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異世界は赤い星と共に  作者: 凜乃 初
ユズリハ王国王都編
47/151

46話

王都編長くなりすぎてるので微妙に駆け足です


 大きな扉の前まで案内され俺はそこで待つように言われた。

 この先が謁見の間か。静かな廊下に1人待ってると、転校生が挨拶を待つのはこんな感じなのかと思えてくる。

 まあ、俺の場合は相手がかなり格上になるんだけどな。

 大きく息を吸い込み吐き出す。目を閉じて集中すると、自分の心音さえはっきりと聞こえてくるほどここは静かだ。

 人の気配すらないこの場所で、今からのことをイメージする。

 扉は中にいる兵士が開く。そして開かれたら俺が中に入り、全員が俺の顔を見られる位置まで進む。

 そこで膝をついて頭を下げる。そうすれば王様から声を掛けられるらしい。

 それに対してアクションを取り、会話に入る。


「うし、大丈夫!」


 覚悟を決めた所で扉が開かれた。

 飛び込んでくる光景はまず真っ赤な絨毯。そしてその先にある五段程度の階段とその上にある玉座。そこに座る王様の姿は眩いばかりの宝飾を着飾り、1人で立てないのではと思わせるほどだ。

 そしてその横に座っているのが王妃でありミルファの母であろう。

 そして2人の後ろに立っている人物が3人。1人は第2王女のミルファ。そしてその隣にミルファを成長させたらこうなるだろうと思わせる姿の女性。おそらく彼女が第1王女だろう。

 王族はこの4人。そして最後の1人が甲冑を着た大柄の男。王族のすぐそばで帯剣を許されていると言うことは相当な立場になるはずだ。騎士団長や近衛騎士にあたる人物だろう。

 それを扉が開かれた瞬時に確認し中に踏み込む。

 集まる視線はどれも俺を見定めようとしている。

 ただの冒険者がお礼を言われに来ただけなのに、何をそんなに調べることがあるのかね?

 右側には文官が並んでいるのだろうか、ローブのように丈の長い服を着た小太りや細見の人たちが並んでいる。誰もかれもが不健全そうだ。

 そして左側はうって変わって屈強な体つきをした男たち。帯剣こそしていないものの、立派な甲冑を着ているものもいることから武官が並んでいるのだろう。

 文官たちは俺のことを利用価値がありそうかどうか。騙せそうかで判断してそうだな。武官の方は割と好意的?な目だな。ミルファから戦闘の様子とかを聞いているからかもしれないな。

