43話
療養日も4日目。俺は自分の部屋でリリウムと向き合っていた。
リリウムが来たのは昼過ぎ。俺がちょうど極星の勇者を読み終わった時だった。
「なんか久しぶりの気がするな」
「そうだな。実際はあまり経っていないが」
「2週間ぐらい?」
「そのぐらいか」
リリウムの言葉数が明らかに少ない。いつも確かに男っぽいしゃべり方をしているが、決して口数が少ない方ではなかったはずだ。
ならなんか言いにくい事でも言いに来たのかね? 少し前に来てたって話だし、その時の話か?
「そういやあ、俺が出かけてる間に来たんだってな。悪いなすれ違いになっちまって」
「いや、あれはあれでいい出会いができたと思っている。フィーナやミリー、クーラと仲良くもなれたと思うからな」
「それならよかった。今日来たのもその時の用事?」
「ああ、状況が少し変わったんだが、内容はあまり変わらないな。折り入って頼みがある」
「リリウムが俺に頼みか。色々助けてもらってんだ。もちろん協力するぜ」
俺がリリウムの内容も聞かずに協力を申し出ると、リリウムは真剣な表情になって俺の協力に異議を唱えた。
「今回は、事が事だけに簡単に選ばないで欲しい。内容を聞いた上で、しっかりと判断してほしいんだ」
「……ん、分かった」
リリウムの真剣な目線を受け、俺も真面目に聞く姿勢を取る。
リリウムがこれだけ真剣になるってことは相当なことだな。けど、そんな相当なことで俺に頼めるようなことなんてあるのかね? あるとしたら――物理的排除?
「トーカには、私が見合い絡みで実家に戻ってきていることは話してあったな」
「ああ、聞いてる」
「その話が私が帰ってきてた時にはすでに進められていてな。すでに婚約寸前まで状況が追い込まれていた。――」
リリウムは王都に戻ってきてからの自分の状況を説明していった。
「そして一昨日。やっと兄と連絡が取れて行動の方針が決まったんだ」
「俺が協力するのはその行動絡み?」
「そうだ。私はこの婚約から逃げることにする」
「大丈夫なのか?」
「問題ない。兄様がそのように手を廻していてくれた。兄様も兄様でこの騒動を利用して色々やるつもりらしいからな。私としては派手に行動を起こそうと思っている。兄の手紙にも逃げるなら出来るだけ派手に、注目を集めるようにしろと書いてあった」
「なるほど。派手なら俺の得意分野だな!」
「残念だが、今回トーカに動いてもらいたいのは裏方だよ」
リリウムが苦笑しながら言葉を続ける。
なんだ、俺は裏方か。何なら王城の先端とかぶっ壊そうかと思ってたのに……
「私は現在ある程度自由に動けはするが、逃げる準備となるといろいろと必要なものが出て来る。しかしそれを私や私に近い使用人が集めたのでは家族に知られる可能性があるんだ」
「つまり俺は、その逃げる準備をしておけばいい訳だな」
「そうだ。それと逃げる際は一緒に逃げることになると思う。逃げ切るためには馬車が必要になるだろうし、私が行くまで馬車を止めておいてもらわないといけなくなるからな」
「なるほどね。そうなると俺がその祭りに参加するにはもう1人許可を貰わないといけない奴がいるな」
「ん?……今回のことはなるべく少人数で進めたいんだが」
リリウムは難色を示す。
けど確か、フィーナとはつい最近一緒にお茶したって言ってたよな。なら大丈夫だろう。
「大丈夫だ。リリウムも知っている奴だよ」
「ん? そうなのか?」
「俺の親友のフィーナだ。最近知り合ったんだろ?」
俺はフィーナが冒険者になることと、俺と行動を共にすることをリリウムに説明する。
「そういうことなら問題ないか」
「だからフィーナの答えしだいだな。まあたぶん大丈夫だとは思うけど」
フィーナが嫌というとは思えないしな。フィーナなら、詳細を聞けばむしろ望んで参加しそうな気がする。「望まぬ婚約なんてひどいです!」とか言いながらさ。
「ならば答えは、また今度聞こう。計画は早くても2週間後になる予定だから1週間前ぐらいには返事を聞いておきたい」
ならミリーの呼び出しには影響なさそうだな。呼び出し前に決行とかじゃなくてよかったわ。さすがに王族からの召集を無視したら大変なことになるだろうしね。この世界全体で生きにくくなるのはごめんだ。
「了解。今から7日間以内な。連絡はどうすればいい?」
「家にハクと言うメイドがいる。ハクに伝言を伝えてくれれば問題ない。私のうちに来てもおそらく私には会えないだろうからな。一応直接話せるようにはしておくが、何かを疑われる可能性もあるから用心はしといてくれ。家族の手紙のような物をカモフラージュしておくと良いかもしれない」
