異世界に?!
「なんだこれぇ?!」
突然光り輝く組事務所の床。組長含めた幹部と若衆六人は光に包まれて事務所から消えていく。
「なんだここ……」
組長である墓山は目の前に広がる草原に驚きを隠せずにいた。幹部と若衆も驚き固まっていた。日本の風景には見えない場所、遠くにそびえ立つ山。
「く、組長……」
「山端……」
「ここはどこなんでしょう」
若頭である山端は組長の傍に寄った。途方に暮れる六人組は何も無いただ広いだけの草原をしっかりと見渡し歩き始めた。数時間歩くと既に夜を迎えていた。急激に冷える中で暗闇の中にひとつポツンと灯りが見える。六人は走り出し灯りの近くに顔を出すとそこには四人の武器を装備した男たちが肉を喰らって居た。
「なんだお前ら?!」
「お、お前らこそナニモンだ?!」
「……俺はアスガロト。冒険者をやっている」
日本でも聞き馴染みのない名前、見た目は西洋に居るような人間だった。それよりも墓山は何故か自分らの言葉が通じることに違和感を覚えていた。
「お、俺は墓山という」
「ハカヤマ……?」
「あ、あぁ。俺らは知らねえうちにここに迷い込んだみてえでな」
「……後ろの五人はヨダレ垂らしてまで肉見てるが飯は?」
そうアスガロトは聞くと五人は首を横に振り肉を欲しがった。凄まじい食欲を感じ取ったのかアスガロトの仲間であろう男たちは肉を一欠片ちぎって渡す。感謝しながら美味しそうに食う五人を見て庇護欲が湧いたのか沢山食べ物と飲み物を恵んでくれていた。
「す、すまない。うちの若衆どもが」
「いや、そんなことよりもお前ら行くあてはあるんか?」
「いや無いな。身分証もない」
「追い剥ぎにでもあったのかよ とは思わないな。綺麗な服を着ているしな」
ここの人間たちはスーツが見慣れないのかジロジロと舐めるように見る。墓山と山端はスーツの上着を脱いでアスガロトたちに渡す。素直に受け取ったと思えばジロジロ見たあと、胸元に入っている武器を手にした。
「おっとすまねぇ。それは返してくんねえか?」
「なんだこれは」
「拳銃っつーもんだ」
「武器か」
「あぁ、そうだ。寝首をかくことはしねえ」
「分かったよ。返す」
アスガロトは二人に拳銃を返すと、墓山と山端は厳重に受け取りワイシャツとスラックスの間に拳銃を挟んだ。スーツの上着を眺めながらアスガロトは言った。
「いい生地で出来ている。金貨三枚と交換しねえか」
「いくらなんだ。それ」
「金貨は金貨だが……」
「いやまぁいい。ありがたく貰うぜ」
「組長いいんですかい?」
後ろから若衆の一人、竜ケ崎はそう聞くと墓山は深く頷いた。後ろに下がり一礼をするとアスガロトは再び不思議な光景を見ているかのような眼差しで見つめた。
「まぁハカヤマだっけか。寝ないと体力もしんどいだろう。あそこに俺らが用意しているねぐらがある。予備でもうひとつあって良かった。そっちで寝ろ」
墓山は言われるとおりにねぐらに向かうと、男六人は入らないがそれでも暖かいテントのようなものがあった。ぎゅうぎゅう詰めで眠りについた。
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「おい起きろ。お前ら」
「あぁ……?」
翌朝テントの外に若衆二人が起き上がり出る。昨日と全く同じ景色で組の事務所に戻ってこれるという夢オチの展開は全くなかった。若衆はすぐに組長と幹部を起こし、テントを畳んだ。
「街へ行くがお前らは?」
アスガロトが起きてきた六人に声をかけると、深く頷きついて行く素振りを見せた。優しく微笑むアスガロトに感謝しながら、歩き始めた。




