表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造系魔法使いのスローライフ!?  作者: 稀硫紫稀
第51章 ハイ・エルフ編・魔物退治!
525/526

51-6 世界樹(ユグドラシル)

ルークら一行は、森を抜けると、一旦停止した。

そして、騎士の一人が何かを唱え始めると、魔法陣が出現したのだ。


「あの、これは一体?」


「転移魔法陣です。

 動かず、そのままお待ちください。」


副隊長の騎士が説明してくれた。

ルークはうなずくと、すぐに判明する。

魔法陣が光った瞬間、ルークらはその場から姿を消すのだった。



気が付くと、巨大な一本の木が目の前に見えたのだ。


「これは、一体・・・!?」


こんな巨大な木を見たのは、初めてだった。

木の大きさは測り切れないほど、巨大であったのだ。

木の大きさはまさに、天を突く勢いであったのだ。

その木の麓には、お城と城下町が見えた。

どうやら、ここが、王都エーレ・ファのようだ。


「では、参りましょう。

 王城へ案内致します。」


副隊長の言葉に従い、ルークらは城へと向かうのだった。



城に向かう途中、ルークは城下町を観察する。

あまり人間世界と変化はなかった。

商人がいたり、警戒中の騎士がいたり。

一般平民も、耳が長い以外は、人間と変わりなかったのだ。

色々食べ物とか文化について聞きたいところだが、今立ち止まるわけにはいかない。

細かい部分は、我慢するしかなかった。

それにしても、活気がなかった。

そこだけが気になった。

皆、気持ちが沈んでいるような感じがしたのだ。

魔物騒動による影響だろうか?

