49-7 お風呂体験。①
翌日。
ルークがのんびりお茶を楽しんでいる時だった。
机の上に手紙が出現したのだ。
手紙を手にすると、送り主を確認する。
レイヴンだった。
早速、手紙の中身を確認する。
すると、こちらに来ると書いてあった。
お風呂を体験したいとのことだ。
明後日には到着すると書いてある。
それと、サーシャと赤ん坊も来るそうだ。
ふむ、これは、出迎えねば。
ということで、早速動く。
「マーク、明後日、ミルドベルゼ伯爵がいらっしゃいます。
赤ちゃんもいますので、万全を期してください。」
「はい、お任せください。
念のため、医者にも滞在してもらいましょう。」
「はい、お願いします。
それと、お風呂を使ってみたいそうなので、手入れもお願いしますね。」
「はい、お任せください。」
マークは早速、廊下に控えている執事やメイドに指示を出す。
よし、こちらはこれでOKだ。
あとは、ミレーナとミシェリに報告かな。
ルークはミレーナの部屋に移動するのだった。
「えっ!?
兄さんと姉さまと赤ちゃんが来るの!?」
「はい、明後日来ます。
こちらが手紙です。」
ミレーナは、手紙を読む。
「お風呂も体験したいって書いてある。
サーシャ姉さまも入るのかな?
ということは赤ちゃんも入るの?」
「おそらくそういうことでしょうね。
お風呂の入り方を教えてあげてもらってもいいですか?
僕は男なので、さすがに一緒に入るわけにもいきませんし。」
「わかったわ。
ミシェリと協力する。
そうだ、ミシェリの部屋に行きましょう!」
ということで、今度はミシェリの部屋に移動する。
すると、ミシェリも同じ反応をする。
「えぇ、サーシャ姉様が来るんですか!!?
赤ちゃんもですか!?
じゃ、お風呂を案内しなきゃ!」
「はい、お風呂については、ミレーナとミシェリにお願いしたいのですが、
よろしいでしょうか?」
「はい、お任せください!」
ミシェリは元気よく答えた。
「おそらく宿泊されると思いますので、
レイヴンとサーシャさんのおもてなしもお願いできますか?
その難しいことはしなくていいです。
お茶を用意したりとか、その程度で。」
「はい、お菓子用意します!」
ミシェリが手を挙げる。
「じゃ、私はお茶かな。
それくらいならできるし。」
「じゃ、お願いしますね。」
こうして、当日の準備が開始されるのだった。
二日後。
レイヴン一家は、都市ミルディアの城に到着した。
すると、執事が複数人で出迎えてくれたのだ。
これには、レイヴンが驚く。
「ミルドベルゼ伯爵様ですね?
私は執事統括官のマークと申します。
我が主は、応接室でお待ちです。
ご案内致します。」
「あぁ、ありがとう。
サーシャ、行こうか。」
「はい。」
サーシャはその手に赤ん坊を抱いていた。
こうして三人は、城の中へと入っていくのだった。
応接室に入ると、既にルークがいた。
レイヴン夫妻は頭を下げた後、中に入る。
すると、ミレーナとミシェリもいたのだ。
サーシャが笑顔になる。
「さあ、どうぞ、こちらへ。」
レイヴンとサーシャは勧められたソファに座る。
「ルーク、約束通り来たぞ。
お風呂とやら、試させてほしい。」
「もちろんです。
準備はできていますよ。
ということで、早速行きますか?」
「あぁ、頼む。」
「では、レイヴンの案内は僕が行います。
サーシャさんと赤ちゃんは、ミレーナとミシェリに案内してもらいます。」
ミレーナとミシェリが立ち上がる。
「では、行きましょう、レイヴン。」
「あぁ、頼む。
じゃ、後程な、サーシャ。」
「はい、旦那様。」
二組は別れて行動するのだった。
ルークとレイヴンは二階のお風呂に来ていた。
まずは、ドアを開き、中に入る。
すると、脱衣所に出る。
「まずは、お風呂を紹介します。
服を着たままで結構です。」
ルークは洗い場へと移動し、浴槽の前で止まる。
「これが浴槽です。
木製です。
そして、ここに宝珠が埋まっています。
これが、水を放出しています。」
「なるほど、水は魔法で管理しているのか。
確かに、この階まで水を運ぶのは重労働だからな。」
「そして、ここに呪紋を施してあります。」
ルークは、浴槽の手すり部分をなぞる。
そこには、呪紋が施されていたのだ。
呪紋は、水に濡れたり、こすったりした程度では落ちない。
木をはがしたりしない限り、消えることはないのだ。
「この呪紋はどのような役割をしているのだ?」
「では、浴槽に手を入れてみてください。」
レイヴンは、浴槽に手を入れる。
「・・・!?
温かい!
そうか、これが温めているのか!」
「はい、その通りです。
この呪紋が、この浴槽の水を温めているのです。」
「なるほど、良くできているな。
これだけ魔法が使われているとなると、かなりのものだな。
いや、素晴らしい。」
レイヴンは素直に褒めた。
「ということで、説明はこの程度で。
では、お風呂に入りましょう。」
ルーク達は、脱衣所で服を脱ぐ。
そして、浴槽に入る。
「・・・!?
これは、気持ちがいいな。
特に、この寒い時期、体がとても温まる!
いや、いいな、これは!」
レイヴンは嬉しそうだ。
「そうでしょ?
あと、お風呂には、治癒効果もあるんです。
最近は、腰痛持ちの政務官も、
足しげく通っていると聞いているくらいですから。」
「そうか。
それはいいな。
いや、これは欲しいな。
是非とも、我が城にも設置したいものだ。」
「設置しましょうよ。
僕も手伝いますし。」
「じゃ、後程、工事の過程を聞かせてくれ。
予算も計上せねばならんしな。」
「そこはお任せください。
予算がなければ、僕が用意しますんで。」
そんなことを言いつつ、二人はお風呂を楽しむのだった。