50-2 年始の挨拶順番を決めよう。
翌日。
新年を迎えた。
だからと言って、イベントは一切無い。
ルーニア皇国でもそうだが、お正月だからと言って、何かをする予定は一切無い。
新年を祝うということを一切行わないのだ。
また、皇帝陛下も、行事を考えていないのだ。
よって、通常営業なのだ。
ただし、貴族によっては、仲の良い貴族に挨拶に行くという風習はあった。
いわゆる新年の挨拶である。
理由は簡単だ。
特に遠くの貴族に会いに行く機会がこういう時にしかないからだ。
一年に一度は会って会話をしようという、ささやかなイベントなのである。
ルークたちは、去年、挨拶回りをしていないので、今年は行くことに決めた。
特に、花嫁たちを一度故郷に行く機会を与えるべきだと考えた。
この挨拶回りはその口実にしてもいいだろう、ルークはそう考えた。
それに、王族及び貴族の娘を預かっているのだ、年に一回くらいは顔を見せないといけないだろうと、ルークは考えたのだ。
ということで、花嫁たちをミレーナの部屋に集めてもらった。
「ルーク様、何の話?」
アリシアが早速質問してきた。
「はい、新年になりましたので、挨拶回りをしようと思います。
その順番を決めたいと思いますが、いかがでしょうか?」
「ルーク様、私の約束を覚えていてくださったんですね?」
リリアーナが嬉しそうに、そう述べる。
「はい。
この際ですから、リリアーナだけでなく、
皆も一緒に挨拶回りに連れて行こうと思いました。」
リリアーナはうんうんうなずいている。
どうやら、賛成のようだ。
まずは、ミレーナが挙手する。
「私は、最近兄さんと姉さまに会ったばかりだから、一番最後でいいよ。
それに、いつでも会えるしね。」
「確かに、そうですね。
じゃ、ミレーナは最後にしましょう。」
「あっ、じゃ、私もミレーナと一緒に行きたいです!
ミルドベルゼ伯爵様のところへ行くときに!」
ミシェリが早速立候補したのだ。
「ミシェリ、赤ちゃんとサーシャ姉さまに会いたいだけなんでしょ?」
ミレーナが突っ込むと、ミシェリが「えへへ」と笑う。
図星のようだ。
まぁ、それでも問題はない。
「じゃ、まずは誰からにしようか。
やはり皇帝陛下の娘である、アリシアからかな?」
「うん、そのほうがいいと思うよ。」
ミレーナも賛成だ。
やはり、最初に挨拶すべきは、皇帝陛下だろう。
「わかった。
じゃ、私からだね。」
アリシアも賛成のようだ。
「じゃ、最初は、アリシアからだね。
次はどうしようかな?」
「次は、私がいいです!
一応、お父様は公爵だし。」
ミシェリが手を挙げる。
確かに、クロムワルツ公爵がいいだろう。
「じゃ、次は、ミシェリですね。
すると、三番目は、リリアーナですね。」
「はい、お願いします。」
リリアーナはぺこりと頭を下げる。
「最後は、ミレーナということで。
これで決まりですね。」
順番は決まった。
それから、ルークは移動方法を説明する。
「移動方法ですが、馬車で移動します。
無論、城外門の外に出るまでです。
その後、僕が“瞬間移動”の魔法を使います。
宿泊の予定はありませんので、挨拶が済み次第、都市ミルディアに帰還します、
帰還の手段も、行きと同様です。
ということで、お願いします。」
本来であれば、馬車で数日かけて移動し、訪問するのが筋なのだが、ルークはそれを拒否したのだ。
ここは、転移魔法を使って行き来することにしたのだ。
かなりのズルだが、時間は有限なのだ。
時間を短縮する手段を優先することにしたのだ。
それに、馬車での長距離移動は、負担も大きいのだ。
負担短縮には、この方法がベストだった。
花嫁たちに反対意見はない。
「よし、じゃ明日、僕とアリシアが王都に向かいましょう。
他の皆さんは、留守番をお願いしますね。」
ということで、翌日より挨拶回りが開始されるのだった。