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第2章エピローグ「まだ終わっていない日」

夜。


街はいつも通りに息をしていた。


人は歩き、灯りは灯り、笑い声もあった。

何一つ欠けていないように見える世界。


それなのに、ユウはずっと違和感を持ったまま歩いていた。



「なぁ」


レオンが隣で歩きながら言う。


「今日さ、結局なんだったんだ?」


軽い口調。

いつもならそれで終わる会話。


でも今日は終わらない。


ユウは少し間を置く。


「……わからない」


それしか言えなかった。



ガイは少し前を歩いている。


剣は腰にある。

でも今日一度も抜かれていない。


それが逆に怖い。


「止めただけだ」


ガイがぽつりと言う。


誰に向けたわけでもない。


でも全員に届く言葉だった。



ミアは最後尾。


いつもより距離がある。


その距離が“たまたま”じゃない気がする。


「未来は戻らない」


ミアが言う。


ユウが振り返る。


「どういうこと」


ミアは少しだけ笑う。


でもその笑いは、ちゃんと届かない。


「止まっただけのものは、そのまま“次の形”になる」



風が吹く。


街灯が揺れる。


その瞬間だけ、ユウは見てしまう。


ほんの一瞬。


街の影が“二重”になる。


昨日の街と、今日の街。


でも今はもう重ならない。


少しだけズレている。



ユウの足が止まる。


「今の見えた?」


レオンが振り返る。


「何が?」


ガイも止まる。


ミアだけが、止まらない。


でも少しだけ、遅れて足を止める。


「見えたよ」


ミアが静かに言う。


「でも、見えたことにしない方がいい」



沈黙。


その“見えたことにしない方がいい”が、

一番危ない言葉だった。



その夜。


それぞれが別れる道。


ユウは一人で帰る。


空はいつも通り星がある。


なのに今日は、数えようとすると減る。


いや。


減っていない。


“見えなくなる”。



ユウは呟く。


「戻ったはず、なんだよな……」


返事はない。



そのとき。


視界の端に、あの“白い建物”が一瞬だけ映る。


でも振り向くと何もない。


最初から存在しない。


でも脳だけが覚えている。



ミアの声が、どこか遠くで重なる。


「次は、少し早いかもしれない」



ガイの低い声も重なる。


「次は止められない可能性がある」



レオンの軽い声も、どこかで混ざる。


「次ってなんだよ、ほんと」



でもそれはもう、同じ夜の中の声じゃなかった。



ユウは立ち止まる。


空を見上げる。


星が一つ、瞬く。


その瞬きが、一瞬だけ“書き換わる”。



――第2章「境界のほころび」終幕

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