4-10 身内の争い。①
ルークはかなり広い応接室に通された。
ポールがお茶を持って、ルークに差し出す。
ルークはというと、緊張のあまり固まっていた。
こんなに大きな屋敷に入る機会なんて、まずない。
人生ってわからないなぁ、と変な方向に考えが行ってしまっていた。
そこへ、ドレス姿のミレーナが姿を見せたのだ。
「ルークじゃない。
昨日ぶり。」
「ミレーナ・・・さん、昨日ぶりです。」
ところが、ミレーナが人差し指を立て、注意する。
「ミレーナでいいわよ。
さん付け禁止!」
「えっ、でも、ミレーナはここの貴族のお姫様なんでしょう?
様付けとかしないとまずいんじゃないかい?」
そこで、ポールが助け船を出してくれる。
「お嬢様、せめて対外の場所では様付けを許してあげてください。
この場では、呼び捨てでもよいかと思いますが。」
「そうね、じゃ、そうしましょ。」
とりあえず、これで落ち着いたようだ。
「それにしても、ミレーナは貴族のお姫様なんだね。
お金持ちのお嬢様なんだと思っていたけど、それ以上だったなんて。」
「びっくりした?」
「うん、かなりびっくりした。」
「えへへ。」
ミレーナは喜色満面だった。
「話は変わるけど、あの時、ホント助けてくれてありがとう。
お礼をしたいけど、何がいい?」
ミレーナの言葉に、ルークは困った表情を浮かべる。
「いや、お礼とかいいよ。
たまたま通りかかっただけだし。
それに大したことしてないよ。」
「そんなことはないわよ。
まず、あなたは私の執事ポールの命を助けてくれたわ。
ポールからすればあなたは命の恩人なのよ。
大したことあるじゃない!」
「左様、その通りでございます。」
ポールも追撃する。
「それに、王都まであなたは周囲の警戒をしてくれた。
ちゃんと私たちを野盗から守ってくれていたんだから。
・・・気が付いたのは、ポールなんだけどね。」
「いや、それでも、お礼をもらうほどのことは・・・」
「十分してるのよ、あなたは!!
だから、お礼させて!」
ミレーナがずいっと前に出てきて、お礼を要求する。
これには、ルークは困り果てた。
ポールも止める様子は無いようだ。
「じゃ、その簡単なことでいいかな?」
「何?」
「僕は魔法使いを目指しているんだ。
・・・ううん、今じゃ魔導士を目指している。
そこで、魔法に詳しい方を紹介して欲しいんだ。
僕は、魔術書で勉強してきただけで、それでは足りないような気がするんだ。
できれば、魔導士とかがいいんだけどね。」
「魔導士か・・・
って、魔術書だけで勉強していたの?
どこまで使えるの?」
「精霊魔法の中級まで使える。」
「系統は?」
「全系統だけど?」
「全系統!?
ホントに?」
「うん、ホント。」
ミレーナが驚きの表情を浮かべていた。
「ホントに全系統なの?
普通、偏るのよ。
私も火系統に偏ってるし。」
「うん、中級の魔法は、魔術書の内容は一通り使えるようになったよ。」
「あなた、魔術の才能もあって、剣の才能もあって、ズルくない?」
「えっ、ズルい?」
ルークはまたもや困った。
そんなことを言われても、自分ではわからないのだ。
それもそうだ。
身近に物差しとなる人物が全くいなかったのだから。
「ズルいわよ。
そんな人、聞いたことが無いわよ。
私の長兄でも、魔導士としては天才だけど、剣はからっきしだもん。」
「誰が、からっきしだと?」
その声に、ミレーナが固まる。
「・・・レイヴン兄さん!?」
ミレーナが振り返った先に、一人の男性が立っていた。
細身ではあるが、強い魔力を感じる若者だった。