「了解」
「では私はそろそろ戻る。あまり長居しても怪しまれるからな」
リリウムが部屋の出口へ向かう。俺はその背中に声を掛けた。
「全力でサポートしてやるから頑張れよ」
「当然だ」
翌日。俺はフィーナの家に来た。もちろんリリウムの計画に参加するかどうかを聞くためだ。
玄関でノックすると、爺さんが出てきた。
「こんちわ」
「やあ、トーカ君か」
「フィーナいる?」
「ああ、部屋にいるよ。入ってくれ」
「おじゃまするぜ」
爺さんに案内されてリビングで待つ。その間に爺さんがフィーナを呼びにいって来てくれている。
俺はその間にどう話すかまとめておくことにした。
今回の話はリリウムもなるべく少人数で行動したいって言ってたし、爺さんにも言わない方がいいんだろうけど、フィーナが関わる以上は話しとかないと不味いよな。まあ、フィーナのカバーは俺がするから怪我するとかは無いだろうけど、それでも家族としては心配しない訳がないからな。
なら話すのは2人の前でか。なんか一昨日と同じ形になるな。まあ今回は俺が頼む方だけど。
しばらくするとフィーナが来た。部屋着にしてはやけにおしゃれなワンピースだ。女子って部屋にいるときもおしゃれは欠かさないのかね?
「お待たせしちゃいました?」
「いや、色々考えを整理してたからな。ちょうどよかった」
「そうでしたか。それで私にご用ってなんですか?」
「王都を出発することでちょっと問題抱えそうでさ。とりあえずフィーナに許可取ろうと思って。ついでに爺さんにも話しとかないといけないだろうから来た訳」
「問題ですか?」
「詳しくは今から話すさ。爺さんにも聞いといてもらいたいから立ち合い良いか?」
「構わんよ」
3人で一昨日と同じ場所に座り、俺はリリウムの事情を説明していった。
「私は賛成です。好きでもない人と結婚なんて、貴族でも嫌に決まっています!」
フィーナは少し感情的になりながらも予想通りリリウムの計画に賛同した。
しかし爺さんはやはり少し考え込む。まあ、俺といると危険が近いって言うのは一昨日の時点で言ってあるけど、王都の出発からそうなるとかはさすがに予想できないだろうからな。俺もこんな形で出発することになるとはさすがに思わなかったし。
「トーカ君がフィーナを守ってくれるんだね」
「ああ、俺は自分から参加するから自己責任だけど、フィーナは巻き込む形になっちまうからな。そこは俺が責任もってしっかりガードするぜ」
まあ、1等星の加護持ってるフィーナにガードが必要なのかは疑問が残るけどな。けど戦闘をしたことが無いなら、初めての状態は緊張するもんだ。その緊張がどう影響するかわかんねぇし、安全対策はしっかり取っとかないとな。
「分かった。参加すると決めたのはフィーナだ。だから私は反対しないよ」
「おじい様ありがとうございます!」
爺さんの許可を貰い、俺たちはリリウムの計画に参加することになった。
それに伴いフィーナの冒険者としての準備を少し急がなければならなくなる。
フィーナは、移動のための馬車や馬は持っていても、冒険者として必要な装備は持っていない。だからそれを買い集めるのだ。
俺とフィーナは午後からさっそく買い出しに出かけることにした。
フィーナと共に武器屋に向かう。基本的な旅の装備はフィーナはすでに持っている。必要になるのは冒険者としての装備。つまり武器だ。
「フィーナはやっぱ星の加護をメインに使うよな?」
「はい。武器の使い方はほとんど知りませんし、素人がいきなり武器を使うのは無理がありますから」
「だよな。じゃあ色々便利なナイフと敵に近づかれた時用に細身の剣でも持っとけばいいかな?」
「それが良いと思います。ところで今は、どの武器屋さんに向かっているんですか? 私の知っている武器屋さんはとっくに通り過ぎてしまいましたが……」
フィーナが言っているのは普通の武器屋のことだな。表見ただけだと割と冒険者っぽい客も入ってて割と盛況といった感じの店だったな。けどああいう店って量販店っぽいとこある気がするし、初心者には安い剣勧めて終わりそうなんだよな。
けど、冒険者として命預ける剣になる訳だから、ちゃんと自分に合った剣を選ばせるべきだと俺は思うわけだ。
そんで、そういう時に1番良いのがマイナーな店。しかも店員が趣味でやってるような店だと尚よしってことで、やっぱバスカールだろ!
