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1章ーー非日常

小説を書き始めて初の作品になります

アドバイス等いただければ幸いです

ーージリリリリリリリ



騒雑な音が鳴り響く

冷や水を浴びせるようなこの音色に私の意識は覚醒した

彷徨う手を伸ばしつつ

冷たくて硬いものに触れる

騒音が止まる

重くのしかかる布と棉の塊を押し上げて

恐る恐る薄氷を履むかの如く右の指先を地面につけ

ベットを降りて軽く欠伸を一つ


「また今日が始まった」


それが私の第1声となった


コンコンコンその瞬間部屋をノックする音が聞こえる


「茜朝ご飯ここにおいておくからさっさと食べてしまって」


母の声だ


「はーい」


そう元気に返事をし

おぼつかない足で階段を駆け降りる



そして寒さを伝える木の板に腰をかけ、落ち着いた雰囲気で料理を胃袋へと収めていく

相変わらず味が薄い

いつからか母の料理は薄味になってしまった

いつのことかは覚えてないがそう遠くない日からだったと思う

これでは調味料なんて買ってくる意味がないのではないだろうか?


「お母さんやっぱり味水臭いよー」


そう大声で叫ぶ


「あんたが辛食いなだけよ」


そう帰ってきた返事に首を傾け食事を続ける

今日はベーコンエッグとパン、サラダそしてミルクだった


「ごちそうさまでした」


皿を重ねて落とさないようにシンクまで運び込み

水を注ぎ込む

悴んだ手にはきついものがある

また伸びをする


「準備するかぁ」


そう独り言を呟き階段を上がっていく

今度は意識がはっきりとしていることもあり安定した歩き方だ

しっかりと1歩ずつ踏み締めるように歩みを進めていく


私は今年で大学受験を迎えるということもあり

土曜の今日もこれから学校がある

まだ眠気が残るような様でゆっくり制服の長袖へと腕を通す


「行ってきまーす」


そう大声で叫び

ざわざわと騒音を立てる人たちを掻い潜り歩みを進め改札を潜る



電車に乗り安堵のため息を一つ

それと同時に鈴のような甲高い音が鳴り響き

体に大きな衝撃を受け、慣性が働きだす

そのあとはもう一度改札をくぐり淡々と歩みを進めた



今日の学校はいつもより騒然としていた

少し寒いからだろうか澄んだ声が凛とよく響き頭の中を刺激する

痛みすら感じるようだった

周りを圧迫するかのごときこのむさ苦しさの中

ため息をひとつ

そして自身の席へと向かった



私は窓の外へと思いを馳せていた

何もない、いつも通りの景色だ

何千回と見たそんな景色だ

乾き切った薄情なグラウンド、

向かいに佇む蔦に侵食…グリーンカーテンを纏った校舎

そして誰もいない忘れ去られた教室…

だが今回は目を惹かれるものがあった

朝空の果てに微かではあるが光が差し込んでいた

いや光がというと語弊があるだろう

薄陽だ

それが我が物顔で佇んでいる

邪魔だと言わんばかりの不機嫌な羊雲の間に

微かではあるが確かにはっきりと佇んでいる



そこで幻想の終わりを告げる邪魔が入った

あんなにがやがやとしていた生徒たちは一斉に定められた場所へと戻っていく

木と鉄による演奏のあと静寂が訪れた


「起立 礼!」


そんな掛け声を横に聞き

溶けるようにして席についた


終わりを告げる鐘が鳴った

乱雑に鞄へと紙の束を投げ捨てて

ひったくるようにして背負い込み

鉄の敷居を跨いだ


空が泣いていた

居場所を奪われた雲たちが癇癪を起こしたようだった

歩みを進めながら持ってきていた折り畳み傘の袋を剥ぎ取る

それをポケットへと突っ込んで留め具を外してボタンを押した

バサっという音と共にポリエステルが円を描く

それを頭上にかざして早まる足を諌めつつぴしゃぴしゃと歩みを進めた



「ただいまー」


家に着いた時誰にいうでもなく声を発す

慣れた手つきで踵を外し

自身の歩いた後を光らせつつバスルームへと歩みを進める


「濡れたなぁ」


そう呟き痛みを訴える手をよそに蛇口を回す

外にいるかのような雫が注がれる

違いと言えば水の温度くらいだろうか

濡れた布の塊を一斉に鉄の缶へと放り込み

猫が水を舐めるように片足で水面を突きつつ水の中へと沈み込む

凍りついた体が溶けるようだった


「ふぅ」


ため息混じりの声が口をつき現実から幻想へと押し上げる

目を瞑れば朝見た光が思い出される


「私とは違う」


あの光を見てそう感じた

雲を押し分けるかの如く佇む様にはなぜか忌避感があった

他者を蔑ろにしてるそう感じた

でもそれよりも確かな自己の確立それを強く感じ取った

なんだか自分とはかけ離れ最も遠い場所にあるかの如く感じたのだ

包み込むのではなく突き放すような

手を差し伸べるのではなく引っ張るような

自分で立つことを強要するような

そんな感覚だった

きっとあの太陽は何もかもを白日の元に晒したとしても何も変わらないのだろう

それどころか己こそを進んで白日の元へと晒すのだろう



つい考えすぎてしまった

体は火照り熱を上げている

熱いなー

そう感じながら体を冷ますように脱衣所へと進んだ



疲れていたのだろうか

気づけば針は重力に負け項垂れていた

体を沈め込むウレタンに抵抗し体を持ち上げ

ガラスに乗るかの如く足をつける



もうすぐ夕食の時間だ

「やばっ」

そう言いながら未記入の宿題に手をつける

log2-10=………

少しやったところでドアを叩く音が聞こえる


「はーい」


そう返事して卓に着く

父は今日は外で食べてくるらしい

食卓の上には私と母の二人分が用意されている

今日の晩御飯はカレーだった


「うーん」


一口食べてそう唸る


「おいしくない…?」


母がそう尋ねるがやはりおいしくない

というか味がしない

まるで水を飲んでいるようだ

だが


「いやおいしいよ。ちょっと味は薄いけど」


そう返した


「やっぱりあんた辛食いね」


そんないつも通りの返答があった

陶磁器と鉄の擦れる音も終わり

水を張った皿をスポンジで皿を擦る

空はまだ泣いている

かすかにキッチンの窓から月が見えた

欠けたやや丸みを帯びた月だ

明日は満月かな?

そんなことを呟きながら片付けを進めていく



部屋に戻って残っていた課題を進める

f(x)=2x^3+x^2-2

f‘(x)=6x^2+2x……

「ふぅ」

貼った糸が力なく落ちるように大きなため息をひとつ

そのまま数歩歩いてベッドに倒れ込んだ

ベッドの上には大きな1mサイズのサメのぬいぐるみがひとつ眠っている

それの手を掴んで手繰り寄せ足を絡めて抱きしめる

お日様の匂いがかすかにする

目を瞑る

思い浮かぶのは月だった

私みたいなかけた月

周りに暗くいることを強要され

そんな中光ること強要される

どれだけ望んでも変われっこないそんな月

でも私は月にはなれない

周りを優しく照らし込み

公平さをうつしだす

泣きじゃくる雲たちを優しく包むそんな月

月は安堵をくれる

優しく包み込んでくれるから

誰もを公平に照らすから

公平さを体現し結局誰も見ていないから………


今回は1章非日常というタイトルでした

次回2章は日常です

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