 ミルファの話を聞いていると、どうも文官や貴族は嫌っていて、騎士などは割と好きなようだし、話をしていてもおかしくは無いか。

 部屋の中央辺りまで来たのでその場で止まる。そして膝をついて頭を下げた。

 頭上から威厳のこもった言葉が投げかけられる。


「面を上げよ」


 王様の言葉通りのアクションを取る。顔を上げ、視線を王様に向けた。

 王様は俺をまっすぐに見つめてくる。


「娘の無理な要望に応え、良く来てくれた」

「ミルファ様に招待されて来ない愚か者などいないでしょう。今日はお招きいただきありがとうございます」

「うむ、ミルは可愛いか……うほん! まずは先日の件。ミルファの暗殺を防いでくれたこと、心より礼を言う」


 今親バカっぽい発言が出かけたな。強引に誤魔化そうとしたみたいだけど普通にほぼ出てたし。

 しかし文官も武官も眉をピクリとも動かさない。ってことは、これは周知の事実ってやつか。まあ、王様でも親は親だしな。

 娘を大切にする親と言うことで、俺の王様に対する好感度が少し上がった。


「当然のことをしたまでの事です」

「だが話を聞く限り、相手は手練れの暗殺者集団、スコーピオンだという報告だ。実際、護衛に付いていた騎士たちも何もできずに殺されてしまっている」


 その言葉に文官たちはどこか勝ち誇ったような表情を作り、武官たちは悔しそうに眉を下げる。


「私も敵が正面から来ていなければ騎士たちと同じ末路をたどっていたかもしれません。今回はたまたま敵が私を侮ってくれたからこそできたことです」

「ふむ、ではそういうことにしておこうかの」


 王様は知っているぞと言う目線を送ってきた。おそらく俺のギルドでの依頼とかは調べてあるんだろうな。

 けどまあ、それをここで引っ張っても仕方がないからさっさと話を次に進めた感じか。


「それでミルファを助けてくれた礼をしなければならない。王族としても1人の親としても言葉だけでは到底返せないものだと思っている。そこでそなたに問う。何を望む?」


「何を望む?」か。ずいぶんな言い方だな。その言い方だと俺が言ったものを必ず準備してくれるみたいな言い方じゃないか。

 てことは、これは俺が試されてるんだろうな。

 王族に対する考え方や、常識なんかは当然として、野心の大きさなんかも図られてる。

 けど王様は1つ重要なことを忘れてるな。

 この問いかけはおそらく、よくされているものなんだろう。だから今回も周りの文官武官たちが焦らず聞いている。

 そしてその問いかけの対象になるのは何等かの功績をあげた文官や武官、貴族になるはずだ。

 この問いを彼らに問うなら効果は抜群だろう。自分の地位や権力、金や道具。王族の近くにいれば必然的に欲しいものは増える。

 けど俺は冒険者だ。

 冒険者が欲しがるものは自由と金とスリル。だからこの問いに対する答えは1つしかない。


「私はお金を望みます」

「ほう、その理由は?」

「私は現在このように怪我をして依頼が受けられない状況にあります」


 そう言って左肘の水ギプスを全員に見せるように前に出す。


「ギプスは来週になれば外せますが、それまでは普通の依頼を受けることも難しいでしょう。ですから当面の生活費を稼ぐ必要がありますのでお金を望みます」

「ふむ、生活費を望むか。ずいぶんと謙虚なのだな。地位や権力すらも私はやると言ったのだぞ?」


 なんで今そんなことを言うんだ? もしかして俺がそれに気づいてない可能性も考えてるのか?


「私は冒険者です。地位よりも自由を、権力よりもスリルを求める生き方をしていますので」


 まあ、権力を持てばそれはそれである意味スリルたっぷりの人生が送れそうだけどな。


「なるほどな。分かった、そなたには褒美として金を渡すことにしよう」

「ありがとうございます」

「ではそろそろ終いにしよう。ミルファを助けてくれたこと礼を言うぞ。ではこれで謁見を終わる!」


 王様が立ち上がり玉座の横にある通路に捌ける。それに続くようにして王妃、第1王女、第2王女、そして騎士と続いた。

 俺は再び兵士に案内され元の部屋に戻る。

 そしてソファーにドカッと腰を下ろし大きく息を吐いた。


「ふぅぅぅぅ……やっぱ敬語は性に合わねぇな」


 王様と話してても、自分の敬語で背中がかゆくて仕方がなかったしな!

