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創造系魔法使いのスローライフ!?  作者: 稀硫紫稀
第37章 引っ越しすることになりました。
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37-1 都市内把握。

クリシュナが王都ミルディアを去った当日。

ルークはこの城で最も広い大広間に、城内で務める人間を全て集めていた。

かなりの数がいたが、そのほとんどがメイドだった。


「全員に告げます。

 僕は、皇帝陛下直属の騎士であり、魔法騎士、

 公爵のルーク=フェイブレインと申します。

 しばらくの間、代理ではありますが、この都市を管理することになりました。

 よろしくお願いします。」


ルークの言葉に、皆が頭を下げる。

彼らは非戦闘員である。

安易に殺すことは許されていない。

だが、彼らには、逆らう力はないに等しいのだった。

だからこそ、従うほか、方法が無かったのだ。


「既に、戦争は終結し、この地は、ルーニア皇国のものとなりました。

 ミーディアス王国は滅んだのです。

 その点をご承知しておいてください。

 さて、皆さんには、いつも通り業務を続けて頂きたいと思っています。

 この城の代表は僕になりますので、何かあれば僕に相談してください。

 何か質問はありますか?」


誰も質問する様子はなかった。

ルークはそれを確認すると、うなずく。


「では、本日より業務に戻って頂きます。

 よろしくお願いしますね。」


ルークはそう述べると、解散となった。



全員解散後、二名の者がルークの前に残っていた。


「ルーク様、我らは、政務官と執事代表を務める者でございます。

 是非とも、自己紹介をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」


執事服の男性が代表して述べる。


「はい、ではお願いします。」


ルークがそう述べると、まずは執事服の男性が、自己紹介を行う。


「私は、マークと申します。

 執事とメイドを統括する執事統括官です。

 よろしくお願い致します。」


「マークですね、こちらこそよろしくお願いします。」


ルークはマークに手を差し出す。

これには、マークが驚く。

マークも手を差し出し、二人は握手を交わす。

マークは手を放した後も、驚いた表情を浮かべていた。


「私は、政務官の統括を務める、グリディアと申します。

 政務に関することであれば、何でもお聞きください。

 よろしくお願い致します。」


「はい、こちらこそよろしくお願いしますね。」


またも、ルークは手を差し出す。

グリディアはルークを見やりつつも、手を差し出し、握手を交わす。


「ルーク様、あなた様は変わった方ですな。

 我らのような下々のような者にまで配慮されるとは。」


グリディアは正直に感想を述べた。


「そうですか?

