50-3 皇帝陛下への挨拶。①
翌日。
ルークとアリシアを乗せた馬車は、城外門へ向けて出発していた。
護衛は無しである。
一台の馬車で移動である。
ルークは念のため、レーヴァテインを持ってきていた。
何かあれば、対処するのだ。
「お父様、元気かな?
随分、久しぶりかも。」
「僕は、都度お会いしていますからね。
とてもお元気ですよ。」
「そっか。
私は久しぶりだから、楽しみだな。
お兄様にも会えるかな?」
「はい、きっと会えますよ。
そう言えば、トリニア様もお元気でしょうかね?
結婚式以来、お会いしていませんが。」
「そう言えば、そうよね。
今日、会えるといいわね。」
「そうですね。」
馬車は、城外門へと急ぐのだった。
城外門に到着すると、ルークは馬車を降りる。
なお、今回の御者は、転移魔法を数回経験済みの方だ。
転移後も、混乱せずに、行動してくれるだろう。
ルークは馬車に触れると、魔法を唱え、解放する!
「“瞬間移動”!!!」
瞬間、馬車は姿を消すのだった。
馬車は、王都ルーニアの城外門の前に出現した。
御者は落ち着いていた。
ルークが馬車に乗り込むと、走り始める。
馬車は、城外門をくぐった後、王城に移動し、到着する。
ルークとアリシアは馬車を降りると、王城の中へと入りこむ。
受付に行くと、敬礼される。
ルークは敬礼を返すと、用件を伝える。
「フェイブレイン公爵と、アリシア様です。
皇帝陛下とクリシュナ殿下に挨拶に伺ったのですが、
取り次ぎして頂けますでしょうか?」
「はい、お待ちください。」
担当者は、城の中へと消えて行った。
待っている間、アリシアはキョロキョロしていた。
落ち着きのない行動だった。
懐かしいのだろうか?
すると、担当者が戻ってきた。
「お待たせしました。
応接室へご案内致します。」
ルークとアリシアは、応接室へと移動するのだった。
応接室に到着すると、既に皇帝陛下が待ち構えていた。
ルークとアリシアは頭を下げた後、ソファへと移動する。
すると、クリシュナとトリニア、レヴィの姿もあったのだ。
三人とも、ソファに座っていた。
無論、クリシュナは女性陣に囲まれていたが。
ルークとアリシアがソファに座ると、会話が始まる。
「良く来た。
アリシア、元気そうだな?」
「はい、お父様。
お父様も元気そうで、何よりです。」
アリシアは笑顔でそう答えた。
皇帝陛下も嬉しそうだ。
笑みを浮かべていた。
「お兄様も元気そうで、何よりです。」
「ああ、元気だとも。
アリシアは相変わらずなのか、ルーク?」
クリシュナは、苦笑しつつ問う。
「はい、相変わらず、元気ですよ。
元気すぎて、困るくらいです。」
「そうか。
相変わらずで安心したよ。」
クリシュナは笑みを浮かべる。
「いよいよ、今年の春、結婚だな。
余は楽しみだ。
余は結婚式には行けぬが、代わりにクリシュナが行ってくれることになる。
クリシュナ、しっかり祝ってやるのだぞ。」
「それは無論です。」
そこで抗議の声を上げたのが、アリシアだ。
「えぇぇぇー!!
お父様、来ないの?」
「こら、アリシア、我儘を言うな。」
クリシュナが困ったように言う。
皇帝陛下は、仮にも国家元首だ。
安易に王都を留守にするわけにはいかないのだ。
まぁ、エリーシャやエリスといった例外もいるわけだが。
「せっかく、花嫁姿を見せられる機会なのに・・・」
アリシアは心底残念そうだ。
すると、ルークを見るのだ。
「ねえ、ルーク様、なんとかなりません?」
「えっと・・・」
これにはルークも困る。
だが、考えてみる。
「まぁ、方法は無くはないですよ。
それでもいいですか?」
「うん!」
アリシアは即決だった。
「・・・君は、何を企んだんだ?」
クリシュナが問い詰める。
「いえ、簡単なことを思いついたんですよ。
転移魔法で、花嫁姿のアリシアを王城に連れてくるんです。
無論、僕も一緒ですけどね。」
「なるほどな。
ふっふっふ、では、余からも頼むとしよう。
結婚式の翌日で構わん。
花嫁姿のアリシアを連れて来てくれ、ルーク。」
皇帝陛下が話に乗ったのだ。
「ち、父上!?」
これには、クリシュナが驚く。
そして、頭を抱えるのだった。
「わかりました。
では、結婚式の翌日に、花嫁姿のアリシアをお連れします。」
「うむ、頼むぞ、ルーク。」
皇帝陛下は満足そうだった。