6-8 呼び出し。①
結婚式翌日。
午前中のうちに、ほとんどの貴族は帰宅していた。
残っているのはごくわずかな貴族たちのみだ。
ルークはというと、午前中は部屋にこもって本を読んでいた。
お昼過ぎになって、ドアがノックされる。
「はい?」
ドアを開くと、ポールが立っていた。
「ルーク様、子爵様がお呼びです。」
「わかりました、執務室でしょうか?」
「いえ、応接室の方に来てほしいとのことです。」
執務室ではないことに、ルークは疑問を覚えた。
となると、他の貴族の方と会見中なのだろうか?
ルークは応接室に向かうことにした。
そして、応接室へ入ると、そこには見知った顔があった。
クロムワルツ侯爵本人がいたのであった。
ルークが座ると、侯爵は笑みを浮かべる。
「ルーク、昨日は楽しかったよ。
色々聞かせてくれてありがとう。」
侯爵はルークに礼を述べる。
「・・・どうりで、父上は親族席にいなかったのですな。」
レイヴンは呆れている表情だ。
ちなみに、サーシャとミレーナの二人も同席していた。
ミレーナに関しては、昨日のことがあったのか、おとなしい。
「あぁ、すまなかったね。
どうしても、ルークと話してみたくなったのだよ。」
「して、ルークはいかがでしたか?」
レイヴンの質問に、侯爵は笑みを浮かべる。
「とても面白い人物だ。
やけに正直者だし、いい子だと思っていた。
ところがだ、あの舞踏会の見事な踊りを見せられて、
ルークは只者ではないと思ったよ。」
その言葉に、ミレーナの顔が真っ赤に染まる。
どうやら侯爵も見ていたらしい。
「あら、そんなことでしたら、私も踊ってもらうべきでしたね。」
サーシャは残念そうな顔をする。
ルークは困った表情だ。
「今度踊ってもらうといい。
ルークは筋がいい。
うまくリードしてくれるだろう。」
レイヴンは愉快そうに笑う。
どうやら、ちらっとミレーナの顔を見たようだ。
侯爵はルークを見やると、言葉を口にする。
「ところで、ルークよ。
君はやけにいろんなことに首を突っ込んでいるようだな。
例えば、神父誘拐救出、戦争、レイヴン暗殺未遂、
ウォーザード伯爵の息子の件など。
君はどの場面においても、大活躍している。
それは何故だい?」
侯爵は耳が早いようだ。
これまで起きたルークが関わった出来事を知っているようだ。
ただ、活躍している理由を問われ、ルークは困るしかなかった。
「活躍と言われましても。
僕は、ただ、皆を助けるために行動しただけで、大したことは・・・」
「いや、ルークはわかっていないな。
君は既に、多くの者に影響を与えているんだぜ?
その結果、君は今注目の的になっている。」
レイヴンに言われ、ルークは更に困る。
「そうだな。
これだけ起きた事件に、君は関与している。
君は、それを見事に解決していった。
そして多くの者を救っている。
それは紛れもない事実だ。」
侯爵の言葉には力があった。
そして、それは全てを見抜いているようだった。
「君はこれから何を目指す?」
その短い問いに、ルークは考えた後、答える。
「僕は、とりあえず魔導士を目指します。
僕の力でみんなを助けることが出来れば、助けたいと思います。
その、そんなに大した力ではないんですけど。」
その答えに、侯爵は笑みを浮かべる。
「そうか、それが君の答えか。
いい答えだ。
やはり若者はこうでなくてはならん。」
侯爵はとても嬉しそうだった。
「それにしてもだ。
レイヴン殿から聞いた話が誠ならば、
皇帝陛下に教えるべき案件と思うがいかがかな?」
その言葉に、ルークは固まる。
「もし、教えてしまえば、ルークが困るでしょう。
私は、まだ黙っているつもりですよ。
ですが、皇帝陛下も耳が早いと聞いています。
もしかしたら、既にご存知かもしれません。」
「そうだな。
その時は、ルークが皇帝近衛の騎士として
姿を現すことになるかもしれませんな。
うむ、楽しみといえば、楽しみだ。」
レイヴンと侯爵は笑っていたが、ルークは笑えなかった。
なんか、人生が無理やり決まっているかのような気分だったのだ。
「その時は、ミレーナを嫁に出すつもりです。
いいな、ミレーナ。」
レイヴンの一言に、今度はミレーナが固まる。
「そうだな。
皇帝直属の近衛師団に入り近衛騎士となれば、貴族同然。
皇帝に近しい者として歓迎されるであろうからな。」
侯爵は愉快そうだった。
ルークは、もはや収拾が付けられないこの状況に、頭を痛くするのだった。




