37-6 引越し。③
その日の夕食。
ルークは何とはなしに、聞いてみることにした。
「みんなは、引っ越しの準備は終わったのかい?」
アリシアとミレーナはこくりとうなずく。
ミシェリも遅れてうなずくも、リリアーナは首を横に振った。
その行為に、メイリアが驚く。
「えっと、リリアーナは何か問題があるのかい?」
「いえ、大したことではないのですが、その、お茶会をまたやりませんか?
その、ここでの最後のお茶会を。」
「いいですよ。」
まずは、ルークが許可を出す。
「賛成!
やろう!」
アリシアがやる気満々だった。
ミレーナもミシェリもうなずく。
皆、賛成のようだ。
「じゃ、今夜、私の部屋で行いましょう。」
リリアーナの言葉に皆がうなずくのだった。
夜。
全員がリリアーナの部屋に集まっていた。
リリアーナが片付けていなかったのは、お茶セットだったのだ。
このお茶会が終わった後、片付けをするとのことだった。
ルークは早速運ばれて来たお茶を飲み、感想を告げる。
「おいしいですよ。」
「はい、ありがとうございます。」
リリアーナは嬉しそうに返事をする。
皆も嬉しそうに、お茶を楽しむ。
そしてケーキが出され、皆もおいしく頂く。
「このお茶会が、ここでは最後になるのか・・・
なんだか、感慨深いわね。」
ミレーナの言葉に、皆がうなずく。
「新しいお城でも、お茶会はできるわよね?」
アリシアの言葉に、ルークがうなずく。
「もちろんですよ。
ただし、城は広いですから、迷わないように。」
ルークはそう言うと、皆が笑う。
この城での最後のお茶会ではあったが、皆楽しく過ごすのであった。
そして、引っ越し当日となった。
ルークと花嫁たち、メイリアは、都市外に移動していた。
ルークたちは、荷馬車に乗って移動していた。
最初は馬車を手配しようかと考えたのだが、マクドフェルド侯爵のものになるから、荷馬車でいいでしょうとミレーナが言いだしたのだ。
それに皆が賛成し、荷馬車に乗って移動することになったのだ。
都市外には、多くの騎士が隊列を揃えていた。
騎士の総勢は、約8千人だった。
それに、騎士たちの家族とかも含まれていたため、8千人をゆうに超えていた。
メルディナに、マーシャ、ルーティア姉妹も揃っていた。
そして、騎士の中に、見知った顔があったのだ。
クロウ、ゼルディア、メリッサもいたのだ。
ルークに忠誠を誓った3人はしっかり揃っていたのであった。
後は、マクドフェルド侯爵を待つのみである。
と、その時だった。
魔法の気配を感じ、ルークはそちらを向くと、マクドフェルド侯爵の一族と数人の人間が姿を現したのだ。
マクドフェルド侯爵は、すぐにルークの元にやってきた。
「ルーク様、我らはこれより都市ルクサスメリルへ入ります。
色々ご配慮くださり、ありがとうございます。
どうか新天地でも、お元気で。」
「はい、マクドフェルド侯爵も、お元気で。
何かあれば、相談に乗りますので、気軽に連絡してくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
ルークは手を差し出し、マクドフェルド侯爵と握手を交わす。
「では、僕たちも移動します。
都市ルクサスメリルを頼みます。」
「はい、必ずや。」
ルークはマクドフェルド侯爵がうなずくのを確認すると、魔法を解放する。
「“大規模展開術式・瞬間移動”!!!」
途端、ルークたち一行が姿を消すのだった。
ルークたちは、都市ミルディアに到着した。
初めてテレポートで移動した者達は、周囲を確認して驚いているようだった。
「マーシャ、ルーティア、荷馬車の運転を任せてもいいかな?
アリシアたちは、馬車に乗って。
おっと、メルディナさんも乗ってくださいね。」
「ルーク様はどうされるのですか?」
マーシャの質問に、ルークは答える。
「騎士たちを誘導します。
皆さんは、城に向かってください。」
ということで、急遽、ルークは8千の騎士を率いて、騎士の隊舎へと案内することにしたのだった。
ただ、8千人は多いので、半分にして2つの隊舎に分けることにするのだった。
それから、騎士の家族たちの家の手配も行うのである。
もちろん、この辺はマークが手配してくれていたので、すんなり家に移動してもらうのであった。
こうして、騎士とその家族の移動は完了した。
次にルークは城に移動する。
すると、既に、マークが手配してくれていたのだ。
「城内に関しては、私にお任せください。
それよりも、メルディナ様のお部屋はいかがいたしましょうか?
メルディナ様は、旦那様もいらっしゃるから、
市井で暮らしたいとのことですが。」
「貴族の屋敷が空いているので、そこを割り当てましょう。
グリディア殿に手配をお願いできますか?」
「お任せください。
すぐに手配しましょう。」
「それと、マーシャとルーティアもメイドとして使って結構です。
すぐに仕事を覚えるでしょうし。」
「左様ですか。
では、メイドとして登録しておくよう、手配しましょう。」
マークは、執事やメイドたちに指示を出していく。
流石は、元王の執事を務めた人物だ。
手配がうまい。
こうして、引っ越しは、その日のうちに終わるのだった。
ルークの荷物も、執務室に綺麗に並べられるのだった。
その日の夜。
ルークは、日誌に今日の出来事を書いていく。
それにしても、慌ただしい一日だった。
これから、静かな日々に戻るといいなぁと思いつつ、寝室へ向かうのだった。