42話
カチャカチャと静かな部屋の中に食器の音だけが響く。
使用人たちがせわしなく動く中、テーブルに着いた3人は会話も無く黙々と食事をとっている。その雰囲気は決して良いものとは言えない。
その理由はただ1つ。リリウムが明らかに不機嫌なオーラを発しているからだ。
両親もそれには気づいているため、迂闊に話かけるようなことはしない。
これが、リリウムが実家に帰ってきてからの決まった食事風景だった。
「リリウム。いい加減結婚する気にならないか」
重い沈黙を破りリリウムの父が口を開く。
「……」
「お前はフォートランド家の長女なんだぞ。今回の縁談も我が家にしてみれば喜びこそすれ、嫌がることなど何1つも無いと言うのに」
「それは父の望みであってフォートランド家の望みではありません。フォートランド家の家督はすでに兄様に譲られているはずです。フォートランド家の意思を勝手に語らないでください」
リリウムはこの言葉だけで、今までの父からの説得と言う名の押し付けを断ってきた。母親は非常に穏やかな性格で父に従順なため、ただ黙って2人の様子を見ているだけだ。
フォートランド家の家督がリリウムの兄、ヴァリス・フォートランドに譲られている以上、家の意思に関する決定権はヴァリスに一任されている。今回の婚約騒動がヴァリスと無関係の所で進められている限り、フォートランド家の意思として家族に効力を発生させることは例え父であっても不可能であった。
リリウムの父、ジェミニア・フォートランドもその事を分かっているせいで、今まであまり強硬な手段を取ることができないでいた。しかし――
「いつまでもその理由で逃げられると思っているのか? 相手はランディバル家。1等伯のお家だぞ。ヴァリスも相手の家の意思を無視できる訳がない」
ジェミニアの切り札はこれだ。あまりに相手の格が上の為、1等爵程度の地位ではよっぽどのことが無い限り断ることは出来ない。
リリウムもその事が分かっているため、対策に悩んでいるのである。
リリウムは逃げるように席を立つと、背中に掛けられる声を無視して部屋を出て行った。
自室に戻ったリリウムはベッドに突っ伏して考える。
どうすればこの状況から抜け出せるのか。
王都から逃げてしまうのは簡単だ。家の私兵程度で本気になったA-ランク冒険者を止めることなど不可能だからだ。
しかしただ逃げるだけではだめなのだ。
父が家督を持っている内なら逃げてしまったかもしれない。しかし今は兄が家督を持っている。つまりリリウムとの婚約が破談になればその責任は兄のヴァリスが責任を取ることになる。
それは嫌だと思っていた。
いつもリリウムに優しく、自分が冒険者になりたいと言った時も背中を押してくれた兄だ。こんなことで迷惑を掛けたくない。
そんな思いがリリウムをこの家に縛り付けていた。
「結婚か……」
そんなことをリリウムは、今まで1度も考えたことが無かった。
婚約なんて話題が出る前に家を出て冒険者になった上に、ずっと1人で行動してきたのだ。共同の依頼を受けるような時も、好きになるような人物は現れなかった。
考えてみれば、かなり寂しい青春を送って来たのではないかと、今更ながらに痛感する。
子供のころに仲の良かった友人はすでに結婚し、貴族の妻としての役目を果たしていると聞く。
幼馴染だった男の子も、今は領地経営の為に妻と共に辺境の領地で勉強していると聞いた。
その中で自分はどうだろうか。昔からかなり活発な性格であったとは言え、未だ――いやむしろ最近になってさらに、剣を磨くことに、魔法を使うことに、興味が強くなったと思っている。
その原因と言えば1つしか思い浮かばない。
リリウムはむちゃくちゃな新人冒険者の姿を思いだしながら口元に笑みを作った。
その時、部屋の扉がノックされる。
父かと思い、無視しようかと思ったが、発せられた声は女性のものだった。
