が一変した。今までの暑苦しい空気から、なんともさわやかな春の草原を思わせる空間に。まあ、部屋のゴタゴタ感は緩和されないけど、さっきよりかはだいぶましになった。


「スゲーな。今の風属性の魔法か?」

「ええ、風でこの部屋の空気を循環させてさわやかにしたの。私だけがいるときは私に魔法かけちゃえばいいんだけど、さすがに人が来るとこの魔法を使うのよ」

「やっぱ魔法って便利なんだな」

「もちろん。それじゃ涼しくなったしさっそく説明しちゃうわね。私はここの現場監督を任せられているエリシア・ファーブル。この国の騎士をやってるわ。まあただの平騎士だけどね」

「冒険者の漆桃花だ。トーカでいいぜ」

「じゃあトーカにはここでやってもらう仕事の説明をするわね。ここでは主に木の伐採と切った木の枝を剪定してもらうわ」

「了解」

「道具とかはこの小屋の裏にあるところから好きに持ってってもらって構わないけど、なるべく壊さないようにね。騎士団の経費で出るけど申請が面倒なの」

「魔法使いたいんだけどいいか?」

「え? トーカも魔法使えるの? それならこっちとしてはありがたいけどどんな魔法?」


 俺は考えていた魔法を1つ説明する。それはリリウムの使っていた風魔法の応用だ。


「風属性の魔法で、ウィンドカッターってやつ。木を切り倒せるぐらいの威力はあるぜ」

「ああ、あれ使えるんだ! なら他の人たち全員剪定にまわしちゃってもいいかもしれないわね。取り合えず威力見てみたいから私も付き添うわ」

「了解」


 俺はエリシアを連れて小屋を出ると、指示された場所へ移動した。そこは他の場所よりも伐採が進んでおらず、多くの冒険者が割り当てられている場所だった。


「みんなちょっと聞いて!」


 エリシアの声に木を切っていた人たちが動きを止める。


「今からここで魔法使うから少し木から離れて! 巻き込まれると危ないわよ!」

「そこの坊主が使うのかい?」

「そうよ! 今日新しく来てくれた子なの!」

「あいよ、ちょっと待ってな。お前ら引くぞ!」


 きっと今エリシアの会話していたのが、ここの冒険者をまとめているような人なのだろう。その人の指示に従ってそそくさと冒険者たちが木から離れてこちらにやってくる。


「じゃあお願いね」

「まかせな」


 俺は冒険者たちと入れ替わるように木に近づく。そして詠唱する。


「星誘いて風刃(ふうじん)を流せ、ウィンドカッター!」


 俺の詠唱は、昨日の「月誘いて」から「星誘いて」に変更していた。理由は簡単で慣れてきたら「月誘いて」でもかなりの威力が出るようになってしまったからだ。月を星と言うワードに変えるだけでかなり威力が落ちる。まあ、それも練習していたら安定はするようになったからこの詠唱をメインに使っていくことにした。

 そして詠唱により発生した風は、いとも簡単に木を切り倒した。それだけにとどまらず、威力の残った風はその背後にある木の幹を半分近くまで切って消滅する。

 その威力を見て、俺も正直引いていた。これ人間にぶつけたら簡単に千切れ飛ぶぞ……てかマジもんの詠唱つかったらどれだけの被害でんだよ……

 周りにいた冒険者もその威力に驚いて言葉を失っている。

 その中で一人、強力な魔法を騎士団の中で見慣れていたエリシアだけが反応した。


「すごいじゃない! 幹を一発で切り倒しちゃうなんて! しかもその後ろにも威力が伝わってるし、これなら仕事がずいぶんはかどるわよ! みんなは剪定の方に移って! 切り倒すのはトーカ君にやってもらっちゃうから!」

「あ、ああ。分かった。お前ら剪定に移るぞ!」


 なんとか我を取り戻したリーダー格の男が全員に声を掛ける。それを皮切りに少しずつ止まった時間が動き出した。

 俺はエリシアに近づき、切り倒す範囲を聞く。


「どの位まで切り倒していいの? とりあえず地図かなんかで示してもらえると助かるんだけど?」

「ああ、ならここに来るときにもらった地図持ってる? そこにまるで書き込んじゃうから」

「これのこと?」


 キクリの門で衛兵にもらった地図を差し出す。エリシアはそこにペンで丸印を書き込んだ。どうやらそこが切っていい範囲らしい。


「この範囲を斬ってもらいたいの。いまだいたいこれの3分の1が終わってるわね。今日は今いるところを重点的に進めちゃって」

「了解」


 地図的にはだいたい目に見える範囲を一回り大きくする感じ。プラス今いる場所は少し遅れているみたいで、上から見るとここだけ少し凹んでいるように見える。その分ここは重点的にってことか。

 ならまず凹んでいる部分を切り倒して綺麗な円形にしてから回るように切り倒していけばいいかね。


「星誘いて風刃を流す、ウィンドカッター!」


 さっきと同じ威力のウィンドカッターで俺はひたすら木を切り倒していった。


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