3-10 戦争終了!
戦争は終了した。
敵右翼が崩れた後、中央、左翼と順に崩れていったのだ。
敵は潰走したが、追撃はしなかった。
追撃しないのもルールだったからだ。
「エイエイオー!!!」
一人の騎士が剣を掲げ、掛け声を上げる。
それに従い、皆も追従するように、同じように叫ぶのだった。
ルークたちはテントに引き返していた。
皆、ぐったりしていた。
ぐったりしていたが、けが人がいなかったのは奇跡だった。
戦争に勝ったとはいえ、あれだけ走り回ったのだ。
疲れていて当然だった。
だがしかし、お腹は空くのである。
ルークは、食事の配給に並ぶのであった。
夜。
ルークは、敵将軍の首を片手に、ダーナスの元を訪れていた。
「敵将軍の首です。
これを受け取ってください。」
布に包まれた首を渡そうとすると、あっさりと断られた。
「そいつはお前の手柄だ。
俺が受け取るわけにいかん。」
「じゃ、誰に渡せばいいのでしょうか?」
「誰って、決まってるさ。
伯爵様だよ。」
そう言って、ダーナスは立ち上がる。
「どちらへ?」
「伯爵様のところへ行く。
ついて来い。」
ルークも立ち上がると、ダーナスについていくのだった。
一番大きなテントの前で、ダーナスが「ここで待て」と言って、テントの中に入っていく。
ルークはしばし待つと、ダーナスが出て来た。
「入っていいそうだ。」
「はい、じゃ、失礼します。」
ダーナスとルークは一緒にテントに入る。
正面には、伯爵らしき立派な衣装を着た人物が椅子に座っていた。
その右斜めに見知った顔があった。
「ミーシャ団長!?」
「よう、ルーク。
大活躍だったそうじゃないか?」
そう、何故かミーシャ団長も同席していたのだ。
片手には、お酒を持っていた。
既に飲んでいるようだ。
「君がルークか。
話は、ミーシャ団長とダーナス隊長から聞いている。
見事な奇襲だったそうじゃないか。
・・・おっと、失礼。
名乗っていなかったな。
私は、フェンムル=ウォーザード。
皆は伯爵と呼んでいるよ。」
ウォーザード伯爵本人だったのだ。
ルークは急いで片膝をつき、頭を下げる。
「あぁ、いい。
堅苦しい挨拶は抜きだ、ルーク。」
伯爵は、あっさりとしていた。
「さて、何用で訪れたのかな?」
伯爵は、用件を伺う。
「敵将軍の首を取ったので、お届けに参りました。
どうぞ、ご確認ください。」
そういって、布をはぎ、顔を良く見える状態にする。
「・・・確かに、敵将軍に相違ない。
見事討ち取った。
今日一番の手柄だ、ルークよ。」
「へっ?
今日一番・・・?」
その言葉に、ルークは驚く。
「あぁ、今日一番の手柄だ。
他の将軍の首は誰も取れなかったからな。
あれだけ崩れたのに、敵さん、すぐに逃げ出しやがったからな。」
ダーナスが代わりに答える。
「そう・・・だったんですね。
気付きませんでした。」
ルークはそう言いながら、首を布で包み直す。
そうすると、近くの騎士が首を受け取り、テントを出て行った。
「首は遺族に帰す。
安心するといい。
さて、敵将軍を討ち取ったのだ。
褒美をやらなくてはなるまい。」
伯爵は、小さな袋を手にすると、ルークの元まで歩いていき、手渡しする。
「受け取れ、ルーク。
これは、その褒美だ。」
「ありがとうございます。」
ルークは袋を受け取った際、ずしりと重い感触がした。
明らかに貨幣だった。
しかも、ずしりと重いということは、かなり多めに入っているようだ。
「さて、ルークよ。
仔細を聞かせてくれないか。
どのように奇襲を仕掛けたのかを。」
伯爵は興味を持っていた。
ルークがいかに攻め込んで、敵右翼を潰走に導いたのかを。
ルークは、詳細に話すことにした。
まず、自分の配下15名を引き連れて森に入ったこと。
そして、大声を上げつつ敵に突進したこと。
自分は、魔法を唱えて、敵に混乱を巻き起こしたこと。
その混乱状況下で、敵将軍を倒したこと。
話し終わった時、伯爵とミーシャ団長が感心したのか、コクリコクリとうなずいていた。
「見事な采配だ。
本当に戦争は初めてなのか、ルーク?」
「はい、初めてです。
ですから何もわからずに戦闘に参加してました。」
「そうか。
しかし、あの混乱の中、一人で敵将軍の元まで行き着くのは
楽ではなかったはず。」
「はい、ひたすら斬り倒しておりました。」
「おいおい、マジかよ。
あれだけ騎士がいたんだぜ。
それも切り倒したのか?」
ダーナスは驚きの表情を浮かべる。
「えぇ、どれだけ斬ったか、覚えていないくらいです。」
「しかし、それほどの腕前、なかなかおるまい。
もしかしたら、ミーシャ団長に匹敵するのではないか?」
伯爵の言葉に、ミーシャは首を横に振る。
「いやいや、私はしょせん「二流」ですよ。
ルークほどの剣さばき、私には無理ですとも。」
あっさりと否定する。
「そうかな?
昔の君を知る私から言わせてもらうが、ルークは昔の君を見ているようだよ。」
伯爵はそう言って笑いだす。
ルークにも話の内容から、ミーシャ団長もかなりの手練れであると推測できた。
「ルークよ、引き留めて済まなかったな。
今後もそなたの活躍を期待しているぞ。
今夜はもう遅い。
ゆっくり休むといい。」
「ありがとうございました。
それでは失礼します。」
ルークは一礼すると、テントから出ていくのだった。
ルークは自分のテントに戻ると、すぐに眠りにつくのだった。
今日は特に疲れた。
だから、ゆっくり眠れるような気がしたのだった。