「リリウム様、ハクです。少々よろしいでしょうか?」
「入ってくれ」
ベッドに腰掛けてハクが入ってくるのを待つ。
扉が開き、1人のメイドが入ってきた。
ハクはリリウムの専属メイドのようなものだ。赤ん坊のころから良く面倒を見てもらい、家の中でも兄に次いで信頼を置いている人物でもある。
リリウムが冒険者として家を出てからは、肩身の狭い思いをさせてしまって申し訳ないと思っている人物の筆頭だ。
「どうかしたのか?」
「ようやくヴァリス様と連絡が取れましたのでご連絡をと思いまして」
「兄様と連絡が!?」
それはリリウムにとってギャンブル性の高い知らせだった。
もしヴァリスがリリウムの婚約に賛成すれば、リリウムには断るすべが全て断たれることになる。しかしヴァリスが婚約に対し反対すれば、家の中で自分の有利性は格段に増す。少しでも現状を打開する手ができる可能性があるのだ。
「はい、婚約の話が持ち上がってすぐに手紙をお送りいたしました。今日やっと返信が届いたところです」
「手紙にはなんと?」
「それはまだ。こちらがその手紙になります。リリウム様に関わる重要な事なのでご自身で確かめていただくのが1番かと存じます」
ハクはエプロンのポケットから1枚の封筒を取り出す。その封筒の封にはしっかりとフォートランド家の家紋が押されていた。間違いなく兄ヴァリスからの手紙だ。
リリウムは、その手紙を緊張で振るえそうになる手を必死に抑え受け取る。
封を開き中の手紙を取り出した。
中に入っている紙は3枚。どれも皮用紙などではない、本物の紙だ。
1枚目がリリウムに充てた手紙、2枚目はその続きになっているらしい。
そして3枚目。それはヴァリスの委任状だった。内容はリリウムの婚約に関する一切の行動の自由を認めると言うもの。つまり事実上好きにしろと言うことだった。
その委任状を見た瞬間、リリウムは最初の手紙に視線を戻す。
そしてその文面を一気に読み上げた。
その姿をハクはただじっと見ている。そしてリリウムが2枚目を読み始めたところで1枚目の手紙をハクに突き出してきた。
それを読めと言うことだと理解したハクは、手紙を受け取り内容を確認していく。そこには衝撃的なことが書かれていた。
声を上げたいのを必死に抑え、ハクは手紙を読み進める。その間にリリウムは読み終わり2枚目もハクに差し出した。
そして膝の上で自らの拳をグッと握り込む。
「兄様……」
手紙に書かれていたことは、リリウムにとっても衝撃的な事だった。
まずリリウムの婚約には一切関わっていないことが明記された上で、婚約の解消に関してはリリウムの自由にしろと言うこと。委任状はそのための物だ。
そして次に書かれていたのがフォートランド家の実権を名実ともに握るための画策だった。
今回の婚約騒動を利用して、父を表の舞台から引きずりおろすことが書かれていたのだ。
それも大分前から計画されていたらしく、他の貴族への手回しもすでに完了しているとのこと。今回の婚約騒動をその計画の一部に組み込み、実行を数段階飛ばして早くすると言うことだ。
「これはつまり……」
手紙を読み終えたハクが、リリウムに問いかける。手紙の内容は簡潔で分かりやすいのだが、その内容が衝撃的過ぎて現実とは思えないのだ。
だからハクはリリウムに答えを求めた。
「ある意味クーデターだな。まあ、家督を持っているのは兄様だから、実際は部下の再編と言った方が良いかもしれないが」
「そうですね。しかし婚約騒動までも利用するとは……」
婚約騒動が唐突に進められたことだとすれば、ヴァリスがこの計画を組んだのはハクからの手紙を受け取った後と言うことになる。と、なれば恐ろしいまでの手回しの速さだ。
改めて自分の兄の優秀さに驚きながら、リリウムは感謝する。
