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異世界は赤い星と共に  作者: 凜乃 初
ユズリハ王国王都編
28/151

27話

 場所は変わって喫茶店。2人の案内でおすすめの場所を紹介された。王族のおすすめだから、最初はどんなとこを紹介されんのかとびくびくしてたけど、いたって普通の喫茶店だった。

 なんでもここのコモロの実のセリースが美味いのだとか。

 で、セリースってなに?

 3人でセリースを注文し、来るのを待つ。その間に第2王女様がここに来た理由を聞くことにした。


「で、どうして俺の後をつけてた訳?」

「簡単よ。クーラを助けた冒険者がどんな人物か興味があったの」

「興味?」

「クーラが町に降りるときは、一般的な市民の服を着るようにしているのよ。王城のメイド服だとお金持ってるってバレバレだからね。まあ、今回は買い物してるところを見られちゃったみたいで絡まれたけど、普通ならそんなことは無いわ」

「ふむふむ、そんで?」

「見た目平民を冒険者が恐喝しているのに、そこに助けに入るなんて、なかなかできないことよ。貴族ならお礼とかを求める算段があるかもしれないけど、平民じゃお礼も期待できないからね。それに相手は4人だったんでしょ? 周りにいた平民も見てるだけだったらしいじゃない。それをあなたは平然と助けた。それも戦うことすらせずに、脅すだけで退散させた。その上クーラの素性が分かっても一切お礼を求めてこないことも興味が湧いた理由ね」

「すみません。ご主人様は興味を持つとどこまでも追いかけてしまうんです……」


 ああ、それで哀愁を含んだ顔で、またすぐ会うことになるって言った訳ね。

 それにしてもそんなに珍しいことかね? 俺も冒険者だし、不愉快だったら助けに入ることもあるだろ。リリウムとかもノータイムで助けに入るだろうしな。


「同業者がバカなことやってりゃ止めるのは普通だぜ。それに子供は守られるべきもんだろ?」

「その考え方がもっと浸透してれば、国はもっと平和になってるわよ」

「そうなの?」

「子供だろうと大人だろうと自分の身は自分で守る。世界の常識よ?」

「マジか。殺伐としてんな」


 子供は大人に守られるべき存在なのにな。

 話が重くなろうとしたとき、注文したものが来た。


「お待たせいたしました。こちらコモロの実のセリースになります」

「待ってたわ。ここのセリースが好きなの」

「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ」


 目の前に置かれたグラスを見て分かった。セリースはジュースのことだったのか。それに色がずいぶん白いとこを見ると、○○・オレ系のもんみたいだな。現代で言えばフルーツオレか。


「ここのセリースは王城のより美味しいわ。きっと果物が違うのよね」

「もしかしてクーラにお使いで買わせてた果物って」

「もちろんここのセリースを王城で再現するためよ。でもどうしても上手くいかないのよね。味が違ってきちゃうの。なにが原因なのかしら?」


 ミリーはセリースを飲みながら真剣に考える。そんなに美味いもんなのかと思って俺も飲んでみた。

 ふむ、口当たりはずいぶん滑らかだな。果物の繊維っぽさが全然ない。それに甘さが果物だけの甘さじゃないよなこれ。甘味ってこの世界なにがあるのかさっぱり分からんが、砂糖っぽくも無い。どっちかって言うと蜂蜜とかメープルシロップ?


「この(まろ)やかさと甘さが再現できないのよね。普通の作り方だけじゃ足りないのかしら? 昨日買ってきてもらった果物を使っても、あんまり変わらなかったものね」

「そうですね。この独特の甘さって何なんでしょう?」

「果物以外のもんだろうな。それに円やかさは多分果物をすりおろして混ぜるだけじゃ再現できないだろ」

「あら、トーカも意外と舌は肥えてるのね」


 まあ、現代とこの世界の味比べりゃ断然肥えてるだろうな。

 それにしてもこの滑らかさってなんだ? 前の世界でも食べたことある気がするんだよな。

 果物をすりおろす以外に原形なく使う料理って何があったっけ?

 ――ああ、ジャムか!

 果実を残したジャムなら繊維っぽさもあったりするけど、濾したジャムはサラサラになってるからこの食感に近いわ。ならこの甘味はジャムを作るときに付いたもんか?


「なあ、甘味をつけるもんって何がある?」

「うーん、砂糖かしらね。でも砂糖ってすっごく高いからこの値段で出せるような飲み物じゃなくなるわ」

「それ以外は?」

「それ以外?」

「無いの?」

「花の蜜とか?」


 あー、蜂蜜とかメープルシロップとか無いのか。もしかしてこの店、それを発見した?

 だとしたら教えるのはまずいかね? まあ、ほっといても広がるだろうし良いか?


「木の樹液とか蜂が巣に集めた蜜とかも甘いけど使えないかね?」

「木の樹液? 確かに甘いけどかなり甘味は薄いわよ? それに蜂の蜜だって、そんな危険なもの誰も取りたがらないわ」


 蜂なんて全身を覆う服着ていれば問題ないだろ。それともそれでも問題になるほど狂暴なのか? あれ? もしかして蜂って魔物化してる? 今度調べてみるか。とりあえず今はメープルシロップっぽいモノの作り方でも教えてみるか?


