37-2 褒美。
翌日。
ルークは、小さな袋を用意した。
そして、両手を貝のように合わせる。
すると、両手の中に、金貨10枚が出現したのだ。
それを袋に詰め込む。
30枚ほど詰め込むと、一旦、口を縛る。
そして、今度は袋を片手で触れていると、開いた手から、全く同じ袋が出現する。
それを繰り返す。
次に、中くらいの袋を用意して、小袋の中の金貨を詰めていく。
中くらいの袋に100枚の金貨を詰めていく。
これを二袋作って、完成だった。
小袋は大量にあった。
「よし、準備完了だ。
これで数は足りているはずだ。」
ルークは数を数え、小袋の数が足りていることを確認する。
「マーク、申し訳ないが、これを謁見の間に運んでほしい。
執事、何人くらいいるだろう?」
「10名用意します。
少々お待ちください。」
マークは素早く動く。
「・・・早い。」
ルークはマークの動きに驚くのだった。
元玉座の間、現在の謁見の間に、騎士数名が集っていた。
無論、マクドフェルド伯爵と騎士団長も揃っていた。
ルークが入ってくると、皆敬礼を行う。
ルークも敬礼を行う。
これから、報奨金を贈呈するのだった。
提案者は、ルークだった。
戦争が終わったのはいいのだが、いつ帰れるかわからない状況だった。
少なくとも、あと25日間は決まらない予定だった。
クリシュナたちが帰ったばかりだったからだ。
クリシュナが王都に到着して、皇帝陛下に説明した後に、もろもろが決まるからだ。
それまで、約1カ月かかる。
となると、報奨金の贈呈が大幅に遅れるのだ。
それではかわいそうだと思い、ルークが提案したのだ。
しかし、お金はないので、ルークが用意することにしたのだ。
ルークは『創造系魔法』を駆使して、お金を用意したのだ。
ある意味ズルではあったが、そこは気にしない。
これくらい、問題ないのだ。
敵の首を獲り、活躍した騎士たちに報奨金を渡していく。
無論、ルーク直々に渡すのである。
騎士たちは感激していた。
英雄と呼ばれるルークより頂けるとは思っていなかったからだ。
ある者は、感動のあまり涙していたくらいだ。
名前を呼ばれた騎士が、ルークの前に出る。
ルークは、小さな袋を手にし、騎士に渡していく。
そして、次の騎士の名前が呼ばれて、同じことを繰り返していく。
「次、メリッサ殿、前へ。」
メリッサは唐突に呼ばれたことに驚いていた。
そして、ルークの前に立つ。
「ご苦労様でした。」
ルークより小さな袋を受け取る。
「はい、ありがとうございます。」
メリッサは頭を下げ、下がる。
メリッサは、魔法騎士を討ったことによる報奨を受けたのだった。
そして、いよいよ、終盤となった。
「次、クロウ殿、前へ。」
クロウは、緊張した面持ちで、ルークの前に立つ。
「ご苦労様でした。」
ルークより、中くらいの袋を受け取る。
ずしりと重かった。
「ありがとうございます、閣下!」
クロウは頭を下げ、下がる。
そして、重い袋をしっかり持ち上げると、次の人に譲るのだった。
最後は、ゼルディアだった。
「次、ゼルディア殿、前へ。」
ゼルディアは、いつもの調子で、ルークの前に立つ。
「ご苦労様でした。」
ルークより、中くらいの袋を受け取る。
「ありがとうございます、閣下!」
ゼルディアは頭を下げ、下がる。
そして、重い袋をしっかり持ち上げると、下がるのだった。
こうして、活躍した者たちに、報奨金が配られるのだった。
ちなみに、中くらいの袋を受け取ったのは、クロウとゼルディアのみであった。
二人は、競うように敵将の首を大量に持ってきたからだった。
こうして、報奨金授与はつつがなく終了するのだった。