「しかしこれで私のやるべきことが決まった。ハクはどうする? これ以上この家にいればお家騒動に巻き込まれることになる。今から辞めても問題ないと思うが?」
「何を言いますか。私はリリウム様が生まれてからずっと勤めて来たのですよ。今更やめることなどいたしません。それにヴァリス様なら悪いようにはしないでしょう」
「それもそうだな。しかし戦闘になるかもしれないから、計画の当日は実家に戻っていた方が良いだろう。その日は私も全力で逃げねばならないからな」
「分かりました。ではその日だけお暇をいただいて来ます。ジェミニア様には、リリウム様の教育を失敗したとしてあまり良いようには思われていませんから、お暇をいただくのは簡単でしょう」
「すまないな。苦労を掛けて」
「いえ、今こうして全てがいい方向へ進んでいますので、問題ありません」
「そう言ってもらえると助かる。では私たちもこっそりと準備を始めようか」
急にせわしく動き出したのでは、何かあったのかと疑われる可能性が高い。
最終的には王都から逃げ出すように出発するのだから、こっそりと準備は進めておく必要があった。それにはやはり外部の協力者が必要となるだろう。
ハクでも可能かもしれないが、父のことだから監視されている可能性もあるとリリウムは考えた。
「やはりトーカに協力を頼むか」
自分をより冒険者に近づけた存在を思い浮かべ、ハクと作戦決行日までの予定を決めて行った。
「やっと……やっと終わりました」
10数枚に及ぶ皮用紙の束をまとめ、ナージュは大きく息をついた。
用紙の内容は、冒険者漆桃花の個人データだ。ギルドカードの情報、冒険者による対象の観察、そして地道な聞き込み。そのすべてを統合してやっと今日、ギルドマスターに提出できる程度には情報が揃った。
ギルドカードのデータや対象の観察から上がって来た情報をまとめるのは比較的楽だった。しかし、聞き込み調査による情報の収集がナージュをもっとも苦しめた。
他の受付嬢に聞き込みを行っても何も情報は無し。その上なんでその冒険者を調べているのかとあらぬ疑いまで掛けられ、飲まされ、強引に口を割らされる寸前まで追い込まれる始末。
一緒に行動していた冒険者に聞いても、特に目新しい情報は入ってこなかった。唯一リリウムに桃花と出会ったころの話を聞けたのが収穫と言えば収穫になるだろう。
しかしそれ以前の経歴がいくら調べても全く出てこない。
宿屋の情報網を頼ってみても、出て来るのは変な噂と知っていることばかりで、何の役にも立たなかった。
おかげで知っている情報しかなかったと言うことでお金を取られることは無かったが、それでも有休を使ってまでせっかく足を運んだのに無駄足になったのは、ナージュの精神に着実にダメージを与えて行った。
そして今日、ようやく完成した資料集。
桃花の調べられる限りの経歴と、戦闘スタイル。加護の星の属性や等星、これまでの噂など、ありとあらゆることが書きこまれた資料集だ。
ナージュは席を立ちあがり、それを持ってギルドマスターの部屋へ向かった。
「マスター、いらっしゃいますか? ナージュです」
部屋の前へ扉をノックし中に声を掛ける。ギルドマスターはギルド職員全員の名前を暗記していると言うどうでもいい能力を持っているため、名前を言えばだれか分かってもらえるのだ。
「おお、ナージュか。開いているから入ってきてくれ」
「失礼します」
許可を得て中に入る。ギルドマスターの部屋は、乱雑に書類が積まれた部屋だ。
決して人を呼んでいいような場所ではない。
そのため、ギルドマスターとの面会は大抵の場合が応接室で行われるが、個人的なことを話す場合はごく稀にこの部屋が使われることがある。今回などがその場合だ。
「それでナージュよ。どうかしたのかの?」
「はい、ある冒険者について資料をまとめましたのでご報告しておこうと思いまして」
