5-6 息子を連れ戻せ!
都市ラークネスは非常に大きな街だった。
王都ほどの広さはないが、それでも十分大きかったのだ。
門番のチェックを受けた後、都市内に入る。
カシスとルークは、まっすぐ城に向かっていた。
ここは、ウォーザード伯爵直轄地である。
城には、ウォーザード伯爵がいるのだ。
城に着くまでの間、ルークは回りの様子を観察していた。
食べ物屋に、市に、本屋もあった。
冬にもかかわらず、そこそこ賑やかだったのだ。
活気があるのだ。
後で散策してみたいなと、ルークは思うのだった。
城に到着すると、カシスが手続きをとる。
すると、すんなり通された。
メイドに応接室まで案内され、そこで待つことになった。
カシスとルークは外套を脱ぐと、ソファに座り、伯爵の到着を待つ。
やがて、ウォーザード伯爵本人が姿をみせたのだ。
相変わらず威圧のある人物である。
二人は立ち上がると、伯爵に一礼する。
伯爵は二人に座るように指示すると、自分も着席する。
着席と同時に、お茶が運ばれてくる。
お茶が配られると、話が始まる。
「この寒い中、済まないな。
わざわざ呼んだしまったことを謝罪しよう。」
「いえ、何か御用があって我らを呼んだのでしょう。
謝罪されるほどのことはありませんよ、閣下。」
「そう言ってもらえると助かるよ。
では、本題に入ろう。」
伯爵は一息つくと、言葉を続ける。
「私の馬鹿息子を、ここに連れ戻してほしい。」
「馬鹿息子?」
ルークが驚く。
自分の息子に馬鹿なんて言うものだろうかと疑問に思ったからだ。
「そうだ、馬鹿息子だ。
領主の息子のくせに、騎士になりたいなどとほざいたのだ。
そして、隣街のラークアの騎士団に入りおった。
そこで、お前たちに連れ戻して欲しいのだ。」
「我々がですか?」
カシスも驚いているようだが、口調に出さないようにしていた。
「あぁ、フェイドは実力主義者でな、剣術で負けたことが無い。
騎士としての才覚は間違いなくある。
だから、あやつを剣で負かして欲しいのだ。」
「それであれば、ラークネス騎士団の方でもよかったのではないでしょうか?
ラークネス騎士団は精強無比、優れた騎士も多いと聞きますが。」
そこで、伯爵はため息を吐く。
「最初そうするつもりだったよ。
ところが、私の息子と知った途端、皆遠慮したのだ。
騎士団長にも相談したのだがな、打つ手なしだったよ。」
「はぁ・・・」
カシスも困った表情をしていた。
「そこでだ。
剣の腕が立つと評判のカシスと、
そのカシスと互角を演じたルークを呼び寄せることにしたのだ。
お前たちは幸い、あやつと面識がない。
だから、徹底的に叩きのめして欲しいのだ。」
今、伯爵の息子と知ったんですが・・・というのは黙っていた方がいいのだろうか。
ルークは、ちょっと困るのだった。
「内容は理解致しました。
ところで、フェイド様はラークア騎士団に所属しているとのことですが、
ラークアの騎士団長はこのことをご存じで?」
カシスの質問に、伯爵は首肯する。
「無論知っている。
手紙を用意した。
おまえたちがフェイドに決闘を申し込むから、静観してほしいと書いてある。
これを渡せば、フェイドと決闘が可能となる。
頼めるか、二人とも?」
「承知致しました。
これより、フェイド様を連れ戻すため、行ってまいります。」
カシスは敬礼する。
ルークも慌てて追従する。
「頼むぞ、二人とも。
あの馬鹿をなんとしても連れ戻してくれ。」




