37-4 皇帝陛下からの褒美。②
「さて、ルークよ、貴殿には褒美をやらねばならん。
しかも、今回の活躍は見事であった。
よって、領地を替えることとする。
現領地ルクサスメリルから、ミルディアに変更することとする。
よって、その西方と南方をそなたの支配下に置くことを許す。
西方の五都市と、南方の三都市には、伯爵を配置する。
その伯爵たちを、貴殿の手足として扱うことを許す。」
これは、かなりの大判振る舞いであった。
ルークはルーニア皇国西側を牛耳ったも同然だったのだ。
これには、クリシュナも含め、皆驚くのみであった。
しかし、一番困ったのは、ルークだった。
「陛下、それは、さすがに領地をもらいすぎなのではないでしょうか?」
だが、皇帝陛下は笑みを浮かべつつ、言い寄る。
「そなたの功績は、この程度でも不足しているくらいだ。
ラインクルド王国の件も含めてあるのだ。
受けてもらうぞ、ルークよ。」
ルークは回避不能であることを悟り、諦めることにした。
これには、マクドフェルド伯爵は拍手を送りたい気分になっていた。
マクドフェルド伯爵にとって、ルークは尊敬に値する騎士であったからだ。
しかも、西方の大半をルークが治めるとあって、喜ばずにはいられなかったのだ。
「さて、マクドフェルド伯爵、そなたにも褒美を与えねばならん。
聞けば、軍略において優れていると聞く。
ルークの補佐を見事にこなしたのであろう。
よって、貴殿には、『侯爵』の爵位を授ける。
そして、領地替えだが、都市ルクサスメリルの支配を許す。
都市メリアードは別の伯爵に任せることとする。」
マクドフェルド伯爵は突然のことに、驚き固まっていた。
「わ、私がよろしいのですか??
ルーク様の領地を賜るというのは・・・!!?」
「本来であれば、貴殿にも引き続き西の守りを任せるべきなのだろうがな。
人材がそれほど豊富ではないのだ。
中央部を守る貴族も必要だ。
そこで、貴殿に白羽の矢が立ったのだ。
貴殿には、王都守護を命じる。」
「承知致しました。
ルーク様の領地及び王都を、必ずや守り抜いて見せます。」
マクドフェルド伯爵は頭を深く下げるのだった。
さて、残りは、クロムワルツ侯爵とミルドベルゼ子爵のみであった。
一応クリシュナもいるのだが、クリシュナは別格の褒美がもらえるはずだった。
皇帝陛下はまず、クロムワルツ侯爵を見る。
「クロムワルツ侯爵よ、貴殿は見事クリシュナを助け、戦争を勝利に導いた。
その功績は大きいものだ。
よって、貴殿には、王都守護と中央部の取り纏めを担ってもらう。
更に、『公爵』の爵位を与える。
領地はそのままだが、中央部の貴族たちを取り纏める役を担うことになる。
よいな。」
「はっ、ありがたく、『公爵』の任、務めてまいりまする。」
クロムワルツ侯爵は念願だった、『公爵』の地位を手に入れることに成功したのだった。
次に皇帝陛下は、レイヴンを見やる。
「さて、ミルドベルゼ子爵、貴殿にも褒美を授ける。
貴殿は、西方の守護に着くことを命じる。
ルークより一つの都市を賜ると良い。
ルークよ、どこが良い?」
ルークは最もミルディアに近い都市名を告げることにした。
「では、都市アーデアでいかがでしょうか?」
「うむ。
では、ミルドベルゼ子爵よ、貴殿には、『伯爵』の爵位を与える。
都市アーデアの地を守護せよ。」
「承知しました。
必ずや、西方の地、守り抜きましょう。」
これで、レイヴンも昇進が決定したのだ。
念願の昇進だった。
皇帝陛下は最後に、クリシュナを見る。
「クリシュナよ、貴殿にも褒美を与えねばな。」
「父上、私は、皆の助けあって、戦争に勝てたのです。
私への褒美は、大したものでなくて結構です。」
クリシュナは遠慮がちに言った。
だが、クロムワルツ侯爵がすぐに口を挟む。
「いやいやお待ちくだされ、殿下。
殿下の采配なくば、今回の戦、勝てなかったかもしれませんぞ。
のう、ミルドベルゼ子爵殿。」
「そうですね。
殿下の見事の采配があったからこそ、
我らは生きていると思っておりますとも。」
クロムワルツ侯爵とレイヴンの追撃に、クリシュナは苦笑を浮かべる。
皇帝陛下はそれを聞き、笑みを浮かべる。
「家臣というのは、しっかりと見ているものだからな、諦めよ。
では、褒美を授けよう。」
皇帝陛下は大きな声で宣言したのだ。
「クリシュナよ、貴殿には二年後の春に、王位を譲ることとする。
まずは、これが一つ目よ。」
これには、皆固まる。
「ちょ、ちょっとお待ちください!!?
