5-10 約束。②
翌日。
全員応接室に集まっていた。
なお、フェイドも同席している。
伯爵は、小さい袋をカシスとルークの前に置く。
「これは、フェイドを連れ戻した褒美だ。
受け取ってくれ。」
「はい、ありがたく頂きます。」
カシスは頭を下げ、袋を受け取る。
ルークもカシスに倣った。
「あの、一つ、質問してもいいですか?」
ここで、ルークがフェイドに対して声をかける。
「ん?なんだ?」
「どうして、騎士になりたかったんですか?」
「なんだ、そんなことか。
昔聞いた話なんだが、とても強い騎士がいたことを聞いたんだ。
まだ生きてるらしいんだが、誰のことかは知らない。
ただ、たった1人で、15人の手練れの騎士を斬り捨て、
将軍の首を獲ったほどの勇猛さを誇ったと言われている。
俺も、その勇猛な騎士になりたくてな。
だから騎士を目指したんだ。」
「ほう、まるでルークだな。」
伯爵の言葉に、フェイドが驚く。
「なんだって!?
ルーク、おまえ、実は年寄りなのか!?」
ありえないことに、ルークは急いで首をプルプル横に振る。
「これ、そうではない。
人の話を最後まで聞け。」
伯爵が注意することで、フェイドが収まる。
「先の戦争にて、ルークが敵陣に乗り込み、
多くの騎士や戦士を斬り捨てたのだ。
そして、敵将軍の首を獲ったのだ。
まるで、昔のあやつを見てるようでな。」
「それは事実なのか?」
フェイドは食いつく。
「はい、事実です。
敵将軍の首は、伯爵様が確認されたと聞いてます。」
カシスが補足する。
「いや、あれは奇襲がうまくいっただけであって、
その、大したことではないですよ。」
ルークは謙遜するが、フェイドは驚いていた。
この目の前にいる少年が、昔話にあった勇猛な騎士と同じことを成し遂げたことに。
「しかし、待てよ。
ルークは魔法使いなんだよな?
なんで、剣技がそんなにうまいんだ?」
「それを言われると困るんですが・・・
フェイド様も、剣技が得意ではないですか?」
「俺は、魔法が苦手なんだよ。」
あっさりと、フェイドはそう告白した。
貴族なのに、魔法が苦手とは普通言わないのだが。
「確かに、ルークは魔法使いでありますが、私と同等の剣の技量があります。
無論、フェイド様とも同等かと思います。
それでいて剣と魔法を融合させる技まで身に着けている。
ある意味、我ら騎士にとっては脅威ですよ。」
カシスの言葉に、フェイドはうなずく。
「確かに、あれは反則だよな。
そもそも、なんであんな技、使えるんだ?」
「恐らくですが、魔法の理論を正確に理解しているとできると思います。
魔法を魔法と考えず、物質と融合させることで、
大幅な力を得ることができる。
そういう認識で、魔力を注いでみたんです。
そしたら、できたんです。」
フェイドはちんぷんかんぷんのようだ、苦々しい表情に変わる。
カシスは何となくわかったようだ。
伯爵は、納得するようにうなずくと、言葉を紡ぐ。
「なるほど、魔力と物質の融合化か。
やはり並みの魔法使いには真似できないことだな。
そう考えると、ルークは、
最も“大魔道士”に近いと言えるかもしれん。」
「“大魔道士”?」
ルークは聞いたことのない言葉だ。
「昔、おとぎ話に存在した、魔導士を超える存在か。
もしそうだとしたら、ルークは、将来この国を揺るがす存在に・・・
いや、それはないか。」
フェイドは思い直して、ふっと笑って見せる。
ルークもそんなことを言われて、ただびっくりするしかなかった。
自分がそんな存在になるわけがない、そう思っていたのだ。
「もし、そんな日が来たら、私はルークに娘を差し出すかもしれんな。」
唐突な伯爵の発言に、皆が驚く。
「父上、そりゃ、ルークに伯爵家を譲るってことか!?」
「そうではない。
例え話だが、“大魔道士”となればその者は国の宝になる。
ならば、是非とも我が家の一員として取り込みたくなるではないか。」
「そうなれば、俺が兄貴になるってことか・・・うーん。」
伯爵の言葉に、フェイドが真剣に考え始める。
ルークはおろおろするしかなかった。
なんだか話が飛躍しすぎていて、収拾がつかないのだ。
「さて、冗談はこの辺にしておこう。
カシス、ルーク、此度ご苦労であった。
ダーナス殿にもよろしく伝えてくれ。」
「「はっ!」」
カシスとルークは同時に返事していた。
そして、カシスとルークが立ち上がろうとした時、フェイドが声をかけたのだ。
「カシス、おまえとの決闘は決着がついてない。
俺はさらに剣の腕を磨く。
だからその時は、もう一度勝負してくれ。」
「もちろんです。
次は負けませんよ。」
カシスは大きくうなずく。
「それとルーク。
俺は魔法が苦手だが、魔導士を目指す。
お前も魔導士になれよ!」
「はい、僕も頑張って魔導士になります!」
その言葉に、フェイドはにやりと笑みを浮かべる。
「じゃ、また会おうぜ、2人とも!」
フェイドはこの2人と出会えたことに、心から感謝していたのだった。




