4-10 身内の争い。②
「来客中だったか、失礼した。
彼は、おまえを助けた少年ルークなのか?」
「はい、そうです。」
ミレーナが急に畏まった表情になる。
どうしてここまで変貌するのだろうか?
ルークはびっくりしていた。
レイヴンと呼ばれた青年は、ゆっくりとルークに近づき、手を差し出す。
「妹が世話になった。
私の名はレイヴン。
ミルドベルゼ子爵家の長兄だ。」
「ルークです。
よろしくお願いします。」
ルークはレイヴンの手を取り、握手する。
手を放した後、レイヴンはミレーナの隣に座る。
「今、いい話を聞いた。
剣と魔法の使い手か。
なかなかいない逸材じゃないか?」
「そうなんですよ。
しかも全系統の魔法が使えるなんて、ズルくありません?」
これには、レイヴンが驚く。
「全系統は珍しいな。
そういえば、回復魔法も扱えると、聞いたが?」
「はい、扱えます。
神聖魔法を少し学んだので。」
「ほう・・・」
レイヴンの目が細くなる。
品定めしている目だ。
少しの沈黙が訪れ、レイヴンが口を開く。
「ルーク、君に依頼がある。
しばらくの間、私の護衛を務めてくれないか?」
その言葉に、ルークは固まる。
嫌な予感がする。
これは、山賊の一件と同じ流れの予感がしたのだ。
「剣の腕がたち、且つ魔法も使える。
そして、回復魔法もこなせる者はなかなかいない。
だからこそ、君に頼みたい。」
レイヴンの目は真剣だった。
「その、理由をお聞かせ願えますか?」
ルークは回避不能の予感がしたので、話を進めることにした。
「あぁ、実は・・・
私の命が狙われている。
犯人は、次兄のブレオンだ。」
そう語った瞬間、ミレーナは固まっていた。
「理由は簡単だ。
ブレオンの狙いは、この家の家督だ。
だから、ミレーナも狙った。」
「えっ!?」
ミレーナは言葉を失う。
それもそのはずだ、まさか犯人が身内とは思わないだろう。
だが、事実なのだろう、レイヴンは嘘を言っていなかった。
ちなみに、このルーニア皇国は、女性でも家督を継ぐことができるのである。
特に、レイヴンとミレーナは正妻の子だ。
それに対して、ブレオンは妾腹の子だった。
継承権を考えれば、レイヴンの次は、ミレーナになるのだ。
ブレオンは最下位ということになる。
「実は父上が病気勝ちでな。
父は近いうちに私に家督を譲るとおっしゃったのだ。
たぶん、ブレオンはそれを知ったのだろう。
だからミレーナが旅行から帰宅中に、
手の者を野盗に扮して狙わせたのだろう。」
「そんな・・・」
ミレーナは困惑の表情を浮かべる。
「そこへ、ルークが現れて、野盗はことごとく駆逐された。
野盗は普通の戦士並みの腕前と考えれば、
ルークはかなりの手練れと判断できる。
それに・・・」
レイヴンは、一つの噂を口にする。
「これは聞いた話に過ぎないが、とある戦争で、若干15歳の少年が、
敵将軍の首を取ったと聞いている。
誰の事かわからないが、おそらくは・・・というところだ。」
レイヴンは先の戦争のことを知っていたのだ。
これは、ルークにとっては痛手だ。
ミレーナはびっくりして、ルークを見ていた。
そして思わず質問していた。
「ルークって何歳なの?」
「・・・15歳です。」
「マジ?」
「・・・はい、マジです。」
どうやら、ミレーナも戦争の噂くらいは知っていたようだ。
ただ、若干15歳の少年が活躍したという部分を知らなかったのだ。
そして、その少年が彼女の目の前にいたのだ。
レイヴンが話を続ける。
「その戦争に参加した少年は、
敵の手練れの騎士を大量に斬り捨てたと聞いている。
しかも、自身は一切傷を負っていないらしい。
凄いと思わないか、ルーク?」
ルークはどう答えていいものかわからなかった。
もはや逃げ道はないように思えたのだ。
これでは、ダーナスやカシスを相手にしたほうがマシだったかもしれない。
それだけ、レイヴンは執拗だったのだ。
「す、すごいですね。」
それ以上、言葉が出なかった。
「レイヴン兄さん、ルークをいじめないの!!」
ミレーナが助け船を出してくれた。
「おっと、そうだったな。
これは失礼した、ルーク。
話を戻そう。
護衛の件、受けてくれるか、ルーク?
もちろん、報酬は出す。
それに妹を助けてくれた分も含めるさ。」
ルークは考えたが、もはや道は一本しかなかった。
「わかりました、護衛の件、引き受けます。」
こうして、ルークは護衛の任務を引き受けるのだった。




