36-3 王都制圧。
マクドフェルド伯爵の1000の兵士が王城を包囲した後、簡単な打ち合わせが始まる。
「城門内部には、ほとんど敵がいない状態です。
城内には、玉座の間に数人いる模様ですが、
おそらくそこに例の魔法騎士がいるものかと。」
メリッサの報告に、皆がうなずく。
「マクドフェルド伯爵、ここより先は、僕ら4人で攻め入ります。
僕らが戻るまで、待機していてください。」
「承知しました。
御武運を!」
ルークら4人は、まっすぐ城門に向かって歩き出す。
射手もいないのだろう、攻撃を仕掛けてくる様子もなかった。
ルークは、城門を無詠唱の魔法であっさりと破壊する!
すると、内部に、騎士が数名いた。
彼らは、いきなり門を破壊されたことに驚いていた。
その瞬間、クロウとゼルディアが動いていた!
2人は、騎士たちを全員屠ったのだった!
露払いをしたのだ。
「閣下、参りましょう。」
クロウの言葉に、ルークはうなずく。
そして、4人は、城内へと足を踏み入れるのであった。
城内に入った後、ルークが一旦全員を止める。
「ちょっと準備しましょうか。」
ルークは3人を見やると、結界術を施す。
4人はそれぞれ薄い結界に包まれる。
「これは!?」
クロウが驚く。
「念のための結界術です。
これで、防御は完璧です。」
ルークはともかく、この3人には、いまだ“軍団魔法”の効果が残っているので、結界術は不要だった。
だが、ルークは念のため、3人に結界術を施したのだ。
念には念の入れようだった。
「では、参りましょうか。」
ルークはそう告げると、まっすぐに玉座の間に向かって歩き出す。
その間、衛兵が数人襲い掛かってきたが、クロウとゼルディアが始末していった。
そして、玉座の間にたどり着く。
玉座の間の扉は両扉となっている。
クロウとゼルディアが、それぞれ片側のドアを開ける。
中には、7人の騎士と、玉座に座る華美な鎧を着た壮年の男性がいたのだ。
壮年の男性は、間違いなく、王だろう。
「失礼ですが、あなたがラウガⅣ世、ご本人に相違ないでしょうか?」
ルークの問いに、玉座の主はうなずく。
「貴様ら、陛下の御前にて、無礼であろう!」
1人の騎士が叫ぶが、ルークは無視した。
「一言だけいいます。
既に勝負は見えました。
降伏してください。」
ルークの言葉に、中にいた騎士たちが殺気立つ。
ルークはこの騎士たちこそ、魔法騎士であると判断した。
だが、思っていたほど魔力はあまり高くない。
普通の騎士より少し強い程度だったのだ。
その時、ラウガⅣ世が告げた。
「降伏はせぬ。
我が国は、ルーニアごときに屈しはせぬ!!」
どうやら、話を聞く気はないようだ。
その瞬間だった。
騎士たちが剣を引き抜き、襲い掛かってきたのだ!
だが、ルークたちも動いていた。
ルークは1人の騎士と剣を交える。
瞬間、剣をへし折り、その首を斬り取ったのだ!!
次に2人目に襲い掛かる!
2人目の剣も、普通の鋼の剣だった。
ルークの剣が相手の剣をへし折ると、その首を斬り捨てる!!
次の敵を探そうとしたものの、ゼルディア、クロウ、メリッサが交戦中だった。
ゼルディアは、1人目の騎士をあっさりと屠るも、2人目の騎士と対峙していた。
敵騎士は、ゼルディアの実力を知って躊躇していた。
その強さに、焦りを覚えたのだろう。
そんな敵騎士へとゼルディアはゆっくり近づく。
敵騎士は、下がれない事を承知の上で、前に進む覚悟を決める。
「いやぁぁぁぁっ!!!!」
雄叫びを上げ、ゼルディアへと突貫する!
だが、ゼルディアは冷静だった。
剣をあっさり弾くと、胴薙ぎにて、斬り払う!!
血が噴き出し、敵騎士は崩れた。
あっけない最後であった。
メリッサは機動力を生かして、1人目を軽く屠っていた。
2人目の騎士は、その動きの速さに、驚いているようだった。
そこに隙が生まれる!
メリッサが突撃すると、特に抵抗する間もなく、敵騎士の両腕が吹き飛ぶ!!
「ぐあああぁぁぁっ!!!!」
両肘から血を吹き出しながら、敵騎士は絶叫する。
瞬間だった!
敵騎士の首が斬られ、首からも血を吹き出す!!
メリッサの動きに翻弄され、あっさりと殺害されるのだった。
クロウのみ、魔法剣をもつ剣士と互角の戦いを演じていたのだ。
どうやら、この騎士が隊長格のようだ。
互角だったのは最初だけで、クロウ優勢に進んでいく!
やがて、クロウは敵を押し込んだ瞬間に、敵の首を斬り裂いたのだ!!
首を斬り裂かれた遺体は、血をまき散らし、倒れる。
これにて、魔法騎士の集団は、全滅したのだった。
残りは、王ただ1人だった。
王は立ち上がるものの、メリッサによって阻まれる。
メリッサがショートソードを突き付けた瞬間、あっさりと後ろに倒れたのだ。
「ここまでです。
降伏してください。」
メリッサの言葉に、ラウガⅣ世は何も言えなくなり、佇むのみだった。
「くっ、余は・・・負けたのか・・・」
ラウガⅣ世はがっくりと、崩れるのだった。
ルークは、マクドフェルド伯爵を呼び出し、軍勢の一部を城内に招いていた。
城内にいた、王族を全て捕らえたのだ。
そして、王とともに、客室に幽閉したのだった。
地下牢でもよかったのだが、相手は王だ。
ここは、丁重に扱うことにした。
「さて、王城の制圧が完了しました。
残るは、この王都にいる貴族たちを拘束することです。
メリッサ殿、申し訳ありませんが、隊を率いて貴族たちを逮捕してください。
逮捕した後、王城の地下牢に隔離してください。」
「承知しました。」
メリッサは、すぐに動き出す。
「我らはいかがいたしましょうか?」
クロウとゼルディアが聞く。
「そうですね、とりあえず、隊を率いて、王都内の警戒に当たってください。
民衆による反乱が無いと言い切れませんからね。
グレッグ団長にもお伝えください。」
「承知しました。
では、行ってまいります。」
2人は頭を下げると、退出していった。
「後は、合流を待つのみですな。」
マクドフェルド伯爵の言葉に、ルークはうなずく。
ルークは、玉座の間に落ちていた魔剣を拾う。
これは頂くとしよう。
後で役に立つだろう。
これにて、王都ミルディアは完全に制圧されたのだった。