第六話──記憶の輪郭、心がなぞる
少しずつ、近づいていく心。
春の風に揺れる白い花、どこかで嗅いだ香り。
それは、記憶の底に沈んでいた“あの日”の断片を、優しくなぞるように。
そして、紅の断罪者が動き始める――
第六話「記憶の輪郭、心がなぞる」
本編、どうぞ。
昼休み、私はルメリアに誘われて、学園の中庭へ出た。
桜に似た白い花が、春の光を浴びて淡く揺れている。
花の香りが風に乗って流れてきた。
「この香り……どこかで……」
不意に胸が締めつけられた。
どこか懐かしい。けれど、それがいつ、どこで、誰といた記憶なのかが思い出せない。
「お嬢様?」
「……なんでもない。ちょっと、昔のことを思い出しただけ。」
「昔のこと、ですか。」
ルメリアはそれ以上何も聞かず、少しだけ微笑んだ。
そんな私たちのそばに、ふいに声が届いた。
「……ここにいらしたんですね。」
振り向くと、そこにはエリカがいた。
「ひとりで食堂にいるのも寂しくて……ご一緒しても、いいですか?」
「もちろん。ね、ルメリア?」
「ええ。歓迎します。」
三人で並んでベンチに腰かける。
春の風が髪を揺らし、花びらがエリカの肩にひとひら落ちた。
その姿を見て、私はまた胸の奥がざわついた。
その時だった。
「……エリカ様は、どんな花が好きですか?」
私の問いに、彼女は少し考えてから、こう言った。
「……白い小さな花。名前は知らないけど、昔、よく夢に出てきていました。」
その言葉が、私の胸にずしりと落ちる。
「私も、それ……夢で見たことがある気がする。」
ふたりの間に、言葉にならない“記憶”がふわりと漂った。
それを壊すように、冷たい声が響いた。
「……随分と仲良くなってきたじゃないか、“異端のお嬢様”。」
その声に振り向くと、そこには――
称号持ちの一人、「紅の断罪者」ルディ・スカーレットが立っていた。
紅の瞳が、私とエリカを順に見据える。
「学園は遊び場じゃない。……そろそろ、理解すべき頃だろう?」
私は黙って、その瞳を見返した。
逃げる気はなかった。けれど、怖くなかったわけでもない。
そのとき、隣のエリカが、私の手をそっと握った。
震えるほど小さなその手が、でも確かに私の指を包んでいた。
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次回、「紅の断罪者」が牙を剥く。
エリカとお嬢様、その手を離さずにいられるのか――
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
お嬢様とエリカ、少しずつ記憶が重なり始めました。
けれどその手を繋ぐ間にも、称号持ちたちはただ黙って見ているわけではありません。
次回、紅の断罪者・ディアナが本格的に牙を剥きます。
※本作はAIの助言や文章補助を受けながら執筆しています。
人とAIが共に紡ぐ物語の形を、今後も楽しんでいただければ嬉しいです。