51-1 送れない結婚式の招待状。
翌日。
ルークは仕事もなく、のんびりである。
このところ、この城に他都市の政務官の出入りが激しいらしい。
皆、お風呂のことを知りたがっているそうだ。
グリディアが一手に担っているので、ルークに仕事は回ってこない。
いや、グリディアからしたら、この程度、ルークの仕事ではないと判断していた。
ということで、ルークは暇なのである。
そんな時だった。
ドアがノックされ、マークが対応する。
「ルーク様、メルディナ殿がいらっしゃいました。」
「わかりました。
通してください。」
ルークは椅子から立ち上がると、ソファに移動する。
メルディナが頭を下げて、中に入ってきた。
そして、ソファに座る。
「どうかしましたか?」
「はい、実は結婚式の招待状を送付していたのですが、
一通のみ送れないことが判明しました。」
メルディナは、その招待状をルークに渡す。
送り先は、エリス宛だったのだ。
「担当の魔導士が報告してきたのですが、何度送ろうとしても、送れなかったと。
私も試してみたのですが、魔法が発動しなかったのです。
原因がつかめませんので、ルーク様にご報告に来た次第です。」
「なるほど、わかりました。
南の大陸の結界に阻まれている可能性がありますね。」
「結界ですか?」
メルディナが驚く。
「はい、実は、南の大陸が海上から見えた際、
“情報整理”と“情報収集”を使ったのですが、見事に弾かれました。
恐らく、結界が原因であると判断したのです。
とりあえず、招待状の件、僕が対応します。」
「そのようなことがあったのですね。
わかりました。
では、こちらを、お願い致します。」
メルディナは頭を下げると、部屋を出て行く。
ルークは手紙を片手に、椅子に戻る。
そして、“思念連結”を繋ぐ。
「えっと、これは、ルーク殿かな?」
のんびりとした声が響く。
「はい、ルークです。
エリス様、ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ。」
「実は、結婚式の招待状をエリス様に送ろうとしたのですが、
魔法が発動しないそうです。
おそらくですが、南の大陸の結界に阻まれている可能性があるのですが、
送る手段はないのでしょうか?」
「ほぉ、そんなことが起きてるの!?
うーん、この結界、そんなことまで妨害してたのか・・・
調節はできないから、しょうがないな。
ちょっと待ってね。
“呪紋”創るから。」
「はい、わかりました。」
今、“呪紋”を創ると言った!?
そう簡単にできるものなのだろうか?
「はい、できました。
今、送るから。」
すると、ルークの脳内に、“呪紋”の情報が流れ込んできた。
「これを手紙の封書に書いてもらえれば、送れるようになるはず。
今、試してみて。」
「分かりました。
少々、お待ちください。」
ルークは、急ぎ羽ペンとインクを用意する。
そして、“呪紋”を手書きする。
無論、魔力を込めて書き進める。
そして、“呪紋”が完成した。
インクを乾かすと、魔法を唱える。
「“手紙”!!!」
瞬間、手紙は姿を消した。
「どうでしょうか?
そちらに届きましたか?」
「ちょっと待ってね・・・」
待つこと数分。
「あっ、届いた。
おけおけ、中身もちゃんと入っている。
ごめんね、この結界、外せないからさ。」
何らかの理由があるのだろう。
そこは加味しないといけない。
「ともかく、無事届いて良かったです。
では、中身をご確認くださいね。」
「OK!
必ず行くから、任せなさいって。」
エリスの中では、既に行くことは決定事項のようだ。
ルークは苦笑を浮かべつつ、“思念連結”を解除するのだった。