35-6 南方2つ目の都市制圧。
翌日、朝。
レヴィは、早速、ルークに“思念連結”で連絡を行う。
「ルーク様ですか?」
「はい、レヴィさん、おはようございます。」
「おはようございます。
状況についてお聞きしてよろしいでしょうか。」
「まず、二つ目の都市を制圧しました。
今日は三つ目の都市に向けて進軍を開始します。」
「了解しました。
こちらは、二つ目の都市に進軍中です。
本日中には到着する予定です。」
「わかりました、ありがとうございます。
それとレヴィさん、三つ目の都市の変化に気付いていますか?」
「三つ目の都市ですか?」
レヴィは調べていなかった。
「敵の軍勢3000が、都市外に展開しています。
王都の軍勢3万がそちらに向かう可能性がありますので、注意してください。」
「わかりました。
こちらでも確認してみます。
王都ミルディアにも動きがあったのですか?」
「昨日の時点では、3万の軍勢が出来上がっていました。
今のところ、東か南かどちらに動くのかは不明です。」
「なるほど、了解しました。
こちらでも、偵察を行います。」
「以上、報告となりますが、他に何かありますか?」
「いえ、特にございません。
ありがとうございます。」
「ではまた明日。」
「はい、失礼します。」
“思念連結”は切られた。
レヴィは、宝珠を使って、三つ目の都市と王都周辺を確認するのだった。
クリシュナは朝の軍議を行う。
今日も進軍の予定だったが、軍議は必ず行うのだ。
「レヴィ、ルークの北方侵攻軍の状況を教えてくれ。」
「はい、北方侵攻軍は、二つ目の都市を制圧したとのことです。
今日は三つ目の都市を目指して進軍するとのことです。」
「なるほどな。
予定通りか。」
「それから、ルーク様が気になることを報告してまいりました。
南方の三つ目の都市にて、3000の軍が都市外に展開しています。
私も確認した限り、事実でした。
それと、もう一つ。
王都に展開していた2万の軍が3万の軍と増員されています。
この軍がどちらに向かうか、現状判断できません。」
「ふむ、となると、南に来る可能性が髙いですな。」
クロムワルツ侯爵はそう告げる。
「何故、そう思われる?」
「簡単なことです。
2万の軍勢は、西側の軍勢となります。
よって地理的には、南側が最も西側に近い。
東側に派遣するよりも、南側に派遣したほうが良いと考えるでしょうな。
それに、我らがだいぶ近づいていることにも気づいているのでしょう。
まずは、南を抑え、東側は王都の軍を派遣すると、私は考えます。」
「なるほどな。
確かに、それならば、3000の軍の展開には納得がいく。
合流するつもりなのだろうな。」
「ここはまず、二つ目の都市の制圧に集中しましょう。
敵は合流しても、こちらに攻め寄せるとは限らないでしょう。
ほぼ互角の軍事力ですからな。
待ち構える可能性が髙いでしょう。」
クロムワルツ侯爵の言葉に、クリシュナはうなずく。
「そうだな。
まずは、二つ目の都市の制圧に集中しよう。
レヴィ、偵察を任せる。」
「はい、承知しました。」
こうして、方針は決まった。
三つ目の都市の動向については、レヴィに任せることになったのだった。
夜には、二つ目の都市の近くまで到着したのだが、一旦停止した。
そこで、休息をとることになった。
レヴィは、三つ目の都市を偵察していたものの、変化はなかった。
王都の軍勢も動く気配が無い。
明日も、偵察する予定だった。
翌日。
クリシュナは、都市の城外門周辺を包囲し、破城槌にて門を破壊することにした。
都市内の軍勢は、一つ目の都市と同様、城外門に500人の兵士が詰めていた。
そして、城に1500名の兵士が詰めていた。
前回と全く一緒だったので、前回同様、まずは門の破壊から開始されたのだ。