「俺の贔屓にしてる店かな? こいつを作った奴の店だよ。あそこならフィーナに合った武器を探すか作るかしてくれる」
「そういうことですか。でもそういう武器って高いんじゃ?」
「自分の命預ける武器だからな。少し高くてもちゃんと自分に合った奴を買った方が良いんじゃね? 武器が合わなかったは、魔物や盗賊に負ける言い訳にはできねぇからな」
「なるほど。実際に冒険者をやってる人の意見は重みが違いますね」
フィーナは俺の後ろに続きながらフンフンと頷く。けど――
「俺もまだ期間的には新人だけどな」
バスカールの店に着く。相も変わらず人はいなかった。
本当に大丈夫かね? この店。
「バスカール生きてるか!」
「ん? ああ、トーカか。なんか久しぶり」
店の中に入るとバスカールがカウンターに突っ伏していた。俺の声に反応し顔を上げたバスカールの口元には一筋にきらめく涎の跡。こいつ寝てたな……
「久しぶり。今日は新しい客紹介しに来たぜ」
「え!? 本当!?」
「おう、今度新人の冒険者になるフィーナだ」
俺がフィーナの背中を押して前に出す。
「は、初めまして。よろしくお願いします!」
フィーナは緊張した面持ちで頭を下げる。いつも商人としていろんな人と関わっている割には緊張してんな。
どういうことだ?
「初めまして。武器屋のバスカールだよ。結構趣味に走った武器も作ってるけど、普通の物も置いてあるから安心してね」
「あ、はい」
「普通のって壁に掛けてあるやつ?」
待っている間とかに見ていたが、確かに普通の剣や槍だった。異常なものと言えば、俺のサイディッシュぐらいなもんだ。
「異常な物はさすがに店に置けないからね。よっぽどこの人に合ってるって思わなきゃ、引っ張り出しては来ないよ。その分トーカは一目見た時にピンと来たけどね」
「勘は完璧だな。俺もある意味運命の出会いだったしな!」
たまたま入った店で趣味全開の武器を紹介してもらえることなど、珍しいなどと言うレベルではない。
奇跡に等しいレベルの出会いだったのは間違いないのだ。まあ、その後にカラリスと言うもう1人の奇跡に遭遇しているが。
「じゃあフィーナさんの武器を選んで行こうか。とりあえず戦闘スタイル教えてもらえる? まだ戦ったことが無いんだったら何をする予定とかでも大丈夫だけど」
「あ、えっと、私は氷属性の魔法を主に使います。武器はナイフぐらいしか使ったことが無いので、ほとんど使えません……」
「なるほど。ちょっと腕まくってもらっていい? 利き腕の方だけど」
「はい」
フィーナが右腕の袖をまくる。細く白い肌理の細かな肌が現れた。
バスカールは一言声を掛けてから腕を触る。前腕から肘、上腕へと何かを確認するように時折指に力を入れながら見ていく。
フィーナはがちがちに緊張しながらその作業を見ていた。
そしてバスカールが手を離すとすぐに袖を下す。
「ありがとう。だいたいの筋肉量は分かったから振れる限界も分かったよ。フィーナさんは確かに筋力が少ないね。普通の剣を持っても振らされるだけになっちゃいそうだ」
「まあ、そうだろうね」
いくら商人をしているからと言っても、魔法をメインに使っていたのでは筋力が付くはずも無い。それに剣を振るうには普通に生活しているのとは別の筋肉を使うし、全身を使う。だから剣を使う人は、日頃から剣を振らなくてはならないのだ。
フィーナが使えないのはむしろ当たり前なのである。
「とりあえずナイフは使えるみたいだから便利なの1本は確定だよね。あとはメインの武器だけど、たぶん細剣に魔法回路を仕込むのが1番だと思うな。フィーナさんは属性魔法を使えるみたいだし、魔力量も結構あるんじゃないの?」
「そうなのか?」
フィーナの魔力量とか知らないんだけど。てか、俺自体の魔力量も知らないし。量を測定できる道具でもあるのかね?
