8-8 ウォーザード伯爵の欲望。
その日の夜、ルークはウォーザード伯爵の城に招かれることになった。
強制的にである。
そして、フェイドは、伯爵に事の次第を全て話した。
伯爵はそれを聞いた上で、大笑いしたという。
ここまでは、ルークが聞いた話にすぎない。
そして、今、応接室に招かれたのだ。
無論、フェイドもいる。
伯爵は、一人の少女と一緒に応接室に現れた。
少女は人形のようにかわいらしい表情だった。
「久しいな、ルーク。
魔導士合格、おめでとう。」
「ありがとうございます、伯爵様。」
「ますます強くなっているようで、結構なことだ。
あぁ、紹介しよう、娘のリリアーナだ。」
そこで、リリアーナはぺこりとお辞儀をする。
「リリアーナと申します。
よろしくお願い致します。」
率直な感想だが、伯爵には似ていなかった。
だが、その感想は、心の中にしまっておくことにした。
「リリアーナよ、彼はルークだ。
よくよく覚えておくといい。
将来、お前の婿になるかもしれない男だ。」
この発言に、ルークは焦るより他なかった。
何故、この展開になるのかわからなかった。
レイヴンの時もそうだったのだ。
リリアーナはというと、ルークに興味があるようだ。
じっと見ていた。
「さて、ルークよ。
おまえは欲張りのようだな。
まさか残り三系統の上級魔法までも修めようとは。
まったくもって、おもしろい。」
そう言って、伯爵は笑い出す。
「その、同じようなことを、クロムワルツ侯爵様にも言われたことがあります。
その、欲張りかどうかはともかくですが。」
「ほう、侯爵殿が。
どうやら、侯爵殿も興味を示しているようだな。」
伯爵は、侯爵のことを知っているようだ。
にやにや笑みを浮かべている。
「して、水系統の上級魔法をマスターしたのであろう。
いつ、試験を受けるのだ?」
「はい、早ければ、春ごろには受けようと思ってます。」
「そうか。
それにしても、近衛師団からも勧誘があったとは。
やはり、私の睨んだ通りであったな。」
伯爵はやはりおもしろそうだ。
それに対して、フェイドは面白くなさそうだった。
「くそっ、俺だけ置いてけぼり感を食らっている感じだぜ。」
「フェイド様は、魔導士になる目標があるではないですか?
それに、伯爵様を継ぐという重要な役目もありますし。」
「それはわかっている。
だが、おまえが遠くに行くようで、なんか納得行かないっていうか。」
フェイドにも不機嫌な理由がわかっていないようだ。
「フェイドよ、焦ることはない。
ルークは遠くに行くことはない。
それどころか、より我々に近い存在となる可能性がある。」
「どういう意味だ、父上?」
「良く考えてみろ。
例えば近衛師団に入った場合、貴族と同等の扱いとなる。
となれば、我らと同じ立場となる。
王都にいるかいないかの違いだ。
立場上、全く同じなのだ。」
伯爵は一息つくと、言葉を続ける。
「そして、四系統をマスターし、“大魔道士”となった場合は、
彼は問答無用で皇帝陛下に仕えることになる。
“大魔道士”は国の宝だ。
王都で、貴族同然の生活をすることになる。
どう転がっても、我らに近づくだけであって、遠くに行くことにはならん。」
「たしかに・・・」
フェイドは納得したようだ。
「まぁ、多少立場の違いが発生するかもしれんが、
ルークという人間を見ていればよくわかるだろう。
彼は、どんなに偉くなっても心変わりせんよ。
それどころか、彼が貴族同然になった時のほうが、おもしろいと私は思うよ。」
伯爵は楽しそうに語る。
ちなみにルークは話半分で、心ここにあらず状態だった。
なんだか、凄い話になってきたので、逃避気味だったのだ。
「で、フェイドよ。
どう転がっても「いいとこどり」のルークを放っておくわけにもいくまい。
ということで、私は決めたのだ。
リリアーナをルークの嫁に出すとな。」
ルークは固まった。
「なるほどな。
そりゃいい手だ。
親族に皇帝に近い人物がいれば、伯爵家は安泰ってわけか?」
「それもあるが、政治的に影響力も持てる。
それに、うまくいけば、爵位が上がる可能性もある。」
「父上の欲望だらけじゃないか?」
「ふっ、欲望なくば貴族などやってはおれんよ。」
伯爵とフェイドの会話に、ルークはついていけなくなっていた。
ちなみに、リリアーナは伯爵とフェイドの話の内容は理解していなかった。
だから、ずっと、ルークの一挙手一等足を見ていたのだ。
そして、にこにこ笑っているのだった。
どうやら、ルークの顔がころころ変わるのがおもしろかったようだ。
こうして、夜も更けていくのであった。




