36-6 戦争終結。
クリシュナは、3万の兵が戻った時点で、皇帝陛下に“思念連結”にて報告していた。
「陛下、これにて、ミーディアス王国は完全に滅びました。
ご安心ください。」
「よくやった。
皆が戻り次第、褒美を与えよう。
無論、クリシュナ、貴殿も含めてな。」
「ありがとうございます。」
クリシュナは感謝した。
「して、今回戦争に参加してみて、どうだった?」
突然の問いに、クリシュナは一瞬戸惑う。
だが、きちんと返答していた。
「はい、最初は何もできないと思っておりました。
一時とはいえ、指揮権を放棄しようとしていました。
だが、クロムワルツ侯爵に支えられ、なんとかやってこれました。
戦争は、恐ろしいものであることは、よく理解できました。
自身の采配一つで、どうとでも変わるのだと、よくわかりました。」
「そうか。
それが分かれば結構だ。
余はな、貴殿に戦争とはどういったものか理解してもらいたかったのだ。
よって、今回は大将を任せたのだ。
良い経験をしたようだな。」
皇帝陛下はクリシュナを労っていた。
「はい、良い経験をしたと思っております。
この経験を今後も生かすつもりです。」
「うむ、その意気だ。
では、王都ルーニアに戻ってくるがよい。
ラウガⅣ世殿も連れてまいれ。」
「我が軍はどういたしましょう?」
「当面は、ルークに王都ミルディアを任せよ。
南方侵攻軍は引き返すと良い。
それから当初の予定通り、敵の貴族たちは、爵位はく奪の上、
国外追放処分とせよ。」
「承知しました。」
ここで、“思念連結”は切れる。
クリシュナは、大きくため息を吐くのだった。
午後。
会議が開かれることになった。
主要メンバーは会議室に集まっていた。
「さて、皇帝陛下より指示を頂いた。
南方侵攻軍は退却する。
無論、ラウガⅣ世殿の護送を兼ねる。」
クリシュナは次に、ルークを見る。
「ルークとマクドフェルド伯爵は、このまま王都に待機せよ。
2万の軍勢も待機の指示が出ている。」
「了解しました。」
「それから、捕らえた貴族たちは、全員爵位はく奪の後、国外追放せよ。
これも、皇帝陛下の指示である。
これは、ルークに任せる。」
「了解しました。」
クリシュナは一通り、皇帝陛下の命令を伝えると、レヴィを見る。
「レヴィ、ここから王都までどの程度かかる?」
「東方ルートを使うのであれば、最短でも21日かかります。
南方ルートであれば、27日かかります。」
「どちらにせよ、1カ月はかかるのか。
南方ルートで戻るとしよう。
クロムワルツ侯爵も、よいな?」
「承知しましたぞ。」
「ルーク、済まないが、我らは先に戻る。
皇帝陛下の命令があるまで、待機していてくれ。」
「わかりました。
我らは王都守備に残ります。」
ルークの言葉に、クリシュナはうなずく。
「では、出発は明日とする。
準備を急がせよ。」
こうして、会議は終了するのだった。
翌日。
クリシュナは、執務室をルークに譲ると、さっさと王城を出た。
本来は、“瞬間移動”で戻っても良かったのだが、一応大将である。
兵士たちと一緒に退却することを選んだのだった。
彼もまた、一兵士として過ごしている気分であったのだった。
戦争は終結した。
それと同時に、ミーディアス王国は滅んだ。
これにより、ルーニア皇国は大きく領土を増やすことになるのだった。