まあ俺が使ったらそれだけで騒ぎが起きそうだから、あんま使いたくはないけどな。
「そうですね。等星が上がるごとに使う魔力量も必然的に増えますから、加護者も必然的に魔力量は増えます。昔調べた時、私は1200でした」
「1200か、結構あるね。なら魔法回路を仕込んでも問題ないと思うよ?」
「そうしてみるか?」
「そうですね。私は初心者ですからアドバイスには素直に従いたいと思います。どっちにしろ普通の剣だと私じゃ武器になりませんから」
「ならカラリスだな。この後行くか。俺もそろそろ鎌ができてるだろうし」
3日ぐらいで完成するって言ってたしな。そろそろ完成しててもおかしくない。それに何か足りないものがあれば俺が取りにいかにゃならん可能性もあるからな。
「分かりました」
「なら僕も一緒に行っていいかな? カラリスさんってずっと気になってたんだよね。なかなか行く機会が無くて会えなかったけど」
「お、マジか」
とうとうバスカールとカラリスを会わせる時が来たのか。さてさて、どんな化学反応を起こすか楽しみだが、ちょっと怖い所もあんだけど。
「じゃあ、細剣選ぶからフィーナさんは僕が選んだ中からしっくりくるものを選んでよ」
「分かりました。よろしくお願いします」
フィーナが頭を下げ、バスカールが立てかけてある細剣を物色し始める。フィーナの体格と筋力に合った細剣を何本も見繕っているのだ。
俺はその間に少し気になったことをフィーナに聞いた。
「フィーナ。なんでそんなに緊張してんだ? 商人やってたんなら人との会話なんて平気じゃないの? 買い物とか凄い勢いで交渉してたじゃん」
「う……それは父の姿を見て勉強してたからです。食料品を主に扱ってきましたから、武器屋さんに入るのは今日が初めてなんです。どんな人が出てきても、初めては緊張しちゃうものですよ」
「要は慣れか」
「そうですね。でも優しそうな人で少し安心しました」
「だな。まあ、武器屋の店主であいつほど穏やかな奴は珍しいぜ。キクリで行った武器屋の店主はものすごい無愛想だったからな」
俺をチラッと見てそれ以降、見向きもしなかったキクリの武器屋のおやじを思い出す。
あれぞ職人って感じだったけど、やっぱ店としては間違ってるよな。まあ、だから店員を別に雇ってたんだろうけど。
「そうなんですか。よかったです」
しばらくしてバスカールが戻ってきた。手には数本の細剣が指ごとに掛けられている。
それをテーブルの上に並べ、1本ずつフィーナに説明を始めた。
フィーナが説明を聞き、店の中で型を教えてもらいながら素振りをする。
俺はその間特にやることも無く、バスカールの持ってきた別の細剣を手に取る。
幅は2.5センチほどで他の細剣と同じような幅だ。長さは他のと違い1.5メートルほどとかなり長めだ。
こりゃフィーナだとギリギリ振ることが出来る程度だな。
突きの構えを取りながらそんなことを思う。先までの長さが長ければ長いほど筋力は必要になる。梃の原理と同じだ。
フィーナにはむしろ、1メートルぐらいのやつでもいいかも知れないな。
「これが一番しっくりきますね。手にもなじみます」
「やっぱりそれになるか」
思っているそばからフィーナは短めの細剣を選んだ。柄には曲線をあしらった装飾が施されており、それが鍔として手を守るようになっている。長さはやはり1メートルほどだ。そして他のより少し横幅が広い。3センチぐらいだろうか。
「決まった?」
