7-8 就職先は?
「さて、次に就職の斡旋のお話です。
基本、魔導士になった方には就職してもらう決まりがあります。
これはあくまで国家貢献のためとご理解ください。
一応、選択肢として、以下が挙げられます。
この魔導士協会の職員になること。
それから、各貴族専属の魔導士となること。
そして、貴族や一般人の魔法の家庭教師になることです。
いかがでしょう?
ご希望はありますか?」
ここで、ルークは困ってしまう。
そして、質問を行う。
「あの、もう少し魔法の修行を続けるというのはありですか?
実は、まだ、就職というのは考えていなくて。」
「と申しますと?」
「自分は、他系統の上級魔法を会得しようと考えています。
そちらに集中したいので、就職はまだ控えたいと考えているんです。」
「えっ?
他系統の上級魔法も勉強されるのですか?」
これには、魔導士が驚きの表情を浮かべる。
普通、魔導士になった者は就職することが多い。
単純に食い扶持を得るためだ。
それに魔導士の数は少ない。
だからこそ、その価値は高かったのだ。
魔導士を求めている貴族は山ほどいるのだ。
「しかし、ルーク殿は火系統を極められた稀な魔導士と伺っております。
おそらく各貴族は、
あなたのような優秀な魔導士を雇いたいとおっしゃるでしょう。
それでも、修行を優先なさると?」
「はい、できれば、修行を優先したいです。
四系統の上級魔法をマスターしたら、就職しようと考えています。」
「えぇぇっ、四系統!?」
これには、魔導士は思わず叫んでいた。
「あ、あの、四系統ですか?
前代未聞の四系統に挑戦なさるんですか?」
「はい、ダメでしょうか?」
ルークは困った顔で頬をかいていた。
驚かれるのには慣れていないのだ。
「いえ、ダメではありませんが・・・
その、上司と相談してもよろしいでしょうか?」
「はい。」
魔導士はそう言うと、走り去っていくのだった。
10分ほど経過した後、魔導士はルードベルゼンを引き連れて戻ってきたのだ。
ルードベルゼンはルークの前に座ると、言葉を発する。
「彼から聞いたのだが、ルーク殿、
君は四系統の上級魔法をマスターすると言ったと聞いたのだが、事実かね?」
「はい、挑戦してみようと思っています。」
その言葉に、ルードベルゼンは目を見開く。
この少年はとんでもないことに挑戦しようとしている。
もし、マスターしたなら、間違いなく、名実ともに“大魔道士”となる。
自分の目に狂いはなかったと確認できたのだ。
「ルーク殿。
もし、四系統をマスターした場合、皇帝陛下に仕える気はないかね?」
「えっ?
皇帝陛下ですか?」
「そうだ。
四系統の上級魔法を極めた者は未だ存在しない。
もし君が極めた場合、私は、君を皇帝陛下に推挙するつもりだ。
まだ先のことかもしれないが、そのことをよく考えておいて欲しい。」
「あ、その、就職先がなければ、お願いします。」
ルークは困った表情のままだった。
ここでも、皇帝陛下の名前が出たので、どう反応していいかわからなかったからだ。
「もう一つ、質問いいかな?」
ルードベルゼンは気になっていることが一つあった。
「はい、なんでしょうか?」
「君は剣を佩いている。
剣の腕前はどの程度なのだ?
簡単で構わん、どこかの騎士団の者と手合わせしたことがあるとか、
その程度で構わない。」
ルークは正直に言うべきか迷ったが、言うことにした。
「その、2名の方と互角の腕前があると評されています。
1人は、クーラク騎士団のカシス副隊長殿。
もう1人は、ウォーザード伯爵の御子息、フェイド様です。」
ルードベルゼンはウォーザード伯爵の名は知っていた。
後で、カシスとフェイドについて調べるつもりだった。
「つまり、騎士と互角以上の戦いができるということかね?」
「はい。
カシスさんは、クーラク騎士団で一番の使い手って聞いてます。
フェイド様は、そのカシスさんと互角に戦っていますので、
僕を含めると皆互角かと思います。」
ルードベルゼンは驚いていた。
クーラク騎士団のことは知らないが、一番の使い手と互角と言ったのだ。
間違いなくば、ルークはかなりの剣の使い手ということになる。
ともかく、あとで情報収集することで、判明するだろう。
「わかった。
ありがとう、ルーク殿。」
ルードベルゼンは考えた。
今の彼ならば、間違いなく、皇帝陛下直属の近衛師団に入るだけの実力があると。
そこに推挙すべきか、迷うところであった。
既にルークのことは、皇帝陛下の耳に入っている。
だが、ルークが四系統を極めた上で、再度推挙しても問題はないかもしれない。
それが、できれば近いうちになればよいが、と希望を抱くのだった。
結局、ルークの就職の話は無しということになった。
ルークはほっとしたのだが、四系統をマスターした後のことのほうがちょっと怖かった。
就職については、あとでゆっくり考えよう、ルークはそう思うのだった。