 これから、お二人にはお世話になるのですから、

 これくらいは当然だと思っていますよ。

 何か、おかしいですか?」


そんなルークの言葉に、マークとグリディアは顔を見合わせる。

二人は、ちょっと困った。

ルークは貴族であるにも関わらず、普通に接してくれることに、違和感を感じたのだ。

まるで、貴族らしくないのだ。

貴族ならば、命令口調で指示するのが普通なのだ。

だが、ルークは違った。

まるで、こちらに寄り添ってくれているように感じたのだ。


「いえ、おかしくはないのですが・・・」


グリディアはどう答えるべきか、困った。

だが、ルークはそれも気にすることなく、早速相談に移る。


「では、グリディア殿、まずは、この都市の内政の状況について

 教えてもらえますか。

 細かいことでも構いません。

 マーク、執務室にお茶を用意してください。

 僕と、彼の分をお願いしますね。

 じゃ、行きましょうか。」


ルークはそれだけ言うと、執務室に向かって歩き出す。

その姿に、マークとグリディアは唖然としたのだ。


「やはり、変わっておられますな。」


「あぁ、これは、いつもの接し方では通じないかもしれないな。」


二人は、そう呟くと、ルークについていくのだった。



ルークは執務室に入ると、ソファに座る。

マークは直ちにお茶の準備を行う。

グリディアは、ルークの対面のソファに座り、現在の内政状況を伝えた。

現状、一番の問題は、軍事だった。

兵士がいないのだ。

それもそのはずだった。

ルークの軍が壊滅したのだから。

この都市には、七つの騎士団があり、現在残っているのは、訓練生のみだったのだ。

一部、病や怪我をしている騎士もいたのだが、その数を足しても、全盛期の三分の一にも満たないのだった。


「ちょっとやりすぎたかな・・・」


ルークはそう呟く。


「いや、戦争なので、致し方ないことでしょう。

 目下の目標としては、軍事力を元に戻すことでしょうな。

 退役した騎士たちや傭兵を取り込む必要があるでしょうな。

 ルーニア皇国としては、どのように対処される予定なのでしょうか?」


グリディアの問いに、ルークは困る。

この辺はまだ決まっていなかったのだ。


「うーん、その辺は、まだ決まっていませんね。

 最善の策としては、軍の移動でしょうね。

 少なくとも、1万の軍勢は確保したいところですね。」


「そうですな。

 西側もロクに軍が残っていないと予想しております。

 もし小国連合が攻めてくれば、対応できませんぞ。」


元ミーディアス王国西側にある小国連合は、攻めてくる気配は一切無い。

だから安心しているのだが、確かに現在攻め込まれると、元ミーディアス王国西側はあっさりと飲み込まれるのだ。


「その辺は、皇帝陛下の判断次第かな。

 少なくとも、王都ルーニア付近の軍をこちらに移動することは可能なはずです。

 あの辺は、戦争に兵を狩り出す機会が大きく減ると思いますからね。」


王都周辺は、南のラインクルド王国と同盟を組んでいるため、軍の移動が容易な状態だった。

よって、半数程度、こちら側に流しても、問題はないはずだった。

その辺の判断は、皇帝陛下次第だった。

だが、クリシュナが状況を理解しているので、進言してくれるだろう。


「そうですか。

 しかし、急ぐべきでしょうな。

 攻め込まないと思われますが、小国連合も侮れない存在です。」


「そうですね。

 僕の方からも、早めに対処して頂くよう、対応してもらいましょう。」


「ですが、ルーク様がおられる間ならば、なんとでもなるかもしれませんな。

 あなた様は、ルーニアの英雄ですしな。

 英雄がいると知れば、まずは攻め込むことはないでしょう。」


グリディアの言葉には、確信があった。


「そうなんですか?

 僕は、英雄と呼ばれているだけで、大したことはしてませんが。」


その言葉に、グリディアは驚く。

大したことをしていないと言う英雄がいるとは思わなかったからだ。


「いえいえ、ルーク様の噂は、この国・・・いや、都市にも広まっておりますぞ。

 3万の軍勢を壊滅させた噂は、衝撃的だったのですぞ。

 前王も、驚愕しておられたくらいなのですから。」


グリディアは、当時を思い出し、説明していた。


「そうなんですか?

 僕は、魔法を一撃加えただけで、他に大したことはしてないんですが・・・」


ルークは困りながら、そう告げた。

その一撃が、英雄と呼ばれる所以(ゆえん)となったのだが。


「ともかく。

 ルーク様がここにいる限り、攻めてくることはない見込みです。

 それから、一つ提案なのですが、騎士団の改革をされてはいかがでしょうか?」


「どういうことですか?」


ルークは疑問符を浮かべる。


「現在、この都市には、七つの騎士団があります。

 前王が特に処置をしなかったのですが、元々は、貴族に軍を預けるために、

 七つの騎士団に分けたのですよ。

 ところが、最近指揮系統が曖昧となり、貴族が軍をうまく扱えない状況が

 続いていたのです。

 結果、軍をうまくまとめられない状況が続いておりましてな。

 それに、我が国は敗戦しました。

 もはや、七つもの騎士団の存在意義がありません。

 一つ、もしくは二つに統括し、軍の再編を行うべきだと思いますが、

 いかがでしょうか。」


ルークは、考えた末、うなずく。


「そうですね、多くても意味はありませんし、国もなくなりました。

 二つに纏めることは可能ですか?

 人数が多くなれば、騎士団の数を増やしましょう。

 それで良いのではないでしょうか?」


「承知しました。

 二つに纏めましょう。

 今は訓練生のみとなっておりますので、纏めるのは簡単なことです。」


「それから、鎧の変更もお願いできますか?

 ルーニアの鎧にデザイン変更で。」


「それも、承知しました。

 ちなみに、政務官の服にも変更をいれましょうか?」


「それは不要だと思います。

 確か、規定はなかったはずなので、現状維持で。」


ルークとグリディアの話は、内政から少し外れたりしたものの、有意義な会話ができたのだった。

マークは、傍で控えつつも、このルークが主となればいいなと思うのだった。

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