 さて、後は礼金貰って帰りますかね。宿のベッドが恋しいぜ。

 メイドにお茶を貰って一息ついていると、扉がノックされた。

 俺が振り返れば、そこには謁見の時に王族の横に立っていた騎士がいた。


「トーカ殿。王が個人的に会いたいとおっしゃっています」

「個人的に?」

「はい、先ほどの謁見では周りが気になり本心で話せなかっただろうとおっしゃられまして、少人数で話さないかと」

「分かった。どこに行けばいい?」

「ご案内します」

「了解」


 2回目の謁見はこうして唐突に始まった。

 案内され部屋に入るとすでに王様はソファーに座りお茶を飲みながら待っていた。

 その横にはもちろん王妃様も座っている。そしてミルファと第1王女も。


「お待たせしました」

「構わんよ。私から誘ったことだからね。ここは王族の関係者以外は勝手に入れない場所だからそこまで肩肘を張らんでもよいよ」

「ありがとうございます」


 すすめられるまま対面のソファーに腰掛け、出されたお茶に口をつける。


「まずは自己紹介からしようか。私は現ユズリハ国国王のライア・ユズリハ・サイハルトだ。こっちは妻のテリア」

「確かトーカ君……だったわよね。娘がお世話になってるわ」


 王様の紹介に合わせて王妃様が軽く会釈する。俺もそれに合わせて頭を下げた。


「次に第1王女のシルファ、そして君も知っている第2王女のミルファだ」

「よろしくお願いしますね」


 第1王女はシルファか。見た目は本当にミルファを大きくした感じだけど、その雰囲気はずいぶんと落ち着いてるな。いかにもお姫様って感じだ。姉妹でここまで性格が正反対になるもんかね?


「よろしくお願いします。冒険者の漆桃花です」


 自己紹介された以上、相手がこっちを知っていても自己紹介しない訳にはいかないからな。


「さて、謁見の間でも言ったがミルを助けてくれて感謝する。君がいなければ今頃ミルも死んでいただろう」


 その言葉には謁見の間での威圧感は感じられない。どこにでもいる普通の親の言葉だった。王様も王様モードと父親モードを使い分けてるのかね? まあ、謁見の間で親バカ出そうになってたし、ミルファほど使い分けられている訳じゃないかもしんないけど。


「そうね。そんなことになったら夫が壊れちゃうし、本当によかったわ」

「お父様はミルファが大好きですものね」


 王様の言葉に反応して王妃と第1王女がくすくすと笑いながら口を開く。

 王様はそれに恥ずかしながらも反論できないようだ。

 やっぱり典型的な親バカみたいだな。


「それよりトーカは本当にお金だけでいいの? お父様なら大抵のものは用意できるのよ?」

「お礼のことですか?」

「当たり前じゃない。普通は家とか土地とかそういうものをお願いするわよ?」

「冒険者ですからね。土地を持っても管理できませんし、家を持っても留守にする日の方が多くなってしまいますから」


 ミルファ相手に敬語だと余計ムズムズする……ヤバ、鳥肌立ってきた。


「トーカ、別に私に敬語で話す必要は無いわよ。ここは邪魔な大臣とか文官とかもいないから」

「お言葉ですが……」


 仮にも王様と王妃様も前だぜ?


