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第3話 満州事変

西暦1931年9月18日22時20分頃


満州の柳条湖付近で、一発の轟音が響いた。


日本の満州鉄道が中国軍によって「爆破された」のである。


これに対し関東軍は中国軍に「反撃」し、満州の広域で軍事行動を始めた。


その後の数ヶ月で満州のほぼ全域を手中に収めた関東軍は翌年3月になって「昔の中国王朝の皇帝が満州で独立国作りたいってよ!そんで満州地域は今日から中国のものじゃなくって『満州国』になったから、そこんとこヨロシクぅ!」と宣言した。こうして建国されたのが今の『満州国』だ。


勝手に自国領を占領された挙句、領土をもぎ取って国家独立宣言なんて中国が許すはずもない。満州国だって関東軍の都合で建国された国だから、日本の「傀儡かいらい」になること間違いなしだ。満州国を認めてしまったら、日本が満州の土地や資源を好き放題できるって訳だ。


そんなわけで中国は、関東軍の行動は違法であると「国際連盟」に訴えた。この国際連盟は僕たちが元いた時代の「国際連合」に近い国際組織だね。


そして国際連盟で力を持っているのは欧州列強であり、彼らもまた中国の利権を狙っていたから日本の「満州独占」といえる状況を容認できなかった。欧州列強は満州国を容認せず、中国領で暴れまわった日本の軍隊を批判する……と思われた。


満州国建国宣言の直後のことだ。


(関東軍が)満州国皇帝と称する愛新覚羅溥儀あいしんかぐらふぎは、信じられない声明を出したんだ。


「私の国、まだ出来立てほやほやで産業とか未発達だから投資してくれる国はいませんか?土地の借用・開発権も期限付きでオークションに出します。ついでに満州国を国家承認してくれたら嬉しいなぁ(意訳)」


───この声明に世界中が驚愕した。何しろ関東軍は満州全域を日本の勢力圏にするために武力で占領したはずなのに、そこで建国した傀儡の皇帝が「列強の皆さん、満州の土地と資源はいかがでっか?」と言い出したのだ。この時の満州国は当然、関東軍の指揮下にあった。これでは何のために関東軍が危険を冒してまで満州全域を占領したのか全く分からないのだ。


しかしながらこの声明が世界の潮流を変えてしまった。


これまで「関東軍をさっさと満州から撤退させろ!」と叫んでいた欧米列強は掌を返すように満洲国を国家承認する。そして溥儀が主宰する「満州切り売りオークション」に巨額の投資をしたのである。


満州には相当な資源と消費人口があって、投資によって開拓が成功すれば相当なリターンが見込まれる……と列強は踏んだんだろうね。そして満洲国もまた、国土と引き換えに大量の外貨が手に入る。建国直後でスッカラカンの満洲国国庫が補填されて、当面の国家運営費を稼げる。更に列強が拓いた資源やインフラに関しては、利益のうち幾らかを満洲国に上納させる約束もしている。


結果、満州国は各国勢力が入り乱れる異常事態となった。元々中国領だった土地はたった数ヶ月で「国際資本の草刈り場」と化したのである。列強の中でも特に中国市場を欲していたアメリカはかなりの高額で満州切り売りオークションを落札し、投資した。フランス、イギリス、イタリアなど他の列強もこれに続く。


この事態に当の中国政府は「ウチの土地を好き放題するな」と抗議したが、この時の中国は列強からしたら「未開の土地の弱小国」という認識しかなく、むしろ満州国の国家運営に関係し、満州の治安維持に尽力する日本政府に各列強が接近する姿勢を見せた。この時の中国には自国に味方してくれる国はおらず、泣き寝入りをすることになったのである。


余談だが、満州国建国の立役者である関東軍は事変後に解体され、人事を一新した後継組織「満州派遣軍」が設立されている。噂では、満州事変に関係した関東軍のトップたちが乗っていた列車が「脱線」して全員事故死したためだとか何とか……真実は不明だが、軍隊というのは風通しの悪い組織だから、こんなことも起きるわけだ。


「さて、話を戻そうか。この満州の変化に危機を覚えていたのは、土地を奪われた当の中国だけじゃない。満洲国と国境を接し、日本や他の列強と思想から対立していたある国もまた、満洲国に強く反発した。それが━━」


1937年から今に至るまで日本と苛烈な地上戦を繰り広げている国、ソ連だ。

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