ちなみに、ルークは人間である。

本来であれば、注目の的になってもおかしくないのだが、全く注目されていなかった。

それだけ、魔物の影響が大きい可能性がうかがえた。



ルークらは王城に到着すると、ムスターフ、副隊長、ルークの三人のみが登城することになった。

他の騎士は待機である。

受付に行くと、執事が待っていた。

執事もエルフ族のようだ。

ムスターフが口を開く。


「騎士隊長のムスターフである。

 皇王陛下にお目通り願いたい。

 例の魔法騎士を連れてきたとお伝え頂ければ良い。」


「承知しました。

 しばしお待ちください。」


執事は、城の中へと消える。

待つことしばし。

執事が戻ってきた。


「ムスターフ様、応接室にご案内いたします。

 では、こちらへ。」


「感謝する。

 では、行こう。」


ムスターフに従う形で、ルークもついていくのだった。



応接室に到着すると、誰もいなかった。

ルークは、ムスターフと共に、ソファに座る。

副隊長は、ムスターフの後ろに控える。

やがて、ドアが開き、一人のハイ・エルフの女性が入って来た。

ムスターフが立ち上がったので、ルークも従う。

そして、頭を下げる。

女性は、対面のソファに移動すると、座った。

それに合わせてムスターフも座ったので、ルークも従う。

そして、会話が始まる。


「イーリア様、先ほど“思念連結(コネクト)”でお知らせしたとおり、

 森を浄化した魔法騎士を連れて参りました。

 彼の名は、ルーク殿と言います。

 ルーニア皇国の魔法騎士だそうです。」


どうやら、先ほどの移動中に、“思念連結(コネクト)”で連絡済みだったようだ。

そして、目の前の女性こそが、この国の元首なのだ。


「うむ、ご苦労でした、ムスターフ殿。

 あなたが、ルーク殿ですね。

 私は、エーレ・ファ・レ皇国の皇王、イーリア=エーレ・ファ・レと申します。

 よろしくお願いしますね。」


物腰が柔らかいのだろうか、挨拶が丁寧だった。


「お初にお目にかかります。

 僕は、ルーニア皇国、皇帝陛下直属の騎士、魔法騎士のルークです。

 また、フェインブレイン家の公爵も務めております。」


「なるほど。

 人間からすると、かなり高位の階級に就いているのですね。

 では、仔細を聞きましょう。

 浄化魔法とは一体何でしょうか?」


イーリアは、本題に入る。


「浄化魔法というのは、人間が使う神聖魔法に含まれています。

 魔法名は、“崩滅陣(ホロウブレイク)”と言います。

 この魔法により、土や木にこびりついた魔力を浄化できます。

 ただし、この魔法は効果範囲が狭いため、広範囲に効果をもたらすため、

 “大規模展開術式”の補助魔法を併用します。

 それにより、浄化範囲を拡大させることが可能です。」


「なるほど。

 理解しました。

 問題として、浄化魔法は誰にでも使えるものですか?」


イーリアにとって、これが一番の問題だった。

もし、誰にも使えないとなると、魔物は一生倒せないことを意味する。

そこが最も懸念すべき点であったのだ。


「うーん、判断が難しいところですね。

 理由を申しますと、神聖魔法は、精霊魔法とは仕組みが異なります。

 よって、魔導士クラスの実力があっても、

 理解できる方とできない方に分かれると思います。

 回復魔法を使われる方なら、理解できるかもしれません。」


「そうですか。

 精霊魔法の使い手は多いですが、そう簡単には行かないのですね。

 回復魔法が使える者達に、教えることは可能でしょうか?」


ルークはちょっと考える。

魔物退治を優先と考えると、教える時間がもったいないような気がしたのだ。

それを踏まえて話すことにする。


「今後、魔物への対策という意味合いであれば、教えることは可能です。

 ですが、一朝一夕で覚えられる魔法ではありません。

 そこをご理解頂ければ。」


「やはりそうなりますか。

 ・・・今後という意味で、必要となるのは理解しています。

 ですが、すぐに対処ということが難しいのであれば、

 あなたに依頼するほかなくなりますね。」


イーリアはため息を吐く。

どうやら、自分たちで解決を図りたかったようだ。

他国の人間たる、ルークは嫌われているのだろうか?


「今後という意味であれば、魔術書を用意します。」


ルークはそう述べると、その手に、魔術書を出現させる。

これには、ムスターフと副隊長が驚く。


「それは、まさか!?」


イーリアは驚いていた。


「・・・あなたはまさか、『創造系魔法』の使い手ですか?」


「!?

 何故、それを!?」


今度はルークが驚く番だった。

まさか、『創造系魔法』のことを知る者が現れるとは思わなかったのだ。

南の大陸のナターシャとの会話以来、驚いたのだ。


「やはり、そうなのですね。

 となると、あなたは“選ばれた者”なのですね。

 ・・・まさか、また巡り合うことになるなんて。」


イーリアは苦悩していた。

どういうことだ?

()()()()()()とはどういう意味だ?

それに、“選ばれた者”とは、一体?


「この書は受け取りましょう。

 今後のためにも、回復魔法を扱える者に勉強してもらいましょう。

 では、本題に戻ります。

 ルーク殿、あなたに依頼があります。

 この世界樹(ユグドラシル)周囲の森を浄化して頂けないでしょうか?

 現在、世界樹(ユグドラシル)周辺の森には魔物が大量に湧き出しているのです。

 騎士団を派遣し、周辺の里や村を守護していますが、それも限界に来ています。

 このままでは、騎士団が壊滅し、里や村にも大きな影響が出るでしょう。

 ましてや、殺戮が始まれば、止める手段も無くなります。

 なにとぞ、お力をお貸しください。」


イーリアは頭を下げたのだ。

これには、ルークはおろか、ムスターフと副隊長も驚く。


「あの、イーリア様、顔を上げてください!

 僕は依頼を引き受けるためにここに来ています。

 ですから、顔を上げてください!」


ルークは必死に説得した。

この行為に、ムスターフと副隊長も驚く。

ルークは、皇王が頭を下げたにもかかわらず、いい気にならず、遠慮をみせたのだ。

ムスターフは、彼ならば信用できると判断した。

イーリアは顔を上げると笑みを浮かべる。


「ここまで、必死に止められたのは初めてですよ。

 あなたは、かなり人が良いのですね、ルーク殿。

 では、お願い致します、ルーク殿。」


「わかりました、お任せください。

 ただ、一つお願いがあります。」


「なんでしょうか?」


「僕は、この国の地理に全く詳しくはありません。

 よって、案内役をお願いしたいです。」


「では、その役目、私が担いましょう。

 私にお任せください、イーリア様。」


ムスターフが立候補したのだ。


「わかりました。

 ムスターフ殿、あなたに任せます。

 ルーク殿のサポートをお願いしますね。」


「はっ!

 必ずや。」


ムスターフは敬礼を行う。


「では、急ぎましょう。

 被害が出る前に、対処してしまいましょう!」


ルークの言葉に、ムスターフがうなずく。


「では、お願い致します。」


「はい、お任せください!」


ルークはそう言うと、立ち上がるのだった。



ルーク達が退出した後、イーリアはため息を吐いていた。

まさか、また『創造系魔法』の使い手に会うとは思っていなかったのだ。

彼女は、過去に『創造系魔法』の使い手に会ったのだ。

そして、魔剣を授かったのだ。

白亜の聖剣『ミスティルテイン』を。


「もし、彼もまた同様の力の持ち主であれば、間違いなく、

 “選ばれた者”なのでしょうね。

 そう、“真の魔法騎士”に。」


その言葉に、どのような意味があるのだろうか?

それは、彼女しか知らぬのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