「ある冒険者? 最近こっちに来たもので目立っておるとすれば漆トーカかの?」
ギルドマスターはピンポイントで言い当てた。
「よくお分かりになりましたね」
1日で王都に来る冒険者の数など数えるだけでも馬鹿らしくなる人数がいる。その中で1人を当てるなど、普通は出来るはずがない。
「ホッホッホ、ナージュが自分から調べるとなればそれほどの冒険者と言うことになるからの。今の王都でナージュが注目しそうなのはトーカぐらいじゃ」
「冒険者トーカをご存じなのですか?」
ギルドマスターの口ぶりはトーカの異常性を知っているような口ぶりだ。
「キクリのギルドマスターから紹介状が来てての。色々とおかしなやつだからよろしく頼むとのことじゃったよ。まさかこっちに来るまでに貴族がらみで問題を起こしてくるとは思わんかったがの」
ギルドマスターは1枚の紙を取り出しナージュに見せた。それは冒険者オルトロ・ホースロアに関する最終報告書だ。
そこでナージュは、最初にトーカ達の依頼完了報告を受けた時のことを思い出した。
「確か殺害の正当性を調べているのでしたか。結果は?」
「問題なしじゃな。これまでの冒険者トーカおよび冒険者リリウムの行動と、周りの評価、それに冒険者オルトロが警告を受けていたことを鑑みても、殺害に関して問題は無いと言う結論がギルドで決定された。ギルドはこの殺害に関して正当性を認め、罰則を与えることはしない。ホースロアの家が何か言って来るかもしれんが、ギルドの方針はこれを突き通すことになった」
「そうでしたか」
ナージュはホッと息を吐く。色々と調べてきて情が移ったのか、桃花に何も罰が無い事にナージュは胸を撫で下ろした。
「それじゃナージュの報告書を見してもらってもええかの?」
「あ、はい。こちらです、どうぞ」
束をギルドマスターの前に置く。
ギルドマスターはそれを受け取るとその場でざっと目を通していく。そして3枚目の所で目を見開いた。
「これは事実なのか?」
3枚目、そのページで1番目に止まるのは間違いなく属性のことだ。
「はい。実際にチームハイドランジアが確認しています。またハイドランジアが言質も取っています」
「そうか。まさか2属性使いとは……」
「その情報は紹介状に書かれていなかったのですか?」
「紹介状にはいろいろと規格外の奴がそっちに行くからよろしくと言われただけじゃ。具体的なものは身体能力が異常と言うことしか書かれていなかった」
「そうでしたか……」
その事もナージュの報告書には書かれている。フェリールを殴り殺す身体能力に、現在のサイディッシュと呼ばれる武器を悠々と振り回せる筋力。
それらも明らかに普通ではない。
「報告書はこの後詳しく読ませてもらう。大分しっかり纏められているようだしの。この報告書を参考に冒険者トーカの扱いを決めて行こうと思う」
「ありがとうございます。方針が決まるまではどういたしましょう?」
「なるべく穏便に――が良いのじゃろうな」
「承知しました。では私は仕事に戻らせていただきます」
「うむ。ご苦労だったな」
「失礼します」
ナージュが部屋を出た後、ギルドマスターは大きくため息を付いた。
「まったく。厄介な能力を持ってるもんじゃ」
報告書を見ながらギルドマスターは、少し冷めてしまったお茶を啜った。
「じゃあ報告を聞きましょうか」
王城の一室。そこでミルファは部下の結果報告を聞いていた。
それは最近気に入っている冒険者桃花の身辺調査の報告だ。
個人的にぜひとも欲しいと思ったその人物に対し、ミルファはすぐに調査依頼を出した。そしてその結果が今日報告される。
これで怪しい人物なのならば、今後の対応を考えなければならないし、何もないのならばぜひとも近くに置いておきたい。
結果を心待ちにしていたミルファにとって今日は非常に楽しみな日だった。
「ハッ! 冒険者漆トーカについての報告をさせていただきます!」