「構わんよ。さっきから無理をしておるのは気づいているしの」

「そうね。私たちは色々な人を見てきてるから、それぐらいすぐに分かるわ。いつも通りに話してもらって構わないわよ」


 王様と王妃様の許しが出た。ならいつも通りにやらしてもらいますか。


「了解。ならそのお言葉に甘えるぜ」

「やっぱりそっちのしゃべり方の方がトーカらしいわね。謁見の間で初めて敬語を聞いたときは鳥肌立ったわよ」

「俺も今立ってたよ」


 そう言いながら少し腕をまくる。まだ鳥肌は少しだけ残っていた。


「やっぱりミルに聞いてた通り面白い人ね」


 俺達が話しているのを聞いて口を開いたのは王妃様だった。


「そうですかね?」

「ええ、王族に許可されたからと言って、普通に敬語抜きでしゃべれる人なんてほとんどいないもの。私が知ってるのはそこに立ってるシグルドぐらいね」

「シグルドはシルファの幼馴染だから当然じゃない? あ、シグルドは後ろにいる騎士ね。シグルド・カートライスよ」


 王妃の発言にミルファがあきれたように付け足す。

 あの騎士はシグルドって言うのか。なるほど、幼馴染だから近衛で帯剣も許されてるって感じか。けど、それだけじゃ近衛なんて勤まらないだろうし、実力もあるんだろうな。


「つまり実質的に私たちに敬語抜きで話せるのは、他の国の王族かトーカだけになるってこと。分かった?」

「理解した」

「まあ、私たちとしては親しくしてくれる人が増えるのは嬉しい事なんだけどね」

「そうね、王族だからって普通に接してもらえないとさすがに寂しいもの」

「だから姉さまは普通に接してくれるシグルドに惚れたわけね」


 ミルファの言葉にシルファが顔を真っ赤に染める。

 へー、シグルドとシルファって恋人なんだ。しかも親の前で話すってことは普通に親公認か。親バカが認めてるってのは凄いな。

 普通は「娘が欲しければ私を倒してからにしてみろ!」とか「娘をどこの馬の骨とも分からんやからにはやれん!」とか言って反対しそうだけどな。

 あ、でもどこの馬の骨かは幼馴染だしはっきりしてるのか。苗字があるってことはシグルドも貴族の出身ってことだろうし。


「もう……私のことは良いでしょ。それよりそんなこと言ったらミルファもトーカさんに惚れちゃってるんじゃないの?」

「なに? 俺にぞっこん?」

「そんな訳無いでしょうが! 私がトーカに興味を持ったのはトーカの強さとよく分からない知識よ」

「あら、知識は初耳ね」


 シルファが首を傾げた。


「ちょうどいいわ。クーラにセリースを持ってきてもらいましょう。あれをお父様たちにも飲んでもらいたいわ」

「セリースって言うとミルファが植物学者集めて何か研究してたわね。何か成果が出たのかしら?」

「ええ、お母様。新しい甘味を見つけてきましたわ!」

「あら! それは本当?」

「ええ、砂糖とは違った甘味ですけど、十分美味しかったの!」

「ならさっそく持ってこさせないとね!」


 新しい甘味と聞いて王妃とシルファの目が輝いた。やっぱり女性は甘い物が好きだね。

 主に女性陣と会話をしながら待っていると、クーラが全員分のカップを持って部屋に入ってきた。

 シグルドがそれを受け取り手分けして俺達の前に置く。


「さあ飲んでみて! 今までのセリースとは別物よ」

「いただきますね」「飲ませてもらおう」「いただきます」


 王族の面々が口に付けるのに合わせて俺も一口。俺はさっき飲んだから知ってるが、この味は他の面々には衝撃的だったようだ。

王妃とシルファは目を丸くしてセリースを見つめ、王様は一気に飲み干した。

 シグルドも同じようにセリースの味に驚いている。


「これは凄い円やかさね」

「甘いけど甘すぎない。すごく絶妙な甘さね。飲んでいてくどくならないなんて」

「これが新しい甘味の力か? これほどの物はそうそう見つからないと思うのだが、いったい何を使ったのだ?」


 王様がミルファに尋ねる。ミルファはそれに丁寧に答えて行った。


「使ったのは木の樹液よ。花の蜜が甘いように木の中にある樹液も甘かったの。けどそれじゃ薄い甘さだからじっくりと煮詰めて甘さを上げて行ったわ。植物学者を呼んだのは、どの木がよく樹液を出すのかと、その甘さの特徴を知りたかったからね。木によって甘さが全然違って、渋みがあったり苦味があったりするのもあったから」

「樹液……この円やかな甘さがそんな身近なものから!」

「やっと甘味にするのに最適な木を見つけたから、それで作ったの。評判的には完成みたいね!」


 まあ完成だろうな。原液を飲んだ訳じゃないから現代のシロップとどれぐらい同じなのかは分かんねぇけど、ずいぶん近い存在にはなってると思うし。

 後はこれを何に使ってくかだろうけど、まあそれはみなさんに任せましょうかね。俺は別に料理人じゃないし。

 新型セリーヌの試飲会はこうして大好評のまま幕を閉じる。と、言っても今は謁見中俺の謁見は続くわけだ。


「つまりこの樹液のことを最初に言ったのがトーカなのよ」


 正確にはミルファのお気に入りのお店のセリースが、樹液を使ってるって最初に気付いたのが俺なだけだけどな。


「田舎育ちだから気付けただけさ。そんなスゲーことでもねぇよ」

「ってトーカは言ってるけど、これは結構重要な事よ。新しい甘味、それもここまで美味しい物だったら発明した人は確実に製法を秘匿して暴利を貪るわ。確実に砂糖以上の値段設定をして売り出される筈だもの。樹液から取った甘味が砂糖以上になるほどコストがかかるものじゃないのは、実際作った私とクーラが知ってるわ。つまりトーカのおかげで民に最初から適正価格で販売できるようになったってこと」


 ん? メープルシロップってそんなにコストよかったか? 現代じゃ砂糖よりはるかに高いし、そんなに安いもんでも無かったはずだけど。

 まあ、こっちの世界での作り方だとそうなったりするのかね?


