6-3 花嫁さんとの出会い。
結婚式まで、残り一週間となった。
礼服は完成し、着心地もよかった。
テーブルマナーや貴族の習いも覚え、あとは実演あるのみだった。
ちなみに、ダンスも覚えた。
メイドに教えてもらったのだが、結構足を踏んでしまい、謝り倒していたくらいだ。
そこそこ様になっただろうと思ったところで、教育は完了したのだった。
この一週間は、ゆるりと過ごすことが許された。
最初は、レイヴンの護衛を買って出ようと思ったのだが、あっさり断られた。
お客にそんなことはさせられないと言われてしまったのだ。
ということで、自室にこもることになったのだが、自室には本がたくさんあったのだ。
暇だし読んでみようということで、机を借りて読みふけることにしたのだった。
昼過ぎになった時、ドアがノックされる。
ドアを開けると、ポールが立っていた。
「ポールさん、どうしたんですか?」
「はい、お嬢様がお呼びです。」
ミレーナから呼び出しがあったようだ。
ポールに付き従い、応接室へ移動することになった。
応接室に入ると、ミレーナと見知らぬ女性が1人、ソファに座っていた。
「あっ、ルーク。」
ミレーナが立ち上がる。
「お久しぶりです、ミレーナ様。」
「様付けは今は不要よ。」
何故か注意される。
いや、知らない女性がいるから配慮したのだが・・・と言いたかった。
「とにかく、座って。
紹介したい人がいるの。」
ルークはミレーナの対面の位置に座ると、ミレーナの隣の女性を見やる。
目が細く、おとなしめな表情をした女性である。
「この人は、サーシャ=クロムワルツっていうの。
レイヴン兄さんのお嫁さんよ。」
「サーシャと申します。
はじめまして、ルーク。」
この人がレイヴン様のお嫁さんか、とルークは驚いていた。
しかし、結婚式前なのに、既にここで暮らしているとは。
「はじめまして、ルークと申します。
その、レイヴン様にはいつもお世話になっております。」
「逆でしょ。
レイヴン兄さんの命を二度も助けたくせに。」
何故か、ミレーナに突っ込みを受ける。
そこで、サーシャが口を開く。
「お話は、ミレーナから伺っています。
とても、腕の立つ剣士と。
また、魔法もお得意であるとか。」
「はぁ、まぁ、そうですね。」
ルークは返答に困った。
ミレーナがどう説明しているのか、そこが気になったのだ。
「もしかして、ルークは子爵家に仕えることになったのですか?」
サーシャの質問に、慌ててルークは否定する。
「あ、いえ、今回は結婚式に呼ばれただけなんです。
その、仕えるだなんてとんでもないです。」
「そうなんですか?
では、週末の結婚式に参加いただけるのですね?
とても盛大なものになると、レイヴン様がおっしゃっておりました。
楽しみにしていてくださいね。」
「あ、はい。」
ルークは、結婚式に参加したことはないし、見たこともない。
だから想像がつかないのだが、楽しみにしていてもいいのかもしれない。
「ところでルーク、テーブルマナーとか完璧になったの?」
ミレーナが横やりを入れる形で質問する。
「うん、なんとか覚えたよ。
最初はとても難しいと思っていたんだけど、なんとか慣れていったんだ。」
「そう、それはよかったわね。
レイヴン兄さん、ルークを誘うって言った時、私が注意しておいたんだから。
感謝しなさいよ。」
「あっ、うん、ありがとう。」
どうやらマナー系を指摘したのはミレーナのようだ。
ここは感謝しなくてはならないだろう。
「それよりも、ルークは普段どのようなことをなさっていらっしゃるんですか?」
サーシャの質問にルークが困る。
「僕は魔導士を目指して、勉強している最中です。
ペゾスという小さな村で修行中でして。」
「まぁ、魔導士ですか?
ということは、お一人で修行を?」
「はい。」
「そっか、あれから師匠は見つかっていないのね。」
ミレーナの言葉に、ルークはうなずく。
「相変わらず、一人で魔術書を読みながら勉強しているよ。」
「それで、中級の全系統を使えるようになったんでしょ?
やっぱ、どう考えてもずるいわよ。」
昔の話を蒸し返され、ルークは困った。
「え?全系統ですか?」
サーシャが驚く。
「そうなんですよ、サーシャ姉さま。
ルークは、全系統の魔法が使えるんですよ。
それに回復魔法まで。
そして、剣も一流って、ズル過ぎません?」
ルークは更に困るだけである。
サーシャはそれを聞いて驚いていた。
「まぁ、魔法のみならず、剣まで腕が立つなんて。
まるで、皇帝直属の近衛師団に仕えている方々と一緒ではありませんか?」
「皇帝直属の近衛師団?」
ミレーナは疑問符を浮かべ、サーシャを見る。
ルークは最近聞いたことがある単語にびっくりする。
「はい、皇帝直属の近衛師団は、
剣技と魔法が一流の者ばかりが揃っていると聞きます。
中には、魔導士の称号を持つ者もいるとか。
ルークもその一員ではないのですか?」
「えっ、そうなの!?」
ルークは二人の質問に、慌てて否定する。
「いえいえ、ただの魔法使いですよ。
そんな大それたところに所属なんてしていませんよ。」
「まぁ、ルークが嘘をつくなんてことはないか。
でも、そういった組織から、スカウトが来たりして?」
「いや、そういうのも今のところないし、
今後もないと願ってるんだけど・・・」
ルークにとって、近衛師団とかは、本当に飛躍した話にすぎないのだ。
今の自分とは遥かに縁遠い話である。
ありえないのだ。
「とにかく、そういった話はやめません?
僕は全然、普通の魔法使いなんですから・・・」
ルークは話題を変えようと試みた。
「そういう『普通』が怪しいのよね・・・」
ミレーナにじと目で睨まれる始末だった。
結局、ルークが困る質問ばかりが続くのであった。