全身を真っ黒に包んだ、王家の情報収集専門の部隊が報告をしていく。
報告は最近の行動に始まり、徐々に過去へと遡っていく。そしてキクリの町でフェリールを倒した所で部下の報告が止まった。
「どうしたの?」
「いえ、それがその……」
すっきりとしない部下の反応に眉をしかめる。
「良いから話しなさい」
「これ以前の足取りが全く掴めませんでした。フィーナという商人と共にキクリの町に入ったのまでは調べられたのですが、どこから来たのかが全くの不明です」
「フィーナと一緒に行動してたんじゃないの?」
「いえ、フィーナは商人として父と行動していましたが、キクリに到着する前の最後に立ち寄った村では、彼女とその父の姿しか確認されていません。そこからキクリの間で遭遇したと予想されます」
「予想じゃダメでしょうが……」
情報部隊が予想だけを報告するのは、自分の無能さを示しているようなものだ。根拠の得られない答えほど意味の無い物は無い。
「真に申し訳ございません」
「つまりそれ以前の足取りは不明ってことね。じゃああなたの予想でいいわ。トーカは敵国の間諜である可能性があるか否か」
「……否かと」
部下がもがきながらなんとか吐き出した言葉は否だった。
「理由を聞こうかしら」
「敵国の間諜である場合、情報が全く出てこないと言うのは、むしろあり得ないことです。どんなに上手く隠すとしても、それは怪しまれないように偽の経歴を流すからです。しかし現実漆トーカの経歴は一切が不明。これは間諜としては非常にやり難い経歴になるはずです」
「なるほどね」
敵国の間諜ならば、いかにそうとバレないように隠すかが重要になってくる。
ユズリハも表面上は戦争など行っていないが、他国に間諜を幾人も放っている。そしてその全員に怪しまれないような経歴が偽装されているのだ。1人として過去の経歴が無い存在などいない。
他の国でもそのような愚かなことはしないだろう。
だからこそ部下は桃花の間諜疑惑を否と言ったのだ。しかし、これが確実である証拠はない。どこかの国が、むしろその心理を逆手に取りすべての記録を消した可能性もあるのだ。
「じゃあ、もう1つ聞くわ。トーカが敵側、もしくは中立の立場だとして、その存在はどういう役職になると思う?」
「過去の経歴をすべて消すような役職は暗殺者ぐらいしかいません。しかし漆トーカは暗殺者として活動するには目立ちすぎています。足取りが途切れるまでの情報は、入手が困難ではありませんでした。むしろ今までの仕事としては容易な部類になります」
「つまり?」
「適する役職はありません。ある意味冒険者が最も適職かと」
「ん、分かったわ。ご苦労様、下がって頂戴」
「ハッ!」
部下が静かに退室する。すると入れ違いにクーラが入ってきた。諜報の報告は極秘事項なため、報告を受ける際は例え側近であろうとも退室しなければならないのだ。
「いかがでしたか?」
「微妙なところね。お父様の説得は問題ないだろうけど、他の貴族がなんて言って来るか」
「そうでしたか」
クーラが深く催促することは無い。
「まあ、間諜の線は消えたから良いとしましょう。王城へ招くのは問題なさそうね」
「それは良かったです。招待しておいて、やっぱり入っちゃダメとは言えませんからね」
「でもやっぱり部下にするのは難しそうね」
「それはリリウム様も難しいっておっしゃってたじゃありませんか。やはり友人として仲良くしていくのが無難だと思われますよ?」
「そうね。トーカを部下に出来れば色々面白そうだったのに……まあ、結果が出ちゃったものはしょうがないわ。貴族共を言いくるめる方法考えるわよ!」
「それはミルファ様の仕事ですよー、私はただの平民なのに……」
なんだかんだ言いながら付き合うクーラは、ミルファの無茶ぶりに慣れてしまった自分にそっとため息を吐いた。