38-8 お茶会。
その日の夕食。
「ルーク様、提案があります!」
ミシェリが手を挙げたのだ。
本来は夕食中なので、はしたない行為なのだが、その辺はあまりこだわらないルークであったりする。
「はい、何でしょうか?」
「今夜、お茶会をしてもいいでしょうか?
ルーク様とアリシアがしばらく留守にすると聞いたので。」
「いいですよ。
他の皆さんはどうでしょうか?」
特に発言が無かったので、問題無いようだ。
「じゃ、今夜、私の部屋でお茶会を開きますね。」
ミシェリは嬉しそうに、発言するのだった。
夜。
ルークはミシェリの部屋を訪れた。
この部屋も、広い。
アリシアの部屋も広かったが、どこも広い部屋のようだ。
ソファに座ると、早速花嫁に囲まれる。
ミシェリはお茶の準備に取り掛かっていた。
「結婚式って、何をなさるんですか?」
リリアーナから質問が飛んで来た。
「普通であれば、結婚式が執り行われて、披露宴があって、
最後に舞踏会が催されるはずよ。」
ミレーナが答えた。
たしか、レイヴンの結婚式の時も同じだったはずだ。
しかし、今回は、皇太子と王女との結婚式である。
かなり盛大である可能性が髙かった。
ルーニア国中の貴族が集まることだろう。
披露宴の時、どこに座ろうか。
その辺は、レイヴンと相談かな。
舞踏会か、またアリシアと踊ることになりそうだ。
それだけならいいのだが、他にお誘いが来たりするかもしれない。
ちょっと逃げたい気分になってきた。
「お茶をお持ちしました。」
ミシェリが、テーブルにお茶を置いていく。
ルークは早速、ティーカップを手に取り、飲む。
「おいしいですよ。」
「ありがとうございます。」
ミシェリは嬉しそうに笑った。
「そうだ、アリシアは皇女だから、王城に泊まることも可能でしたね。」
ルークは今更ながら思い出していた。
「でも、私の部屋、もう無いと思うよ。
城出る時、全部の荷物、ルクサスメリルに持ってきたし。」
「そうなの?」
「うん、お父様が全部持っていけって言ったから。」
どうやら、本気でルークに嫁がせるために、家財一式持たせたということになる。
「となると、アリシアを王城で過ごすこともできないのか・・・」
「何で?」
何でと聞かれ、ルークは困る。
「いや、だって、アリシアは皇帝陛下の娘でしょ。
それに、クリシュナ殿下は兄であるから。
ちょっとぐらい、家族で過ごす時間も必要かなと思ったんだけど。」
「あー、そういうのは大丈夫よ。
意外と思われるかもしれないけど、
食事も一緒に食べた機会なんてほとんどないの。
だから、私は兄弟のことはあんまりよくわかんないんだ。
みんな仲良しってわけでもないのよ、王族って。」
「そ、そうなんだ。」
ルークは意外な回答に驚いた。
「じゃ、ここの生活はアリシアには変わって見えるのかしら?」
ミレーナの質問に、アリシアは考える。
考えた後、返答する。
「うーん、そうかもしれないね。
私は家族で食事したのも数回だし。
毎日のように、顔を突き合わせていたわけでもないし。
だから、ここでの生活は割と新鮮なのよ。」
「そうなのね。
王族って、意外と家族想いってわけでもないのね。」
「そうだね。
それはそうかも。」
ミレーナの感想に、アリシアは肯定する。
「あの、ケーキ、出してもいい?」
その時、ミシェリが恐る恐る聞いてきた。
話に夢中になっていたので、聞くタイミングを逃していたようだ。
「あぁ、ごめんね、大丈夫ですよ。」
ルークがお願いした。
すると、すぐにケーキが出てきたのだ。
皆おいしく頂くのだった。
難しい話はここまでとなり、皆雑談を楽しむのだった。
そして、夜も更けてきたため、解散となった。
ルークは、おいしくケーキを頂けたことに感謝しながら、寝室へと移動するのだった。