38-2 生誕祭。②
夜。
ルークの執務室にマーシャが訪れたので、早速、アリシアの部屋に向かうのだった。
途中、マーシャに聞いてみる。
「何か、仕掛けでもあるの?」
「いえ、無いですよ。」
「そうなんだ・・・」
どうにも腑に落ちない。
何故、今日だけマーシャを待つ必要があったのか。
ともかく、アリシアの部屋に入ればわかることなので、我慢することにした。
アリシアの部屋にたどり着くと、マーシャは律儀にもノックをした。
そして、マーシャが部屋のドアを開け、ルークを中に促す。
ルークが中に入ると、皆が座って待っていた。
ルークは相変わらず、花嫁に囲まれた席に座った。
見た目は、いつものお茶会と変わりない。
はて、何かあるのかな?
その時、アリシアが立ち上がり、ティーポットのある場所へと移動する。
お茶かなと思って、ルークは待つことにした。
ところが、突然目の前に、ケーキが置かれたのだ。
しかも、数本の蝋燭が立っていたのだ。
蝋燭は、とても小さなもので、誕生日用に使われるものだった。
ルークはこんな小さな蝋燭は見たことが無かった。
アリシアは、早速火を灯す。
そして、花嫁たちが一斉に叫んだのだ。
「「「お誕生日おめでとう!!!」」」
「・・・へっ!?」
ルークは驚いた。
ちなみに、今は季節としては夏である。
ルークの誕生日は春なので、とっくに過ぎているのである。
「あ、あのぉ、これは、一体・・・?」
ルークはまだわかっていなかった。
「だから、お誕生日おめでとうって言ったでしょ?
今日は、ルーク様の生誕祭なの!」
アリシアがちゃんと説明する。
「いえ、だって僕の誕生日は、春ですよ?
今、夏だから、時期がずれてますけど。」
「それは、あなたが戦争に行ったせいじゃない!
というか、なんで誕生日のこと教えてくれなかったのよ!」
ミレーナは逆に怒っていた。
確かに、ルークの誕生日は、花嫁たちは誰も知らないのだ。
ところが、知っている人物が、ルークの目の前にいたのだ。
「お母様が教えてくれたんですよ。
ネミアさんのお墓参りした後に、教えてくれたんです。
ルーク様の誕生日は春だって。」
ミシェリが説明してくれる。
そう、メイリアはルークの実母である。
今は訳あって、実母と名乗れないのだが、ルークの誕生日は知っていて当然だった。
ルークは自分の正式な誕生日を知らない。
ネミアが教えてくれなかったのもあるため、春に歳を重ねていたのだ。
だが、メイリアが言うのであれば、間違いなかった。
「そうですか、僕は春に生まれたのですね。
実を言いますと、ネミアにも教えてもらったことがないんです。
だから、ネミアが亡くなった季節に歳を重ねるようにしていたんです。」
ルークの言葉に、皆が言葉を失う。
ルークは事実を語ったのだ。
その時、アリシアがルークに抱き着く。
「今度から、春が来たら、ルーク様の誕生日だから。
私たちが、必ずお祝いするから。」
ルークの耳元で、そう告げたのだ。
「ありがとうございます。」
ルークは、アリシアを軽く抱きしめ返すのだった。
こうして、ルークの生誕祭は開催されるのだった。
ルークにとっては、初めて他人からお祝いされる誕生日となるのだった。
今後も、この花嫁たちがお祝いしてくれると約束したので、一人で過ごす生誕祭は、無くなるのだった。