1-4 肉体を強化してみる。
翌日。
物体を生み出すことはできた。
ただ、どのくらいのサイズまで生み出せるのかは、まだ未調査だ。
だからこれから調査したいところなのだが、魔力が全然足りない。
1日1回しか使えないのが難点だった。
ルークは困った。
これでは、検証が完了するまで、とんでもない時間がかかる。
全てを検証するのは難しいかもしれない。
それこそ、検証が終わった時、おじいちゃんになっている可能性だってあるのだ。
それでは、人生の大半が無駄になりかねなかった。
だから、悩む他なかった。
だけど、悩んでもしょうがない。
色々試してみることにした。
ルークは、自分がこれをやってみようと思うことから進めることにした。
まず思いついたのは、自分の体だ。
端から見ると、とても貧弱にしか見えないのだ。
そう、ルーク自身も、貧弱だなと思っていたのだ。
まず、力が無い。
例えば、毎朝、井戸で水汲みを行うのだが、そのバケツを持って水がめに水を貯めるのに、時間がかかりすぎるのだ。
井戸は、家の裏にあるから、距離的には近い。
木のバケツは水が入っていなくても、そこそこの重さがある。
そのバケツに水が入ると、かなり重く感じるのだ。
両手で力を込めて持っても、井戸から家の中にある水がめに運ぶまで、およそ10分かかる。
それもそうだ、休み休み運んでいるからだ。
ルークにとっては、かなりの重労働になっていたのだ。
だから、力が欲しいのだ。
その大本として、強靭な肉体が欲しかったのだ。
強靭な肉体があれば、重い物も簡単に持てる。
そんな短絡的な理由だったが、他の利点のことは頭になかった。
例えば、動きが良くなるとか、走るのが早くなるとか、そういった点に着目していなかったのだ。
おいおい気付くとして、今は強靭な肉体を手に入れるのが、彼にとって重要だったのだ。
では、実験を行おう。
ルークはベッドに仰向けになると、両手のひらを胸に当てる。
ベッドに仰向けになったのは、魔力切れの対策だった。
最初から眠っておけば、倒れる心配はない。
気を失っても、怪我をせずに済むのだ。
次に、深呼吸をした後、強靭な肉体をイメージする。
彼のイメージは、昔たまたま見た戦士の体だった。
筋骨隆々で、無駄が少ない感じの肉体だった。
それをイメージし、自身の体も、そのような肉体になりたいと願った。
そして、少し時間が経った後、彼は意識を失うのだった。
気が付いた時、また夜だった。
立ち上がろうとして、体がやけに軽い事に気が付いた。
ランプに火を灯すと、自分は何をやっていたのか思い出す。
あぁ、魔法の実験で、肉体強化を願ったんだっけ・・・
そこで、検証結果を確認していないことに気が付いた。
服の上から体に触れてみる。
体が筋肉質で、固い。
いつもの、がりがりで骨を触っているような感覚ではない。
「もしかして!?」
彼は急ぎ、服を脱ぎ始める。
さすがに、下着は脱がなかったが、その状態で体を視認する。
憧れの筋肉質の肉体へと変貌していたのだ。
「や、やったー!!」
ルークは大いに喜んだ。
体に触れてみる。
間違いなく、筋肉を触っている感覚だった。
上半身、下半身にかけ、無駄の少ない、筋肉質の肉体が出来上がっていたのだ。
ただ、この筋肉が本物なのか、疑問があった。
ただの見せかけだったら、意味が無いのだ。
「よし、明日実験だ!」
ルークは喜び勇んで、夕食の準備をするのだった。
翌朝。
ルークは、木のバケツを持ち、井戸に来ていた。
水を汲み、バケツに移す。
その間、あまり重さを感じなかったのだ。
次にバケツ一杯に水を汲み終えると、バケツを片手で持ってみる。
「や、やった、持てるぞ。」
ルークは感動していた。
今まで片手で持つことすら困難だった、水入りバケツを持つことができたのだ。
彼は感激していた。
これなら、バケツが2つあれば、両手で持ち歩くことができるはずだ。
残念ながら、バケツは1つしかないため、確認できないのだが。
ルークは早速バケツ片手に家に戻り、水がめに水を灌ぐ。
そして、すぐに井戸に戻る。
この間の動きも軽やかであった。
全く疲れを感じないのだ。
昨日の自分は、疲労困憊だったのに、これほど大きく違うとは、本当に驚きだった。
彼は、あと2回、水汲みを繰り返し、水がめを一杯にするのだった。
もう一つ検証してみよう。
家の中に置いてある、水が一杯入った水がめを持つことができるかである。
水がめは水が入っている状態では、非常に重い。
大人一人で持ち切れるか、怪しいものだった。
ルークは、水をこぼさないように、そーっと持ち上げてみる。
すると、なんと持ち上がったのだ。
少し重い程度にしか感じなかったのだ。
「こんなに重い物も持てるのか、すごいな。」
自分で持っているのに、感激していたのだ。
それから、ゆっくりと水がめを降ろす。
検証としては十分だった。
これより重いものは自宅にはないので、自分が強靭な肉体を手に入れたことを証明したのだった。




