第七話──白い花の記憶
異端と呼ばれる私の前に、再び現れた“裁きの使い”。
それでも――
私のそばに立ってくれた人が、いた。
見覚えのある背中。
忘れられない、白い花の香り。
第七話「白い花の記憶」、どうぞ。
「……異端のお嬢様。」
その声は、風が止んだかのように、空気を切り裂いて届いた。
振り向くと、そこに立っていたのは――
第六位、“紅の断罪者”ルディ・スカーレット。
真紅の制服に身を包み、整った顔立ちは凛としていた。
けれど、その瞳には氷のような無表情が浮かんでいた。
「お前に会いに来たわけじゃない。ただの“忠告”だ。」
彼の声には、怒気も嘲りもなかった。
ただ、淡々と事実を告げるような冷たさがあった。
「“蒼氷の王”はまだ動いていない。……今のうちに、立場を自覚しておくんだな。」
“蒼氷の王”――
学園の頂点、第一位。
ヴィクトール・アズレウス。
彼の名前を聞いただけで、胸が強く締めつけられる。
「……わたしは、何もしていない。」
精一杯の声で返したつもりだった。
けれどそれは、自分自身に言い聞かせるようでもあった。
「何もしないことが、罪になることもある。」
そう呟いたルディは、視線を隣の少女に移す。
「そちらの転校生も、よく考えるといい。“誰といるか”で人生は決まる。」
その瞬間だった。
エリカが、すっと私の前に出た。
「それでも……私は、この方のそばにいたいと思います。」
震える声。でも、確かな意志。
その背中を見て、私は――思い出した気がした。
昔、誰かを庇って、扉を押さえていたあの日の記憶。
涙を浮かべて、「行って」と叫んだ、小さな自分。
それと重なる、エリカの背中。
ルディはそのやり取りを見て、ため息をひとつついた。
「……勝手にしろ。
ただし、“裁きの火”は、遠慮なく降りかかる。」
そう言い残し、彼は踵を返した。
その背中は、まるで断罪の象徴のように、沈黙と共に遠ざかっていった。
***
静かになった中庭。
ルメリアが少し離れて立ち、何も言わずにこちらを見ていた。
私はベンチに座り、深く息をついた。
エリカが、そっと白い花を差し出してくれた。
「……この花、好きなんです。なんとなく、懐かしい感じがして。」
花を見た瞬間、胸の奥がまた強く締めつけられる。
「……あなたが昔、これを持っていたような気がする。」
「え……?」
「ううん、きっと勘違い。でも……不思議なの。」
風が吹いた。
白い花の香りが、そっと頬に触れる。
それはまるで、忘れていた“何か”に手を伸ばすような、柔らかな痛みだった。
――――――――――
アメリアの記憶が、少しずつ形になってゆく。
そして“かつての約束”が、エリカの胸にも波紋を広げていく――
裁かれる者と、守られる者の境界が、静かに揺れはじめる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
第七話では、“紅の断罪者”ルディが登場し、
アメリアの記憶と感情に揺さぶりを与えるエピソードとなりました。
エリカとアメリアの記憶が交差し始める中、
少しずつ過去の真実がその輪郭を現していきます。
※本作はAIの助言や文章補助を受けながら執筆しています。
人とAIが共に紡ぐ物語を、今後も楽しんでいただけたら嬉しいです!