36-4 南方侵攻軍と合流。①
翌日。
昨夜の時点で、王都に残っていた貴族たちは家族も含め捕らえられ、全員投獄された。
これにより、王都で反抗できる勢力は無くなったのだった。
王族は客室に幽閉したままである。
そして、王都内は、静寂に包まれていた。
民衆が反抗する気配もなかったのである。
ルークとマクドフェルド伯爵は、王城を出て、南側の城外門に移動していた。
そろそろ、南方侵攻軍が見えるはずだった。
「あれは、そうではないでしょうか?」
マクドフェルド伯爵が指さした方向に、軍隊が進軍する姿が見えた。
旗から判断して、南方侵攻軍だった。
クリシュナたちは、一日遅れで王都ミルディアに到着するのだった。
クリシュナの出迎えはルークとマクドフェルド伯爵が行った。
クリシュナはルークと握手を交わすのだ。
「ルーク、よくやってくれた。
王都は制圧したのだな。」
「はい、既に制圧済みです。
国王ラウガⅣ世も捕らえております。」
「そうか。
では、王城に向かおう。」
こうして、主要メンバーのみで、王城に向かうのであった。
王城の会議室にて、主要メンバーが揃った。
これから、降伏宣言、そして西方への対応が話し合われるのだ。
「まずは、皆ご苦労であった。
こうして、目的の王都制圧も完了した。
皆の働きのおかげであると思っている。」
クリシュナは、皆を褒めた。
「さて、ラウガⅣ世に降伏宣言をさせるつもりなのだが、ルーク、可能か?」
「本人を呼びましょうか?」
「そうだな。」
ということで、ラウガⅣ世は急遽呼び出された。
無論、監視の兵士付きである。
「余に何をせよというのだ?」
ラウガⅣ世は疲れた表情で呟く。
「王都を支配された時点で、ミーディアス王国は敗北が確定したと
我々は判断している。
よって、降伏宣言をして頂きたい。」
クリシュナの言葉に、ラウガⅣ世は反論する。
「まだ、西方の貴族たちが残っておる。
まだ、我らは負けたわけではないのだ!!
いずれ兵を興し、王都に攻め入ってくるはずだ!!」
強気の姿勢だが、それはあくまで強気なだけだった。
根拠が全くなかったのだ。
そこで、現実を突きつけることにした。
「メリッサ殿、西方の兵力を教えてあげてください。」
ルークの命令に、メリッサはうなずく。
「西方の軍事力ですが、多く見積もっても、500程度です。
もはや、軍を形成するだけの余力はありません。
2万の軍勢を派遣した時点で、各都市の兵力は無いに等しい状況です。」
現実を突きつけられ、ラウガⅣ世はその強気な態度が崩れる。
「そんな、馬鹿な・・・
2万の軍勢はどうしたのだ!!?」
「2万の軍勢は、我ら南方侵攻軍によって壊滅した。
もはや、軍勢は無いに等しいのだよ。」
クリシュナの言葉に、ラウガⅣ世は絶望した。
「では、もはや、我らは、抵抗する力が無いということなのか・・・」
ラウガⅣ世は、もはや打つ手がないことに気が付いた。
西方の助けは見込めないのだ。
彼の中で、負けが確定した瞬間であった。
「さて、ラウガⅣ世殿、あなたには、もはや逆転するだけの手段はない。
大人しく降伏されよ。
もはやこの国には、戦うだけの余力が無いのだ。」
クリシュナは、事実を突き付け、降伏を促す。
すると、ラウガⅣ世は諦めたのか、コクリと首を縦に振るのだった。
こうして、ラウガⅣ世自身が降伏を認めた瞬間であった。
降伏宣言することを了承したラウガⅣ世は、部屋を退出していた。
降伏宣言の文章は、後程作成され、発表される予定だった。
次に、西方への対応だった。
降伏宣言を聞いてもなお抵抗してくる場合、軍を派遣する必要があるのだ。
「ここは、我ら南方侵攻軍におまかせを。
軍を1万ずつに分割し、3か所を一気に攻められるように致しましょう。
無論、破城槌もそれぞれの軍に持たせましょう。」
クロムワルツ侯爵の提案に、全員がうなずく。
北方侵攻軍は2万の兵力しかないので、王都周辺の守備に当てられたのだ。
西方対策はこれで終いだった。
後は、細々とした取り決めをした後、解散となった。
ルークは王城に残ることになったのだった。