「はい、これにします。後はナイフですね」
「そうだね。細剣はナイフと併用して2刀で使う時が多いから、ナイフも戦闘に耐えられるように硬めの物を用意するよ」
「お願いします」
バスカールが用意したナイフは、根本の部分が太く、先になるほど細くなっているナイフだった。ナイフと言うより短剣と言った方が良いかもしれない。
バスカールによれば、そのナイフで剣を塞ぎ、細剣を使って敵に攻撃するのが細剣の戦い方らしい。そのため相手の攻撃を受けられるように、ナイフは頑丈に、かつ鍔が広めになっている。
「全部でおいくらでしょう?」
「細剣は40万で短剣は20万だね」
「分かりました」
「フィーナ金あるの?」
俺が払うつもりだったのだが、口ぶりからすると普通にフィーナは金を持っているようだ。
「はい、おじい様が父の遺産と今まで溜めていた貯金をくれました。私の将来のために溜めていたそうなので、ありがたく使わせていただこうと思います」
「そうだったんだ」
「持ってくるのは3日後までにね。うちはよっぽどの事情が無い限りは3日以内って決めてるから」
「わかりました。明日にでもお持ちします」
「待ってるよ。じゃあ、剣も決まったことだしカラリスさんの所に行こうか!」
「結構楽しみだったんだな」
ニコニコとしながら店の戸締りを始めるバスカールに、苦笑しながらフィーナと店を出た。
3人でカラリスの店へ向かう。フィーナは慣れない剣の重さに少しフラフラとしている。
こりゃ来週までに体力作りしないといけねぇな。剣の扱いも練習しないといけないし大変だな。てか、剣の練習はどうするんだ? 誰か教えてもらえるあてでもあるのかね? 爺さんが昔冒険者だったらしいから教えてもらえるのか?
「フィーナ」
「はい?」
「剣の練習ってどうするんだ? 爺さんに教えてもらうのか?」
「おじい様は斧を使っていたそうなので剣の使い方は知らないと思います。とりあえず図書館で使い方は調べようと思いますが……」
「なら僕が教えようか?」
「バスカールが?」
確かに鍛冶屋なら武器の扱い方は一通り知ってるか。しかし実践の戦い方まで教えれるレベルなのか?
「僕の実力を疑ってる?」
俺の疑問を感じ取ったバスカールが俺に視線を向ける。俺はそれを正面から受け止め答えた。
「もちろん!」
「断言するのか……」
「だってバスカール鍛冶屋だろ? 普通はそんな戦闘に使えるほどの剣術が使えるとは思わねぇって」
「まあそうなんだろうけどね。けどトーカ僕がドワーフだって忘れてるでしょう? ドワーフが得意なのは武器の製作だけじゃないんだよ? 扱いだって上手いんだから」
バスカールが自慢げに胸を張る。それを聞いて驚いていたのはフィーナだった。
「バスカールさんドワーフだったんですか!?」
「あ、うん。あんまりそうは見えないみたいだけどね」
「そうですね。私もあったことがあるドワーフの皆さんは、もっと気難しいと言うか職人気質と言うか固いイメージが強かったんですが」
「まあ僕は変わり者だからね。けど種族の特徴はちゃんと引き継いでるから武器の扱いは上手いよ?」
「フィーナどうする?」
「お願いしても良いでしょうか? 今の私じゃ冒険者としてはまだまだ未熟すぎますから」
「了解。じゃあ明日から家に来てよ。鍛冶屋だから的とかも沢山あるし練習にはうってつけだから」
「分かりました。よろしくお願いします」
フィーナの師匠を決めてカラリスの店に到着した。