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創造系魔法使いのスローライフ!?  作者: 稀硫紫稀
第51章 ハイ・エルフ編・魔物退治!
521/526

51-2 メルディナの懐妊。

翌日。

相変わらず、他都市の政務官の出入りが激しい中、ルークはのんびりと城内を散歩していた。

仕事が無い以上、することもない。

のんびりと座っているのもいいが、たまには体を動かさないとである。

やがて窓から見えたのだが、城の入り口に、一人の騎士がやってくるのが見えた。

見覚えがあった。


「あれは、クロウ殿かな?」


そう、クロウ本人だった。

だが、何の用だろうか?

メルディナにでも何か届けに来たのだろうか?

そんなことを思いながら、執務室に戻るのだった。



数分後。

ルークがお茶を飲んでいると、ドアがノックされる。

マークが対応する。


「ルーク様、クロウ殿とメルディナ殿がお話があると、

 会談を申し込んでおりますが、いかが致しましょうか?」


会談?

なんだろうか?


「わかりました、応接室に通してください。

 僕も向かいます。」


ルークは立ち上がると、応接室へと移動するのだった。



応接室で待つことしばし。

ドアが開き、クロウとメルディナが入ってきた。

そして、ルークに気付き、慌てて頭を下げる。


「さあ、こちらへどうぞ。」


ルークに勧められ、二人はソファに座る。


「今日は、どういった用件なのでしょうか?」


ルークの問いに、口を開いたのは、メルディナだ。


「実は、ルーク様、私たちに子供ができました。

 まさか、この歳で子供ができるとは思っていなかったのですが・・・」


メルディナは恥ずかしそうに、そう述べた。


「それはおめでとうございます!

 何か、お祝いの品を用意しませんと。」


ルークは笑顔で祝福していた。


「あ、ありがとうございます。

 その、お祝いの品を頂くなど、もったいないことでございます。

 あの、今日はご相談がありまして。

 私の専属魔導士の件です。」


メルディナが真剣な表情をしたので、ルークも襟を正す。


「その、妊娠中も出産後も含めて、

 ルーク様の元でお仕事をしたいと思っております。

 主人にも相談しました。

 もし、ルーク様がお許し頂けるのであれば、

 引き続き専属魔導士を続けさせて頂けないでしょうか?」


通常、女性魔導士の場合、妊娠・出産とわかった場合は、退職することが多い。

子育てを優先するからだ。

その後、専属魔導士に復帰することは稀だった。

だから、子供の妊娠イコール専属魔導士の退職につながるのだ。


「ちなみに、子供が生まれた後、子育てはどうされる予定なのでしょうか?」


ルークは当たり前のことを質問する。

もし、メルディナが職務復帰した場合、子供を誰が育てるのか、確認する必要があるのだ。

子供を放置することは、ルークとしては断じて認めるわけにはいかないのだ。


「はい、乳母を雇うつもりです。

 それとメイドも。

 私が仕事の間、乳母やメイドに見て頂く形になります。

 私が家に戻ったら、私が面倒を見る予定です。

 仕事と家庭を両立させようと思っています。」


「それはかなり負担が大きいと思いますが、その辺はお考えなのでしょうか?」


ルークの指摘に、メルディナは焦りを覚えた。

その時、クロウが話し出す。


「ルーク様、自分も、子育てに参加するつもりです。

 無論、子育てはよくわかりませんが、最近は、

 料理の作り方なんかを妻から学んでいます。

 できるだけ、彼女に協力できるようにしています。

 それで、彼女の負担を減らしていくつもりです。」


クロウは、自分の考えをしっかりと述べていた。

彼にとって、メルディナは大事な妻だ。

そして、彼女のためならば、何でも協力する覚悟なのだ。

現に、子供ができたと知ってから、彼女に協力するようになっていた。

何が起きても、対応できるようにである。


「ふむ、わかりました。

 クロウ殿も協力してくれるということですね。」


ルークはうなずく。

ルークは既に結論を出していた。

それを口にするのみである。


「では、こうしましょうか。

 メルディナ殿、妊娠中も出産後も、

 専属魔導士を引き続きお願いします。

 これは僕が決めたことです。

 僕が考えを変えない限り、この決定は覆りません。

 これでよろしいでしょうか?」


これには、メルディナが目を丸くして驚く。

期待半分、諦め半分の覚悟で来ていたのだから。

まさか、期待が勝つとは思わなかったのだ。

クロウは、妻の顔を見て喜んでいた。

ルークの言葉はまだ続く。


「それから、乳母は雇ってください。

 ただし、メイドはこちらから用意しましょう。

 マーシャとルーティアを付けましょう。

 彼女たちのお給金は、僕が支払いましょう。

 これでいかがでしょうか?」


「!?