「なるほどね。つまりトーカ君は民の生活をさりげなく守ってくれたんだ。これは感謝しないとね」

「どっちかって言うと、私たちにこの甘味を教えてくれたことに感謝しないとね」


 王妃とシルファが俺を尊敬のまなざしで見つめてくる。

 やめてくれ! そんな目で俺を見ないで! ちょっと樹液のヒント出しただけでそこまで尊敬されるようなことしてないから、なんか騙した気になってくる!

 それに第1発見者なら喫茶店の料理人だろ! そいつのことも忘れないであげて!

 内心の動揺を必死に抑えながら言葉を紡ぐ。


「これを完成させたのはミルファだぜ。感謝するならそっちだろ?」

「ヒントをくれたのはトーカよ。手がかりすらない状態なら何もできなかったもの」


 お互いに謙遜しあい譲り合っていると、王様があきれたように笑いながら口を開いた。


「お互い引かないようだしそろそろ話を進めて良いかな?」

「おっと、そうだな」

「そうね。でもきっちりお礼はもらってもらうわよ!」

「そうだね。お礼のお金を少し増やさせてもらうよ。これは王家からの謝礼だ」

「そう言われると受け取るしかないな」


 両手を上げ降参のポーズを取る。


「話を戻せばトーカ君は力も知識もあるって言うのね。冒険者にしておくにはもったいない気がするわ」

「そうだね。よければ我が国の騎士にならないか? 君ならかなりいい地位まで行けると思うんだが、シグルドはどう思う?」

「礼儀などは別として、力だけならば騎士団長クラスにはなると思われます。先ほど少し拝見したトーカ殿の武器は、並の兵士ではまともに振るうことも出来ないでしょう」

「ほう、シグルドにそこまで言わせるとは、かなり強いのだろうな」

「実力は実際動きを見てみなければ分かりませんが」


 シグルドの話を興味深そうに聞く王族の皆さんに、ちょっと待ってとミルファが声を上げる。


「トーカって魔法使いでしょ? 武器もそんなに上手く使えるの?」

「行けるぜ。まあ、剣術って意味なら無理だけどな。力と速さで押すなら十分出来る」


 剣術なんて習ったことないからな。俺の出来ることと言えば、体のスペックに任せて速攻で懐に入りこんで、持ち前のバカ力で剣を振るうことぐらいしか出来ねぇしな。

 フェイントとか入れられたら並の兵士にも、正直魔法使わないと勝てる気がしねぇ。


「それでどうだろう? 騎士になるつもりは無いか?」

「誘いは嬉しいけど無いな。俺は冒険者だ。色々な国を旅してまわるのが性に合ってる」

「そうか、残念だが仕方がない事なのかもしれないな」


 その表情はそこまで残念そうではない。まあ、俺が冒険者だし、元々そこまで期待してはいなかった感じかな。

 とりとめのない話をしばらく続けていると、扉がノックされた。


「そろそろ次の公務のお時間です」

「おっと、もうそんな時間か」


 外からの声で王様が驚いて部屋の時計を確認する。

 すでに謁見は昼過ぎから行われ、今は3時過ぎ。結構話し込んでしまったことになる。


「なら俺はそろそろ帰るよ。準備もあるからな」

「例の祭り?」

「そう、フィーナも参加だからな。しっかり準備しとかねぇと」

「そうなの。分かったわ、兵士に宿まで送らせましょう」

「いや、城門まででいいや。帰りに飯買って帰るし」

「そうか。では兵に案内させよう」


 王様のその声で謁見は終了した。


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