「煮詰めるとかしてみたら?」

「なるほど、試してみる価値はありそうね……」

「トーカ様はお詳しいんですね」

「田舎育ちだからな。木も身近にあったし、煮詰めておやつにしたりもしたからな。確かカエデって種類の木がよく取れたっけ?」


 嘘だけどな。木なんて公園にしかなかったし、樹液なんて出てる木が見つかるはずがない。

 そもそもメープルシロップは買うもんだしな!


「実験してみるのも面白そうね。植物学者を呼んでいろいろ調べてみましょ!」

「そうですね。新しい甘味材ができれば砂糖を使わないデザートができるでしょうし!」

「そうと分かればさっそく行くわよ! クーラ、付いて来なさい!」

「ちょっ! ちょっと待ってくださいミリー様! トーカ様にお礼を言うんじゃないんですか!?」

「ああ、そうだったわ!」


 俺の存在忘れられてたな。1つ物を見ると周りが見えなくなるタイプか。王族としてはそれってどうなの? まあ、どこかに嫁ぐんだろうし問題ないのかね。


「トーカ、クーラのことを助けてくれてありがとう。本当はしっかりお礼したかったんだけど、メイド1人のために冒険者を王城に招くことはできないの。だからこの場でお礼を言わせてもらうわ。ありがとう」

「ハハ、子供を守るのは当然のことだぜ。お礼を言われるためにやった訳じゃねえから気にすんな!」

「本当に興味深い人ね。王族に頭下げさせて平然としてるなんて」

「ハハ、あんま王族とか貴族とかの力関係と縁が無くてね。いまいちパッとしねぇんだわ。それに今はミリーなんだろ?」

「フフ、そうだったわね。本当にありがとう。じゃあ私たちはもう行くわ」

「おう、またな。っと、城まで送ってくぜ」


 別れようとしたところで、思い直し一緒に席を立ち、店を出る。


「別にいいのに。今の私たちを襲う連中なんていないわよ?」

「まあまあ、昨日の今日だからな」

「そう、ならお願いしようかしら」

「任せな!」


 坂道を登りながら、ミリーは樹液のことについて詳しく聞いて来た。けど俺も素人だしあんま答えられない。適当にはぐらかしたり、樹液でも使える木と使えない木があることを教えているうちに俺たちは変な連中に囲まれていた。全身をマントで覆い、深くフードをかぶった真っ黒さんだ。

まあ、店を出る時から気付いてたんだけどね。

 いかにも怪しげなフードで顔を隠した男の1人が前に出る。周りに平民の姿は無い。人避けの魔法とかでもあるのかね? それともどっかに誘導された?


「第2王女ミルファ・ユズリハ・サイハルトだな。ここで死んでもらうぞ」

「あなたたち何者?」


 囲まれている中、ミリーは凛とした声を発する。それはまさしく王族のものだった。ようはミリーとミルファを使い分けてるのか。


「答える理由は無い。第2王女にはここで死んでもらうのだからな」

「お、お嬢様!」


 男が手を上げると、周りにいた同じようなフードの人たちが一斉に武器を構える。剣にナイフに芝刈り鎌などいろいろだ。

 それを見た瞬間、クーラがミリーの前に出て男たちから守ろうとする。

 それにしても、完全に俺を無視してるのはなんでだろうな?


「なあ、俺完全に無視?」

「お前などに興味は無い。所詮冒険者、動かなければお前を殺しはしない」

「ミルファを守ったら?」

「容赦はしない」

「トーカ。あなたは動かなくていいわよ。私だって第2王女なんだもの、暗殺の可能性ぐらい常に考えているわ。それに私、クーラと2人で行動してるように見えるけど、常に近くに護衛がいるもの。そろそろ助けが来るわ」

「護衛とはこれのことかな?」


 男たちは背後から2体の死体をミルファの前に投げ出した。

 2人とも首元を一撃で刺され殺されている。完全に不意打ちだな。てか、護衛してんのバレてんじゃん。


「くっ……」

「エリートなのだろうがな。この程度の護衛など我らの前には無いに等しい。さて、では覚悟してもらおう」

「クーラは逃がしてくれるのかしら?」

「お嬢様!?」

「関係ないものは殺さない」

「ふーん、つまりこの暗殺は依頼されたものなんだ。対象は私。依頼人はどこぞの貴族かしらね」

「……ある程度俺たちのことは知っている口ぶりだな」

「当然王族だもの。暗殺者にどんな連中がいるかぐらい把握しているわ。あなたたちは暗殺チームスコーピオンでしょ? 対象以外をなるべく殺さない暗殺者集団。裏の世界じゃ案外有名よね」

「ふむ、チーム名まで知ってるか。さすが王女と言ったところか。()れ」


 男が合図を出す。それと同時に周りの連中が動いた。

 俺の行動は――まあ、当然守るよな。


「はい残念」


 サイディッシュを展開させつつ、横なぎに一振り。それだけで2人の暗殺者が切り殺された。

 今回は斧側を使う。脅すより殺すならこっちだよな。


「……貴様も死にたいようだな」

「お前ら程度に殺されるほど弱くはねえよ。星誘いて風刃を流す、ウィンドカッター!」

「ちっ、属性魔法も使えるのか」

「当たり前。B-なめんな!」

「嘘! あなたB-もあるの!?」


 ミルファが素で驚いているが、今は無視。とりあえず残りの5人を殺しますかね。子供を殺そうとする相手には容赦しないよ?