破城槌は勢いよく、門の破壊行動を行う。
その内、一つの門が破壊され、兵士がなだれ込んでいく。
敵の兵士は殲滅されていく。
他の門も破壊されて、兵士が攻め入るのみであった。
こうして、前回同様、三か所の城外門は占拠され、残るは城のみとなった。
この結果に、クリシュナは満足した。
しかも、被害も軽微であり、怪我人は回復術師により回復されるのだった。
明日は、城攻めである。
翌日。
軍議の場である。
「いよいよだな。
レヴィ、敵軍の動きはどうだ?」
「はい、動きがありました。
王都に展開していた3万の軍勢は、南へ向けて進軍しています。
間違いなく、三つ目の都市に到達するものとみられます。」
王都の軍はまっすぐに南下していたのだ。
クロムワルツ侯爵の予想通りの動きだった。
「となると、王都の兵力は残り3万。
これは、東側に展開されるでしょうな。」
「敵も焦っているということか。
ならば、次の戦いが王手をかけることになるのだな。」
「左様。
次の戦いは必ず勝たねばなりませんぞ。」
クロムワルツ侯爵は気合が入っていた。
「そうだな。
その時は、ルークの必勝の策を使う時か。」
クリシュナも覚悟を決めた。
「だがその前に、まずはここの城を落とす。
そこからだ。」
クリシュナは、油断していなかった。
まずは目の前の敵を潰すことに全力を注ぐのだ。
「前回同様、魔法によるいぶり出しを行いましょう。
それで出てこなければ、破城槌の出番となります。
ここは確実に行きましょう。」
「そうだな。
頼んだぞ。」
「お任せください。」
こうして、城攻めが開始されるのだった。
城攻めは前回同様、まずは魔法による攻撃から開始された。
だが、一向に打って出てくる気配はなかった。
魔法を投げ込みつつ、破城槌による門の破壊が実行される。
門は、あっさりと破壊された。
そして、魔法を止めて、兵士がなだれ込む。
敵の大半は、魔法による被害により、ほとんどがやられていたのだった。
これにより、打って出るだけの力がなかったようだった。
次に、城内へと攻め込む。
城主及びその家族はあっさりと捕まった。
そして、地下の牢獄に投獄されるのだった。
またもや、予定より一日早く制圧して見せたのだった。
その日の夜。
首実験を済ませると、クリシュナはクロムワルツ侯爵と対談していた。
「ようやく二つ目の都市を落とせた。
後は、残り一つとなったが、次が本番だな。」
間違いなく、3万の軍勢と戦うことになるのだ。
「左様ですな。
ここは一つ、ルーク様の策に頼りましょうぞ。」
「そうだな。
だが、どの程度の効果があるのか、私にはわからない。
ただ、恐ろしいことをルークは言っていたのだ。」
「と言いますと?」
「兵を一兵も失わずに、戦い抜いたそうだ。
そして、敵を殲滅させたとも言っていた。
兵を一人も失わないなどということが本当に起こるのだろうか?
ルークは嘘をつかない人間だとはわかっているのだが、信じられないのだ。」
クロムワルツ侯爵は顎に手を当てながら考えた後、口に出す。
「確かに、本来であればありえないことでしょうな。
だが、ルーク様は嘘をつく方ではない。
それに、ごく最近の話、一万の軍勢に対しても
一人も死ななかったという報告もあります。
ここは一つ、騙されたと思って信じてみてはいかがでしょうかな?」
「騙されたと思ってか。
そうだな、その方が気が楽になる。」
クリシュナは息を吐く。
少しばかり、気が楽になったのだ。
「しかし、実際に目にしたら、どうなるだろうかな?
私は、呆れて物も言えないようになっているかもしれないな。」
クリシュナは苦笑する。
「そうですな。
その時は、ルーク様に抗議しても良いかと思いますぞ。」
「そうだな、そうしよう。」
二人は笑うのだった。