36-1 3万の軍勢。
クリシュナが三つ目の都市を制圧して、二日後。
ルークたちは、王都ミルディアの近くまでやってきていた。
目の前には、3万の軍勢が展開していたのだ。
ルークは軍勢を一旦停止し、対峙する。
ルークはすぐさま、軍議を開くのだった。
「メリッサ殿、敵軍の情報をお願いします。」
「はい。
目の前には3万の軍勢が展開しております。
ルーク様が懸念されていた強力な魔力を持つ者はいない模様です。」
どうやら、魔法騎士はいないようだ。
「王都内はどうでしょうか?」
「確認します。」
メリッサは、“情報整理”で王都ミルディア内を確認する。
「報告します。
城外門に100名程度の兵士が詰めております。
城外門は4つありますので、400名ほどの兵力が控えている状況です。
王城には、ほとんど兵士の姿はありません。」
どうやら、全軍をほぼ出し切ったようだ。
「では、目の前の3万の軍勢を打ち破れば、
王都支配も容易となる可能性がありますな。」
マクドフェルド伯爵はそう言うものの、ルークは違った。
「いえ、例の魔法騎士が控えている可能性が髙いです。
容易とはいかないでしょうね。」
「そうでしたな、これは、失礼致しました。」
「ともかく、今日はここで一旦休みとしましょう。
明日朝より、敵軍3万に攻め込みます。
前回同様、“軍団魔法”を使った後、攻め込みます。
それまでは、待機願います。
あとは夜襲に備えておいてください。」
「承知しました。」
これにて、軍議は終了となった。
後は、明日の朝、攻め込むのであった。
翌日、朝。
ルークは攻撃を開始する前に、レヴィとの定時連絡を行う。
「ルーク様、どういう状況でしょうか?」
「現在、我らの目の前に、3万の軍勢が展開している状態です。
これより、こちらから攻める予定です。
壊滅させた後は、王都に侵攻する予定です。」
「では、本日中に、王都を支配する予定なのでしょうか?」
「可能であれば、そうします。
ただ、例の魔法騎士の件がありますので、簡単に行かない可能性もあります。
ともかく、明日の合流まで、片付けられるよう努力してみるつもりですよ。」
「承知しました。
では、お気をつけてください。」
「はい、ありがとうございます。」
ここで、“思念連結”は切れた。
次に、朝の軍議の予定だった。
軍議には、いつものメンバーが集まった。
「では、本日、敵軍に攻撃を仕掛けます。
僕が“軍団魔法”を使った後、総攻撃を仕掛けますので、
よろしくお願いします。
3万の軍勢が壊滅した場合、再度軍議を開きます。
よろしいですね?」
「はい、問題ありませんぞ。」
「では、参りましょう。」
軍議はすぐに終わり、ルークはテントより外に出る。
そして、魔法を唱え、解放する!
「“軍団魔法”!!!」
瞬間、2万の軍勢は淡い光に包まれる。
ルークは剣を抜き、叫ぶ。
「全軍、出撃!!!」
その号令と共に、前衛の騎士たちが動き出す。
戦争が開始されるのであった。
クロウは前回同様、隊を率いて、前線で戦っていた。
敵をどんどん屠っていくのである。
その強さに、敵は逃げ腰になっていた。
それもそのはずだった。
クロウは先ほどから、敵を真っ二つに斬り裂いていたのだから。
だが、肝心の騎士隊長や騎士団長の姿がなかったため、少しイライラしていた。
手柄を立てるために、前衛を務めているのに、肝心の首が手に入らなかったからだ。
「オラオラ、どけどけどけ!!!」
クロウは叫びながら、敵軍を斬り裂いていく。
若干、突出気味だったのだが、そこは気にしていない。
そして、ようやく、隊長らしい男と対峙する。
クロウは素早く動くと、敵は剣を構え、防御の構えを取る。
だが、クロウは、剣ごと敵の首を刈り取って見せたのだ!!
そのあまりの強さに、敵軍は恐怖していた。
やがて、敵軍は戦列を乱し、崩れていくのである。
クロウ同様、ゼルディアもまた、敵将の首を獲ることができずにいた。
どうも、後方に控えている可能性が髙い。
ならば、前線を崩していくのみである。
ゼルディアは、剣に風を纏わせ、どんどんと敵を斬り裂いていく!
やがて恐慌状態となっていく敵軍を前に、更に前に進む!
隊の騎士たちも、ゼルディアに遅れまいと進んでくる。
やがて、ゼルディアは一人の貴族らしき立派な鎧を着た剣士と対峙する。
「貴様、私が誰かと知っての行為か!」
ゼルディアは初見だったから、知らない。
知る必要はなかった。
ゼルディアは、特に答える必要もなく、剣を振るう。
剣士はあっさりと倒れ伏し、逃げ出す。
だが、ゼルディアが逃すわけがない。
ゼルディアの剣が一閃し、その首を斬り取ったのだ。
首から血が噴き出し、辺り一帯が真っ赤に染まる。
それを見た護衛の騎士たちは逃げ出した。
どうやら、大将格だったようだ。
敵軍はゼルディアの目の前で崩れていく。
既に殲滅戦と化していたのだ。
ゼルディアは首を腰に括り付けると、次の標的を探すのだった。
「そろそろ、終わりますね。」
ルークの言葉に、メリッサはうなずく。
敵の軍は崩れ出し、逃げ出し始めていたのだ。
もはや、統制が取れない状態だった。
ある者は、城外門から王都内部へと逃げ込んでいた。
また、ある者は逃げる途中で、こちら側の騎士によって斬られていた。
完全に、北方侵攻軍が優勢だったのだ。
そして、敵軍が総崩れとなった。
後は、各個撃破されていくのみであった。
こうして、ルークの魔法効果により、敵軍は壊滅したのだった。