表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

第八話──傷つける理由、守る理由

忘れていたはずの記憶が、

白い花の香りとともに、ゆっくりと輪郭を持ち始める。


傷つける言葉。守る背中。


夢と現実のはざまで揺れるふたりの少女が、

ほんの少しだけ、自分の「過去」に触れる――第八話、開幕です。

「……誰を、守ったんだろう。」


寝台の上、天蓋越しに揺れる月明かりを見上げながら、私は小さく呟いた。


胸の奥に、白い花の香りが残っている。

今日見たエリカの背中と、記憶の中のあの少女の姿が、何度も重なった。


それでも、はっきりと“誰”だったのかは思い出せない。


“逃がして”“押さえた”――

何かを守ろうとして、私はあの扉の前に立っていた。


それだけは、確かだった。


「……アメリア様。」


ノックの音に続いて、ルメリアの声がした。

私は慌てて身を起こし、ベッドの上で姿勢を正す。


「……どうぞ。」


ルメリアは静かに扉を開け、紅茶の乗った銀盆を持って入ってきた。

どこか、私の表情を探るように、優しい眼差しを向けてくる。


「今夜は冷えます。……少し落ち着かれるかと思いまして。」


「ありがとう、ルメリア。」


カップに手を伸ばす。

その動作だけで、指先がかすかに震えているのが自分でもわかった。


ルメリアは何も言わず、ただ一歩だけ私の傍に寄った。


私は口を開きかけて――でも、言えなかった。


「……なにか、お聞きになりたいことが?」


「ううん、大丈夫。」


問い返す声はやさしかった。

でも、私がその先を聞いたら、何かが変わってしまう気がして……怖かった。


だから、私は黙った。


ルメリアは、それ以上何も言わずに一礼し、そっと部屋を後にした。


次の日の午後。

陽射しの中庭を横切っていると、ふと誰かの視線を感じた。


「……ノワリスの令嬢が、また目立ってるわね。」

「前に紅に睨まれたのに、まだ懲りてないなんて。」


耳に入る声は、誰も名指しでは話していないのに、すべて自分に向けられている気がする。


私は、ただ黙って歩いた。


ふと目をやると、遠くの回廊に誰かの姿が見えた。


銀髪の少年――シルヴァン・アルジェント。


こちらに背を向けているが、何かを書き込むように手元を動かしていた。


彼は、気づいていないふりをして、すべてを記録しているのだろうか。


それとも――

私のことも、“記録に残す”のだろうか。


その夜。寮の小さな休憩室にて。


「……お嬢様?」


静かな声に振り返ると、エリカが紅茶を手に持って立っていた。


「もしかして、眠れませんか?」


「……うん、ちょっとだけ。」


私の返事を聞いたエリカは、照れたように笑った。


「じゃあ、少しだけ、お話しませんか?」


ふたりで並んで座り、温かい紅茶に口をつける。

エリカの雰囲気は、いつもより少し落ち着いていた。


「……最近、夢を見たんです。」


「夢?」


「……白い花が揺れていて、その向こうに、誰かがいて……私、名前を呼ばれていたような気がして……」


「名前……?」


「はい。でも、思い出せないんです。呼ばれていたのが、誰だったのかも……」


私は静かにエリカを見つめた。


あのとき――

誰かを“逃がした”あの記憶。


もしかして、それは――エリカ?


いや、まだ確信はない。

でも、胸の奥がざわめいている。


まるで、何かが繋がりかけている。


その夜、私は再び夢を見た。


燃えるような紅い光。

広間の奥、崩れた壁。


そして――

背を向けて走り出す、小さな金髪の少女。


その子の後ろで、扉を必死に押さえる“誰か”の姿があった。


……私だ。


私はあのとき、あの子を――


目が覚めた。


濡れた髪が頬に張りついている。


遠く、誰かが名前を呼んだ気がした。


「――アメリア」




――――――――――――――――――


次回予告

真実は、すぐそこにあるのに。


それを口にするには、まだ勇気が足りない。


それでも、少女たちは歩き出す。


“罪の名前”と“救いの記憶”を、胸に抱いて――。

ご閲覧ありがとうございます!


第八話では、アメリアとエリカの記憶がさらに近づき、

「誰を逃がしたのか」「なぜ守ったのか」――その核心が一歩手前まで迫ってきました。


少しずつ、ふたりの想いと過去が重なっていくこの感覚を、

読者の皆さんと一緒に感じていけたらうれしいです。


※この作品はAI補助のもと、プロット協力・文章制作を行っています。

魂を込めて物語を紡いでいますので、ぜひ今後の展開もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