 ルーク様、そこまでして頂かなくても・・・!?」


メルディナが焦った。

あまりにも待遇が良すぎたからだ。


「これくらいは大したことはないですよ。

 それから、妊娠中の悩みや子育ての悩みについては、

 メイリア殿に相談してください。

 無論、気軽に相談に乗って頂けるよう、

 メイリア殿にもお伝えしておきますので。

 お仕事の悩みであれば、僕が聞きますよ。」


「・・・そこまでご配慮いただき、本当にありがとうございます。」


メルディナは頭を下げる。

クロウも慌てて頭を下げる。


「あと、グリディア殿にもお伝えしましょう。

 メルディナ殿の仕事量を減らしてもらいましょう。

 僕にできることはこれくらいですかね。」


「本当にありがとうございます。

 ルーク様、感謝致します。」


メルディナは泣きそうになっていた。

クロウは、ルークにひたすら感謝していた。


「そうですね、子供が生まれたら、是非僕にも見せてくださいね。

 無論、クロウ殿も一緒に来てくださいね。

 花嫁たちも喜ぶでしょう。

 それに、人生の先輩であるメイリア殿も色々教えてくれると思いますよ。」


ルークは笑みを浮かべ言った。


「はい、必ずや連れてまいります。

 ありがとうございます。」


「では、マーシャとルーティアを呼びましょうか。」


ルークは、執事に依頼する。

すると、すぐにマーシャとルーティアがやってきた。


「お呼びでしょうか、ルーク様?」


ルークは二人が座るのを確認すると話し出す。


「おめでたい話ですよ。

 なんと、メルディナ殿が懐妊されたそうです。」


「!?

 お姉さま、おめでとうございます!!」


「おめでとうございます、お姉さま!

 やっと、子供ができたのですね!」


マーシャとルーティアは泣きそうな表情をしていた。


「そこで、二人に依頼です。

 当面の間、メルディナ殿とクロウ殿のメイドとして仕えて、

 仕事をしてください。

 無論、メルディナ殿が出産した後も、お手伝いをお願いします。

 後程、マークには説明しておきます。

 よろしいでしょうか?」


「はい、ルーク様!

 必ずやお勤め、果たします!」


「はい、頑張ります!」


二人は気合が入っていた。


「さて、メルディナ殿、当面は体調に気を付けながら、仕事をしてください。

 もし、体調が悪いようでしたら、無理をしないようにしてください。

 マーシャ、ルーティア、もし無理をしているようだったら、

 止めてくださいね。」


二人は、「はいっ!」と元気よく返事する。


「クロウ殿、メルディナ殿のことをしっかりサポートしてくださいね。

 奥さんは大事にしてあげてください。」


「はい、お任せください。」


クロウははっきりと答える。

ルークはその言葉に、安心する。


「さて、では、お話しはここまでにしましょう。

 そうだ、二人とも、お風呂に入っていってください。

 二人きりで、のんびり浴槽に浸かってください。

 マーシャ、ルーティア、三階のお風呂が空いていると思います。

 ご案内してあげてください。」


そんなわけで、メルディナとクロウは、マーシャとルーティアに引っ張られてお風呂に連れていかれるのだった。



メルディナとクロウはゆっくりと浴槽に浸かっていた。


「その、良かったな。

 ルーク様は話が分かる方だった。

 おまえの言葉をしっかりと聞いてくださった。

 俺は安心したよ。」


クロウは、そうポツリと呟く。


「そうね。

 私は感謝しかないわ。

 あの方に仕えて、本当によかったわ。」


メルディナは泣きそうな表情で語る。

彼女にとっては、かなり不遇な魔導士生活を送っていた。

貴族からのセクハラが多かったこともあるが、クロウとの間になかなか子供ができなかったこともある。

そして、貴族から逃げ出すように専属魔導士を辞めた途端、クロウが騎士団をクビになる始末。

二人とも、冷遇されている中、ルークという存在に賭けた。

その結果、二人とも、ルークに仕えることを許された。

自分は専属魔導士に。

夫は騎士隊長になった。

それに、妹たちまで近くに置くことを許された。

彼女にとって、ルークと出会ってから、人生が好転したのだ。

そして、今回の懐妊である。

まさか、この歳で子供ができるとは思わなかったのだ。

ちなみに、メルディナとクロウは30歳を超えていた。

この時代では、いわば高齢出産に当たる。

平均寿命が40歳だから、高齢出産になるのだ。

そんな二人は、幸せの絶頂にある状態だった。


「メルディナ、元気な子供を、生んでくれ。

 俺は、何でも手伝う。

 おまえのために、何でも協力する。」


「ありがとう、あなた。

 子供が生まれたら、ルーク様にお見せしましょう。

 そして、お祝いしてもらいましょう。」


「ああ、そうだな。」


二人はお風呂の中、寄り添い、そのまましばらく過ごすのだった。

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