38-6 街道の計画。
ルークは、都市ルクサスメリルで進めていた計画を、ここでも立ち上げることにした。
そう、街道敷設計画である。
時間はかかるが、やるべき事項であった。
それと、宿場町の設営である。
この二つは外せない。
残念ながら、ミルディアの特産品は特になかった。
何か作るべきだろうな。
これに関しては、要検討である。
だが、元王都ということもあり、品数は豊富だった。
この辺を生かしていくことが可能かもしれない。
早速、ルークは紙と羽ペンとインクを用意する。
そして、街道敷設計画について書き込んでいく。
無論、都市ルクサスメリルでも進めていることも書いておく。
そして、宿場町の設営も忘れない。
紙数枚に書き終わると、早速、政務官の執務室へと持っていくのだった。
グリディアはルークがやってくると、早速頂いた紙の内容を拝見する。
街道敷設計画と知って、固まったのだ。
「閣下、これは無謀ですぞ。」
これが、グリディアの第一声だった。
「そうですか?
お金の面は問題ありません。
僕が用意しますので。
問題は、時間くらいだと思ってますし。」
「いや、確かにそうですが・・・
これは、国家事業ですぞ、通常であれば。」
「そうなんですよね。
だけど、国はお金を理由に行う気配がありませんからね。
ここは、僕が率先してやろうと思いまして。
実際、やっている途中なんですけどね。」
「なるほど、既にやられているのですな・・・
やや、しかし、これは、時間とお金が非常にかかりますぞ。」
「その辺は覚悟の上です。
少なくとも、僕が存命中に完成しなくても結構です。
進めておけば、人の流れが確実に生まれます。」
「確かに、その通りですが・・・」
グリディアは流石に唸った。
ここは、ルークに従って進めるべきか、何とか却下すべきか。
だが、ルークは既に進めているという。
実績がある以上、進めてもいいのかもしれない。
宿場町に関しては何も問題ない。
設置に時間がかかるが、問題はない。
これだけでも、人の流れが生まれる。
これに、街道も合わされば、もっと人の流れが生まれるのは間違いなのだ。
「ルーク様、これを国家事業に持っていくことは可能でしょうか?
その、例えば、皇太子様を説得するとか。」
「うーん、どうでしょうね。
国家が進めていない時点で、クリシュナ殿下が
ほいほい認めるとは思えませんし。
僕が先に進めていけば、国家事業に取り込んでくれるかもしれませんが、
今は難しいですね。」
「確かに、そうですな・・・
うーん、どうしたものか・・・」
「ちなみに、何で悩んでいるんですか?」
「いや、これほどの事業、試したことが無いのですよ。
よって、どの程度のお金と時間がかかるのか、計り切れないのですよ。」
確かに、街道敷設なんて、誰も実行したことはない。
実行しようとした者は過去にいたのだが、途方もない金額がかかる見込みが立ったため、諦めた者がいるくらいなのだ。
それに、莫大な時間がかかることもある。
すぐにできるものではないため、安易に進められないのが理由だった。
だが、ルークはその辺を加味した上で、進めようとしている。
無謀ではなく、しっかり実現させようとしているのだ。
「では、都市アーデアまで街道を引いた場合、どの程度かかるか、
計算してもらえますか?」
「・・・なるほど。
都市間で計算するという方法がありましたな。
それで予測を建てましょう。
しかし、それでも2年程度の時間と、金1000枚以上はかかる見込みですが、
よろしいのでしょうか?」
「構いません。
後で、お金も用意しますんで。
とりあえず、試算して、進められるか計算してみてください。
それと、宿場町の件も、含めてくださいね。」
「承知しました。
やってみましょう。」
こうして、ルークはグリディアを説得して、計画を少しずつ進めてもらうことにするのだった。
「しかし、難題を与えられましたな。」
ルークが去った後、数人の政務官が、グリディアの元に集まっていた。
「うむ、確かに難題だが、不可能でないというところが、大変なのだ。
もし実現すれば、このミルディアは大きく栄えることになるのだからな。」
「・・・そうなのですか?」
他の政務官が疑問符を浮かべる。
「人の流れが出来上がれば、おのずと、この都市に集中して人が流れるだろう。
ここは元王都だ、品物が多く流れる上、英雄であるルーク様もいる。
人口も更に増える可能性もある。
そうなれば、仕事に就く者も増えるというものだ。
無論懸念もあるが、犯罪関係はルーク様の宝珠の力で、取り締まられている。
下手をすると、良い事づくめの計画になるやもしれん。」
ルークは、騎士団に例の宝珠を配布済みである。
既に、犯罪者は全て捕らえられているのだ。
「では、進めるのですか?」
「うーん、それが悩ましいところだ。
西方、南方、そして東方に街道を設けるのだ。
かなりの金と時間がかかる。
これを解決できる策があるといいのだが・・・」
グリディアとしては、一気に事を進めたかった。
となると、各都市が一斉に行うのが良策なのだが、各都市にそこまで余裕があるとは思えない。
そこで、各都市の職人を雇って、事を進める案も考えていた。
金はあるのだ。
問題は、人手と時間だ。
敷設する敷石は大量に必要だろうし、敷設する職人も大量に必要になる。
そういった問題点も解決していかねばならない。
だが、グリディアはなんとかなりそうだと思った。
このミルディアには多くの職人がいる。
そういった人間を集めるのも問題ないだろう。
後は、時間のみか。
やはり、ここはまず、都市アーデアまでの敷設工事を進めてみる他あるまい。
そこで、試算し、全体でどの程度かかるか計算してみることにしよう。
しかし、無謀といえば無謀な計画である。
それを成そうというのだ。
ルークは、どれだけ先のことまで視ているのか、グリディアにはわからなかった。
「あのお方は、しっかり未来を見据えているのかもしれんな。」
グリディアは、そう誰にともなく、告げているのであった。
ルークは、執務室に戻ると、お金の準備を開始する。
目標は金4000枚である。
また、いつもの如く、小袋のお金をコピーしまくって、大きな袋に金4000枚用意した。
ルークが抱えると、マークが慌てた。
「ルーク様、それは我らにお任せください。」
「ん?
じゃ、これを政務官の執務室まで運んでほしいんだ。
頼めるかな。
あ、渡すのはグリディア殿ね。」
「承知しました。
渡してまいります。」
マークは執事二名を呼ぶと、運んでもらうのだった。
グリディアは運ばれて来た金貨に、大いに焦った。
こんな金貨の枚数、見たこともないのだから。
ルークは本気だった。
それがわかる出来事だったのだ。
「・・・やろう。
街道敷設計画を!」
グリディアは決めた。
まずは、ミルディアからアーデアまでの間に敷設することから始める。
そこで試算し、他の都市間の金額と時間を算出する。
それでルークに報告し、お金を用意してもらうのだ。
ルークならば、金貨4000枚を用意したのだ、さらに用意できると踏んだのだ。
それと、宿場町の設営も忘れない。
グリディアは政務官数名に、計画を進めるよう命令した。
こうして、街道敷設計画は開始されるのだった。