7-9 会話のみの再会。
ルークは魔導士協会を出ると、まっすぐにミルドベルゼ子爵の屋敷に向かうことにした。
魔導士試験の合格を知らせるためである。
お世話になった以上、お知らせすべきと考えていたのである。
特に急ぐ必要はなかったので、いつもの歩調で歩いていた時、突然声をかけられる。
「ルーク様、聞こえてますか?」
その声は聴いたことがある。
ルークは振り返るも、誰もいない。
いや、それどころか周囲には誰もいなかったのだ。
聞き間違いかと思った瞬間、さらに声が聞こえたのだ。
「私は、あなたのそばにおりませんわ。
“思念連結”にて、話かけてますから。」
聞いたことがある魔法だ。
魔力を持つ者同士が、思念で通話する魔法だったはずだ。
となると、どこかから繋いでいることになる。
「僕に何か用ですか?
レヴィさん。」
ルークは口に出さず、思念で語り掛ける。
そう、声の主は、レヴィという名の女性だったのだ。
「あら、覚えていてくださったのですね、うれしいですわ。
ルーク様、少しお話ししてもよろしくて?」
「はい、用件を聞かせて頂ければ。」
思念での会話は初めてなので、ルークはまだ慣れていない。
だが、声に出さずに、会話するよう心がける。
「まずは、魔導士試験、合格おめでとうございます。
これで、晴れて魔導士を名乗れますね。」
「ありがとうございます。
どうして知っているんですか?」
「うふふ、それは秘密です。
そこで、ルーク様に提案があります。
聞いて頂けますか?」
「聞くだけでしたら・・・」
ルークは嫌な予感がした。
「ルーク様にとって悪い話ではありませんよ。
ルーク様、近衛師団へ入るつもりはありませんか?」
やっぱり嫌な予感だったとルークは思った。
しかも直々に勧誘に来たのだ。
「あの、その前に、どうして僕に勧誘を?
僕はまだ魔導士になったばかりですし、大したことは・・・」
「そんなことはありませんよ。
私、諜報任務が得意でして、ルーク様のことを調べ上げましたの。
そうしたら、色々わかったことがあるんです。
例えば、山賊をたった一人で、誘い出すために体を張る度胸。
戦争において、自分の部隊をうまく使いこなし、敵将軍の首を獲る勇猛さ。
そして、一流と呼ばれる剣士たちと互角に渡り合える剣の腕前。
極めつけは、火系統の上級魔法の中で、難解な魔法を使いこなす技量。
どれをとっても、比べる者がないくらい優れた方と判断したのです。」
どうやら、きっちり調べ上げたようである。
しかも、上級魔法全てを使いこなしたことまで知っているのだ。
レヴィの情報収集能力に、ルークは冷や汗が止まらない思いだった。
「よくご存じですね。
でも、僕より優れている方はたくさんいるかと・・・」
ルークは反論しかけるも、レヴィに遮られる。
「そんなことはありません。
あなたほど優れた方は、今やこの国にはいないでしょう。
あなたは魔法騎士の真似事までやってのけました。
それが証拠ですよ、ルーク様。」
ルークは、何も言えなくなってしまった。
ホントに何でも知っているようだ。
どこで情報収集しているんだろうと、本気で思ったくらいだ。
もしかして、自宅で練習している内容も見られているのかもしれないと思ったくらいだ。
「そのうち、私の上司が、あなたを勧誘に現れるでしょう。
それまで、よく考えておいてくださいね、ルーク様。
それでは、ごきげんよう・・・」
そこで、“思念連結”は解除される。
どうやら、勧誘がそのうちやってくるようだ。
ルークは困った表情で、どうしたらいいものか考えるのだった。
しかし、答えが出るわけではない。
ルークはそう割り切ると、ミルドベルゼ子爵の屋敷に向かうのだった。