「ちっ……引くぞ!」

「逃がさねぇよ。星誘いて風刃の檻を繋げ、ウィンドキューブ!」


 人払いしてくれたおかげで、市民を気にせず大規模な魔法が使えるのは助かるな。

 それぞれバラバラに逃げ出そうとする暗殺者を、辺り一帯を囲む巨大な風の檻で閉じ込める。強引に檻を突破しようとした2人が、檻に触れて切り裂かれた。

 檻の柱は全部ウィンドカッターでできてるから触れば切れるぜ。


「逃がすわけねえだろ。1人残して全員死んでもらうぜ。もちろん1人は尋問・拷問のバーゲンセールだろうけどな」


 反転して襲ってきた1人に対しサイディッシュの柄を鳩尾に打ち込む。それだけで肋骨が砕け、その場に倒れこんだ。できればリーダーみたいなやつを拷問に掛けたいけど、一応保険の為に生かしておく。

 そしてもう1人を斧で上下半分にたたっ切る。

 残りはリーダーだけ。


「さて、あんた1人だ」

「1人になろうとも情報は出さない」

「あ!……」


 リーダーらしき男は自らの首をナイフで切り裂いた。すぐに血を吐きその場に倒れる。

 ありゃ助からねぇな。一応1人残しておいて正解だったわ。


「こんで終了だな。送ってきて正解だったろ?」

「そうね。これは正式に王城に呼んでも問題ない理由ができたわね」

「冒険者だから礼儀とかしらねぇぜ? やめとけ、問題になるのがオチだ。それに明日には依頼で出かける予定だしな」


 今日はミリーと会ったから依頼を受けに行けなかったし、このあとはサイディッシュの金を持ってかないといけないからな。


「時間なんていくらでもあるわ。いずれ呼ぶことになると思うから覚悟しておいて」

「面倒くさ」

「本当に興味深いわね。まあいいわ、とにかく殺された騎士たちをこんなところに無造作に置いといちゃ可哀そうよ。せめて綺麗にしてあげたいんだけど」

「任せな」


 ミリーの指示に従って殺された護衛の騎士を道の端に寝かせる。

 そしてそこから少し離して暗殺者の死体を無造作に積み重ねた。騎士との扱いの違いをアピールするためだ。


「クーラ、あなたはここに残って後から来る騎士に説明してちょうだい。さすがに死体をこのまま放っておく訳にもいかないわ。私が王城へは直接知らせるから」

「分かりました」

「トーカ、城まで護衛お願い出来るかしら?」

「おう、後こいつまだ生きてるから連れてくぞ? 拷問でも尋問でも調教でも好きにしな」

「あら、助かるわ。ありがとう」

「こういうのは元を断たないといくらでも湧くからな。あんま力になれんけど頑張んな」

「そういうのは任せておいて。じゃあ、行きましょう」


 死にかけの男1人を担いで、俺たちは坂を上って行った。


 王城の前まで来ると、騎士たちが大慌てで動いていた。


「どうしたんだろうな」

「私を見失ったから必死に探しているんじゃない? 護衛の兵士も殺されちゃったから」

「なるほど。ならさっさと無事を知らせてやらないとな」

「ミルファ様!」


 俺と話しているうちに1人の兵士がこちらに気付いて走り寄ってくる。それに続くように大量の兵士がこちらに来た。そして先頭の騎士がミルファと俺の間に割り込み引き離した。

 それと同時に、他の騎士たちが俺を取り囲む。まあ当然の対応だわな。


「やめなさい! その人は恩人です。私を襲ったのはその人の肩に担がれている暗殺者よ。まだ生きているから治療して尋問に掛けなさい! それと襲われた場所にクーラを待たせています。そこに護衛騎士2名の死体と暗殺者の死体があるからそれぞれ正しく対処しなさい」


 その凛とした声に兵士たちは即座に剣を降ろす。そして何名かの騎士がすぐさま坂道を駆け下りて行った。スゲー訓練されてんな。

 俺は兵士の1人に男を渡す。


「じゃ、俺はこれで行くぜ」

「ええ、助かったわ」


 ミリーと兵士たちに見送られながら俺は坂を下って行った。

 さて、金を払いに行かないとね。ついでに少し改良も頼んでみるか。

 先ほどの戦闘で思ったことを踏まえつつ、俺はギルドへ向かった。


今更ですが、20万ユニークありがとうございます。

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