何故、今その宣言をなさるのですか??」
クリシュナは慌てふためく。
突然のことに、驚き過ぎていたのだ。
「余も歳だ。
最近、疲れやすくてな。
そろそろ執政をクリシュナに譲るつもりだったのだ。
その準備に二年あれば十分だと判断したのだ。
よって、本日より、王の仕事を担ってもらうぞ。」
これは決定事項だったようだ。
クリシュナは驚くものの、回避不可能だった。
「それともう一つだ、
ラインクルド王国の姫を貴殿の嫁として迎え入れることにした。
いい加減、結婚せよ。」
これもまた、クリシュナにとっては衝撃的な事実だった。
「嫁ですか・・・わかりました。」
これには、折れるしかなかった。
「それとだ。」
皇帝陛下はまだ続ける。
「レヴィも側室として、もらっておくがいい。」
これには、レヴィが固まった。
「父上!!?」
クリシュナは思わず叫んでいた。
だが、皇帝陛下は涼しい顔だった。
「おまえたちは、好きあっているのであろう。
いつも一緒にいるのだ、なんとなくわかる。
いい加減、妻帯し、身を固めよ。
そして、子孫を残せ!」
これには、言い返す言葉がなかったのか、クリシュナはだんまりとなる。
ルークとしては、クリシュナとレヴィが両想いであることに、納得したのだ。
いつもこの二人は、一緒にいる。
ならば、好き同士になってもおかしくはなかった。
レヴィはというと、どう言っていいのか、困惑している状況だった。
こんなに焦るレヴィも珍しい。
「というわけで、クリシュナの結婚式は、来月執り行うことにした。
これが最大の褒美じゃ。」
皇帝陛下は笑う。
「殿下、おめでとうございます。」
マクドフェルド伯爵は、すぐに拍手をして喜んだ。
クリシュナは複雑な表情だった。
「ルーク、貴殿は幾つになった?」
皇帝陛下の言葉に、ルークは自分の年齢を数える。
「今年で17になります。」
「では、貴殿の結婚式は、来年だな?
花嫁が四人いると聞いたが、誠か?」
「はい、四人います。」
これには、マクドフェルド伯爵とクリシュナが驚く。
クロムワルツ侯爵とレイヴンは既に知っていることだった。
「ルーク様も、来年結婚式ですか。
いや、めでたいことです。」
マクドフェルド伯爵は大いに喜ぶ。
皇帝陛下も、笑みを浮かべている。
「クリシュナよ、これくらい嫁を貰っておけ。
ルークはしっかりと、嫁を迎えておったぞ。」
「見習うべきなのでしょうか・・・」
クリシュナは困惑気味だった。
そんなわけで、ルーク達全員に褒美が与えられた。
ルークは今後を含め細かいことを皇帝陛下に質問することにした。
「陛下、我らは敵軍を壊滅したことにより、
西方側は軍事力が大きく落ち込んでおります。
どう対処致しましょうか?」
「そうだな。
王都からも兵を派遣する手はずとなっている。
中央部の貴族たちからも、半数近くの軍を派遣する予定だ。
特にミルディアは要だ。
都市ルクサスメリルの軍の半分を駐留させることを許す。」
「承知しました。
一旦、兵をルクサスメリルとメリアードに引き上げます。
そして、ミルディアに派兵することにします。」
「うむ。
小国連合も攻める気配はないだろう。
手早く進めると良い。」
「承知しました。」
それからは雑事を話した後、解散となった。
ルークとマクドフェルド伯爵は王城を去り、急ぎミルディアへと転移するのだった。