38-4 騎士団の様子。①
翌日。
ルークは、馬車にてルクシアネス騎士団に赴いた。
早速、朝から訓練を開始していた。
ルークは念のため、レーヴァテインを腰に差していた。
見学なので、不要と言えば不要なのだが、クロウやゼルディアの様子も気にかかったのだ。
ルークは一人隊舎へと向かうと、一人の騎士が出迎えてくれた。
「ルーク様、本日はどうかされましたか?」
「騎士団長はいますか?
ちょっと、覗きに来たことを告げようと思いまして。」
「は、はい。
隊舎の執務室でお仕事をされていると思います。
ご案内します。」
「ありがとうございます。」
ルークは騎士に伴われて、隊舎内へと移動する。
そして、騎士団長の執務室に通された。
「これは、公爵様!
どうされました?」
騎士団長ゲイルは、非常に驚いた様子で、立ち上がった。
「ゲイル団長、お久しぶりです。
騎士団の状況を見に来ました。
どうでしょうか?」
「はい、今のところ問題なく、訓練が行えている状況です。
始めは、外来の者ゆえ、反発があるかと思いましたが、
そういったこともありませんでした。
皆、ルーニア皇国のため、鍛錬に勤しんでいるようです。」
「そうですか。
それならよかったです。
以前は敵対関係にありましたからね。
もし、互いにケンカにでもなっていないか、心配していたところです。」
「そのようなこともありませんぞ。
皆、仲良く・・・というのはおかしいですが、
互いに切磋琢磨している状況です。」
ゲイルは喜々として述べた。
「ちなみに、見込みがありそうな若者はいますか?
やはり兵力が大幅に減りましたからね、
期待できる若者が欲しいところですが。」
ルークとしては、若者の成長が楽しみだった。
自分も若いのだが、やはり騎士は強い者が多いと助かるのだ。
ここは、ルーニアの西を守護する役割を担っているのだから。
「うーん、実を言いますと、自分にはその辺の見る目が無いのです。
自分はどちらかと言うと、事務仕事に専念していたこともありまして。
情けない話ですが、その辺は、隊長たちに任せております。」
ゲイルは、元々はグレッグ団長の補佐官だった。
騎士としても優秀だったが、事務仕事でも優秀だったのだ。
よって、補佐官を務めていたのだが、今回はグレッグの推薦もあり、騎士団長となったのだ。
ゲイルは、自分には見る目が無いというものの、ちゃんと隊長を選んでいた。
実は、メリッサも隊長になっていた。
ルークとしては、メリッサに部隊を持たせるのはどうかと考えていたのだが、ゲイルの推薦だったので了承したのだ。
だから、見る目が無いとは言えないのだった。
ということで、遠慮しているとルークは判断した。
「そっか。
じゃ、ちょっと見学しても問題ないかな?」
「閣下が見学されるのですか?
皆、緊張されますぞ。」
「それはいい意味でかな?」
「えっと、いい意味で、です。」
ゲイルはちょっと自信を無くしていた。
「ともかく、見学してもいいでしょ?
それに、クロウ殿やゼルディア殿の成長も見たいしね。」
「はい、見学は問題ありません。
その二人でしたら、今や我らのエース的な存在ですぞ。
閣下が連れて来て以降、あの二人の活躍は目覚ましいですからな。」
ゲイルは嬉しそうだ。
「じゃ、見学にいきますね。」
「では、皆に紹介しましょう。」
ゲイルも立ち上がり、二人は訓練場へと移動するのだった。
早速、招集がかけられた。
5千人近い騎士と騎士見習いが揃ったのだ。
ある意味、壮観だった。
「皆、本日は、フェイブレイン公爵様が直々に見学に来られた。
皆、恥ずかしくないように鍛錬に励むのだぞ!
よいな!!」
「「「はっ!!!」」」
ゲイルの言葉に、皆が応える。
ルークは声の大きさに満足した。
「みなさん、初めましての方は、初めまして。
フェイブレイン公爵こと、ルーク=フェイブレインです。
本日は、皆さんの鍛錬状況を見学させてもらいますので、
よろしくお願いします。」
ルークはにこやかに告げるのであった。
早速ルークは、クロウの元を訪れる。
クロウの隊は、かなりハードな鍛錬を行っているのか、皆過呼吸状態だった。
大丈夫かな?
「閣下、お久しぶりです。」
クロウが喜々として挨拶してくれた。
「お久しぶりです、クロウ殿。
新居に慣れましたか?」
ルークの質問に、クロウが困った表情を浮かべる。
おや、何かあったのか?
「閣下、実は相談なのですが。
もう少し狭い家を手配してもらえないでしょうか。
実は、妻と過ごしてわかったのですが、
自分たちには広すぎて困っているのです。
しかも使用人までつけてもらって。
そのありがたいのですが、俺たちは貴族ではないので、なんと言いますか。」
どうやら、貴族の屋敷はお気に召さないようだ。
そりゃ、庶民にとっては、慣れないよね。
「分かりました。
あとでグリディア殿に相談してみましょう。
しかし、こればかりは、僕の失念でした。
すみません。」
これには、クロウが慌てる。
「いえ、閣下が謝ることではないです。
ただ、広すぎて妻と一緒にどうしようか相談していたところだったので。」
「ともかく、その辺は任せてください。
ちなみに、マーシャとルーティアも、一緒に住んでいるのですか?」
「いえ、あの二人は、別居ですね。
その辺はちゃんと、守ってくれているみたいです。」
なるほど、あの二人は、姉と同じ職場であればいいのか。
家まで一緒かと思っていた。
「ともかく、手配しますので、しばらく我慢してくださいね。」
「承知しました。
ご配慮、感謝致します。」
クロウは頭を下げるのだった。