36-5 降伏宣言。
翌日。
玉座の間に、ラウガⅣ世とクリシュナら主要メンバーが集まっていた。
ラウガⅣ世は更に老けたように疲れていた。
彼の心の中には、絶望の色しかなかったためだった。
ラウガⅣ世の手元には、降伏宣言の原稿が握られていた。
そのラウガⅣ世の隣には、魔導士隊が控えていた。
魔導士隊が彼の発言を“伝令”にて、ミーディアス王国中に流すのである。
「では、魔法を解放します。
よろしいですね?」
魔導士の言葉に、ラウガⅣ世は力なくうなずく。
魔法が解放された瞬間、ラウガⅣ世は、原稿を読み上げる。
『皆の者、余は、ミーディアス王国の王ラウガⅣ世である。
本日、この日をもって、我がミーディアス王国は
ルーニア皇国に降伏することを宣言する。
我がミーディアス王国はことごとく、ルーニア皇国の軍勢に敗れた。
もはや戦う力は一切無い。
よって、我らは、降伏するのである。
皆の者よ、この宣言に従い、剣を置いて欲しい。
もはや戦う必要はない。
全てはルーニア皇国に従うのだ。
これは、ラウガⅣ世の最後の命令である。』
ラウガⅣ世の宣言が終わると、“伝令”の魔法は解除された。
これにて、降伏宣言はお終いだった。
なお、このメッセージは、ミーディアス国内全土に広まったはずである。
よって、聞いていない者は一切いないはずなのだ。
「ご苦労様でした。
ラウガⅣ世殿を客室へお連れしろ。」
クリシュナがそう告げると、兵士はラウガⅣ世を伴って退出していった。
「さて、我らの軍も動かしましょう。
では、殿下、行ってまいります。」
クロムワルツ侯爵はそう告げると一礼して、退出していく。
クロムワルツ侯爵は、軍を三つに分けて、西方の都市へと進軍するのである。
クロムワルツ侯爵の補佐として、レヴィが付いていく。
無論、ベルガーも一軍を率いていくため、既に出立していた。
この王都に残ったのは、ルークとマクドフェルド伯爵の軍のみだった。
そして、クリシュナとお世話係のメイドもである。
クリシュナの補佐であったレヴィの代わりとして、メリッサを配置した。
メリッサならば、報告関連はお手の物だった。
ルークは王城にて、引き続き待機することになるのだった。
一方、西方の貴族たちは、この降伏宣言を聞いて、ミーディアス王国が滅んだことを悟った。
誰も抵抗を考えず、降伏することが決定していた。
後は、自分の身のことばかり考えるのだった。
派遣した3万の軍勢は、貴族を捕らえた後、連行して王都ミルディアに戻ってきた。
戦争をすることなく、戻ってきたのだった。
そう、西方の貴族たちは、あっさりと降伏したのである。
そして、西方も完全に支配されることになるのだった。
これにて、ミーディアス王国は完全に滅ぶのだった。